2012 Fiscal Year Research-status Report
鰓後腺と副甲状腺に特徴的な機能分子と内分泌腺の形成・進化に関する分子生物学的研究
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23570075
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鈴木 雅一 静岡大学, 理学部, 准教授 (60280913)
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Keywords | 魚類 / 両生類 / 鰓後腺 / カルシトニン / クラスタリン / 副甲状腺 |
Research Abstract |
研究実績の概要 1)CTの遺伝子発現機構の解析:カルシトニン(CT)は血清カルシウム値の低下や骨量の増加などを引き起こすホルモンであり,医療面では骨粗鬆症などの治療薬として使用される。しかしながら,ホルモンの重要性にも関わらず,CT遺伝子が特定の内分泌細胞だけで著しく活性化される分子機構やCT細胞が形成される分子機構はほとんど知られていない。本年度の研究により、カルシトニンを分泌するニジマス・鰓後腺では転写因子Pax1/9が発現し、甲状腺にはPax8が発現することが示された。哺乳類では、カルシトニンを分泌するC細胞と甲状腺ホルモンを産生する甲状腺濾胞細胞にはNkx2.1が発現すること、さらに甲状腺濾胞細胞ではPax8も発現し、甲状腺特異的遺伝子の発現を促すことが報告されている。本研究結果は、カルシトニン産生細胞と甲状腺ホルモン産生細胞との違いがPaxの違いにより生じていることを示唆している点で意義深い。さらに、ラット・Pax8の結合領域を参照して、FAM標識蛍光DNAプローブを作製し、ゲルシフトアッセイを行った。その結果、ニジマス・Pax8がDNA認識領域に結合することが示された。また、転写因子結合部位予測ソフトtransfacを用い、メダカCTとヒトCTの上流にNkx2-1とFoxA2の結合部位があることが予測された。 2)鰓後腺の分化形成機構の解析:TILLING法により得た3系統のクラスタリン遺伝子変異メダカ(F3/4, mut/wt)をそれぞれ交配し、生育した稚魚をhigh resolution melting法によりジェノタイピングした。mut/wtヘテロ個体を選別、飼育し、F5まで継代した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究は全般的にほぼ計画に沿って進められたが、少し結果を得るのが遅れていると考えている。昨年度、ゲルシフトアッセイにおいて、非標識プローブを用いて結合の特異性を示す実験を成功させるのに予想外の時間を費やしたことや、これまで共通の研究室で共同研究を行ってきた共同研究者が急病になってしまい、大学内の業務が急増し、いろいろな面で多忙になったことで、研究プロジェクトの進行に多少遅れが生じた。本年度も、昨年に引き続き大学内の業務が多く、いろいろな面で多忙となり、本プロジェクトの進行に多少遅れが生じてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度は、H23年度同様、多くの面で節約を心がけたこと、大学内の業務が急増したことにより、研究費を予定額使用するに至らなかった。また、小型魚類の飼育装置の購入を予定したが、学内で動物飼育施設を新設する計画もあり、購入を差し控えた。本年度は予算を効率的に使用しながら、下記の研究を行う。 1)CTの遺伝子発現機構の解析:transfacにより予測されたNkx2-1とFoxA2の結合部位を考慮しつつ、メダカCT遺伝子上流域3kbp-2kbpの間の領域を部分的に取り除いて改変し,ホタル・ルシフェラーゼベクターに組み込む。そして,培養したTT細胞(ヒトCT細胞由来培養細胞株)にベクターを導入し,デュアル・ルシフェラーゼアッセイにより,エンハンサー領域を絞り込む。そして、特徴的転写因子がエンハンサー領域に作用するか,デュアル・ルシフェラーゼアッセイにより解析する。ゲルシフトアッセイにより,エンハンサー領域に特徴的転写因子が結合することを確認する。 2)鰓後腺の分化形成機構の解析:クラスタリン遺伝子変異メダカF5のヘテロ同士を掛け合わせて、F6世代の個体(+/+, +/-, -/-)を作出し、形質の変化からクラスタリン遺伝子の機能を考察する。また、Nkx2.1の遺伝子発現が蛍光で検出できるトランスジェニック・メダカを作出、継代し、系統を確立する。 3)両生類の副甲状腺に特徴的なmRNAの解析:成長過程にある小型のウシガエルを用いて副甲状腺由来cDNAライブラリーを作製し、副甲状腺ホルモンcDNAおよびその他の特徴的因子を同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の直接経費は約2,180,000円である。H24年度は、多くの面で節約を心がけたこと、大学内の業務が増え多忙になったことにより、消耗品等に充てる研究費を予定額使用するに至らず、約950,000円の繰り越し金が生じた。Tillingメダカの継代により飼育スペースが不足しているので、H25年度は、まず小型魚類の飼育装置を消耗品などを含め総額約1,300,000円で購入する。その他必要な備品類は基本的には揃っているので、本年度の研究費は主として、本研究を遂行するにあたり必要な、チップ、チューブ、チューブラック等のプラスチック製品、Taqポリメラーゼ、制限酵素等の酵素類を初めとした消耗品に1,480,000円使用する。また、学会参加費、研究打ち合わせ、文献調査等の旅費として200,000円使用する。その他、抗体作製費、DNAの塩基配列解析費、論文校閲として500,000円使用する。
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