2011 Fiscal Year Research-status Report
鰓後腺と副甲状腺に特徴的な機能分子と内分泌腺の形成・進化に関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
23570075
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鈴木 雅一 静岡大学, 理学部, 准教授 (60280913)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 魚類 / 両生類 / カルシトニン / クラスタリン / 鰓後腺 / 副甲状腺 |
Research Abstract |
1)CTの遺伝子発現機構の解析:カルシトニン(CT)は血清カルシウム値の低下や骨量の増加などを引き起こすホルモンであり,医療面では骨粗鬆症などの治療薬として使用される。しかしながら,ホルモンの重要性にも関わらず,CT遺伝子が特定の内分泌細胞だけで著しく活性化される分子機構やCT細胞が形成される分子機構はほとんど知られていない。本研究により、カルシトニンを分泌するニジマス・鰓後腺から得られた転写因子がNkx2.1であり、甲状腺にはNkx2.4が発現することが示された。従来、哺乳類を用いた研究により、カルシトニンを分泌するC細胞と甲状腺ホルモンを産生する甲状腺濾胞細胞にはNkx2.1が発現し、ホルモン合成に関わる遺伝子の発現調節に関与するとされてきたので、魚類の鰓後腺と甲状腺に異なるNkxが存在するという本発見は意義深い。さらに、ラット・Nkx2.1の結合領域を参照して、FAM標識蛍光DNAプローブを作製し、ゲルシフトアッセイを行った。その結果、ニジマス・Nkx2.1のみならず、ニジマス・Nkx2.4もNkx2.1のDNA認識領域に結合した。2)鰓後腺の分化形成機構の解析:TILLING法により得た3系統のクラスタリン遺伝子変異メダカ(F2, mut/wt)をそれぞれ交配し、生育した稚魚をhigh resolution melting法によりジェノタイピングした。mut/wtヘテロ個体を選別、飼育し、F3、F4まで継代した。3)両生類の副甲状腺に特徴的なmRNAの解析:未知のPT1 cDNA の5’側の塩基配列を解析したが、コーディング領域は認められなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究は全般的にほぼ計画に沿って進められたが、少し結果を得るのが遅れていると考えている。ゲルシフトアッセイにおいて、非標識プローブを用いて結合の特異性を示す実験を成功させるのに予想外の時間を費やしたが、今後は、大きな問題なく行うことができるはずである。また、本研究プロジェクトそのものには直接関与されていないが、これまで共通の研究室で共同研究を行ってきた共同研究者が急病になってしまい、大学内の業務が急増し、いろいろな面で多忙になった。そのため、研究に充てる時間が限定され、本研究プロジェクトの進行に多少遅れが出たのは否めない。
|
Strategy for Future Research Activity |
H23年度は、多くの面で節約を心がけたこと、大学内の業務が急増したことにより、研究費を予定額使用するに至らなかった。今年度は、抗体の作製や塩基配列の解析を外注するなど、研究費の使用方法を工夫し、研究を進める時間をより増やせるように努め、下記の研究を行う。1)CTの遺伝子発現機構の解析:メダカCT遺伝子上流域3kbp-2kbpの間の領域を部分的に取り除いて改変し,ホタル・ルシフェラーゼベクターに組み込む。そして,培養したTT細胞(ヒトCT細胞由来培養細胞株)にベクターを導入し,デュアル・ルシフェラーゼアッセイにより,エンハンサー領域を絞り込む。そして、特徴的転写因子がエンハンサー領域に作用するか,デュアル・ルシフェラーゼアッセイにより解析する。ゲルシフトアッセイにより,エンハンサー領域に特徴的転写因子が結合することを確認する。2)鰓後腺の分化形成機構の解析:クラスタリン遺伝子変異メダカの継代を続け、F5、F6世代の個体を作出する。また、Nkx2.1の遺伝子発現が蛍光で検出できるトランスジェニック・メダカを作出し、飼育する。3)両生類の副甲状腺に特徴的なmRNAの解析:GCM2 mRNAの発現様式の解析と未知のPT2 cDNAの配列解析を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の直接経費は約2,180,000円である。H23年度は、多くの面で節約を心がけたこと、大学内の業務が急増したことにより、消耗品等に充てる研究費を予定額使用するに至らず、約880,000円の繰り越し金が生じた。本年は、その繰り越し金を含めた研究費を有効に使用したいと考えている。研究に必要な備品類は基本的には揃っているので、本年度の研究費は主として、本研究を遂行するにあたり必要な、チップ、チューブ、チューブラック等のプラスチック製品、Taqポリメラーゼ、制限酵素等の酵素類を初めとした消耗品に1,480,000円使用する。また、学会参加費、研究打ち合わせ、文献調査等の旅費として200,000円使用する。その他、抗体作製費、DNAの塩基配列解析費、論文校閲として500,000円使用する。
|