2011 Fiscal Year Research-status Report
モデル植物ミヤコグサにおける生殖様式の進化生物学的研究
Project/Area Number |
23570107
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
上原 浩一 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (20221799)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 昌史 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (50228368)
伊藤 元己 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (00193524)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | ミヤコグサ / 進化 / マイクロサテライト / 自家不和合性 / 生殖様式 |
Research Abstract |
日本国内に自生する野生植物の中で、ミヤコグサは唯一ゲノム解析が行われたモデル植物であり、多くの遺伝情報が公開されている。これら公開されたゲノム情報を利用し、ミヤコグサの研究を進めることは、野生植物の生態と進化について、これまでにない高精度な解析を可能にする。研究代表者はこれまでに野生ミヤコグサ集団について、マイクロサテライトマーカーを用いた予備的調査を行った結果、主に自殖を行う集団と自殖率が低く、他殖を行集団が存在することがわかってきた。そこで、国内各地のミヤコグサ集団における生殖様式の分布を明らかにするとともに、生態学的調査、進化ゲノム学的解析を行いミヤコグサ野生集団の生殖様式の進化プロセスを明らかにする。 研究代表者は、ミヤコグサの種内変異・生物地理を明らかにすることを目的に、かずさDNA研究所ミヤコグサホームページで公開されているマイクロサテライトマーカーを用い、ミヤコグサ野生集団の解析を進めている。また、2010年9月に韓国で行った調査時に採集した集団ととともに、2011年8月~9月に英国調査を行った際に採集したセイヨウミヤコグサについても比較のため解析を行った。一部の国内野生集団については緑化事業等で欧米より導入されたセイヨウミヤコグサの識別が困難なため、フローサイトメトリーを用いて倍数性調査を行い、調査した国内集団は全て2倍体のミヤコグサであることを確認した。調査した国内野生集団のフラグメント解析結果をStructure を用いて解析したところ、南北で2つのクラスターに分かれることが明らかになってきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
地域により野生集団の生殖様式の異なる原因についてポリネーションバイオロジーの観点で調査を行う予定であったがまだ準備段階にとどまっている。一方、国内野生集団の遺伝解析が進み、おもに日本の南部では遺伝的に2型に別れることが明らかになってきた。2012年1月からの花期に予定していた調査が遅れ、2012年4月以降にずれ込んだが、4月以降に各地で調査を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2012年春の花期(地域により1月~8月頃)については1月から予定していた調査が2012年4月以降にずれ込んだため速やかに調査および解析を実施する。調査地域は沖縄本島および南西諸島、対馬、隠岐など大陸からのミヤコグサの伝搬・分布拡大において重要と考えられる地域と、国内全域をカバーするための北日本各地である。調査では集団の遺伝解析のためのサンプリングと、ポリネーターの調査を行う。地域集団の生殖様式の違いと遺伝的な違いに相関があるのか解析を進めたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ミヤコグサの花期(地域により1月~8月ぐらいまで)は、各地で野生集団の調査、サンプリングを行う。2012年1月から予定していた調査が遅れたため、そのための旅費、解析のための試薬・物品費の執行を速やかに行う。得られたサンプルについてフローサイトメトリーを用いた倍数性解析、マイクロサテライトマーカーを用いた集団の遺伝的解析を行い、ミヤコグサ野生集団の国内の遺伝的分布、生殖様式の地域的な分布を明らかにする。生殖様式、遺伝的に異なる集団からいくつかの個体を選定し、比較のためのセイヨウミヤコグサも含め自家不和合性に関わる遺伝子を単離し、配列と機能について比較検討する。研究費は国内調査旅費、試薬費、研究補助のための人件費として使用したい。
|