2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570143
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
尾林 栄治 島根大学, 医学部, 助教 (50321740)
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Keywords | 蛋白質 / 立体構造解析 / 翻訳 |
Research Abstract |
タンパク質翻訳開始因子複合体は、単に生物の基本的生命活動にとって重要なものであるだけでなく、新規抗生物質やウイルスやがんに対する新規薬剤開発のターゲットとしても近年注目を集めている。本研究が特に注目しているのは、翻訳開始因子(eIF)によるリボソームの翻訳開始地点の認識から、実際に翻訳が開始される間の情報伝達機構である。本研究では、この過程に関わるeIF複合体の構造をX線結晶構造解析法及びNMR法により明らかにすることを目的に研究を進めるとともに、構造解析が成功した際には、その立体構造を基にして、酵母を利用した生化学的手法により、翻訳開始情報伝達機構に迫る。 eIF複合体を形成する一つの蛋白質であるeIF1は、正確な翻訳開始地点の認識に必須であり、eIF複合体が開始地点を認識すると、eIF1が複合体から解離することが報告されている。そのため、eIF1と相互作用すると報告されているeIF3c、eIF5を中心とした複合体の立体構造を知ることは、翻訳開始地点認識によるeIF1の解離及びその情報伝達機構を解明する鍵となる。そこで本研究ではまず、eIF1の発現系の構築及び精製を行い、eIF1の立体構造をNMR法により決定した。しかし、eIF3cに関しては、その試料の不安定さからシグナルの帰属が完全にできず、立体構造決定には至らなかった。一方で、eIF1とeIF3c結合に関わる部位の同定を試みたところ、eIF1におけるeIF3cとの相互作用部位は広範囲にわたっていることが明らかになった。またeIF2との相互作用部位の同定も進み、今後さらなる解析により、eIF1を中心とした翻訳開始機構の詳細を議論していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
eIF1の精製及びNMRによる構造解析に成功し、相互作用蛋白質であるeIF3cとの結合部位の同定も進んでいる。しかし、当初予定していたeIF1のeIF3cとの複合体としての結晶構造解析には至っていない。今後、複合体の構造解析と平衡して、eIF1、eIF3cおよびeIF2の相互作用部位の同定を行い、相互作用部位を基にした機能解析から翻訳開始機構の解明に迫る必要がある。これらをふまえると、本研究の現在までの達成度は③が妥当であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に行ったeIF3cのNMR法による構造解析を、さらに詳細に進めていく。それと平行して、eIF1-eIF3cの複合体としてのX線結晶構造解析を目的に、その結晶化を試みる。またNMRによりeIF1、eIF3cおよびeIF2の相互作用ネットワークを明らかにし、その相互作用部位を基にした遺伝的・生化学的解析を行うことで、eIF1のeIF複合体からの解離がどのような役割を果たすのか明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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