2011 Fiscal Year Research-status Report
TAM受容体チロシンキナーゼのリガンド認識機構の解明と創薬に向けた分子基盤
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23570146
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永田 崇 京都大学, エネルギー理工学研究所, 助教 (10415250)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 栄夫 横浜市立大学, その他の研究科, 教授 (60265717)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | TAM受容体 / NMR / 糖鎖修飾 |
Research Abstract |
Axl:Gas6複合体のX線結晶構造及び大腸菌により発現したTyro3のホモダイマーのX線結晶構造情報に基づき、Tyro3とMerの立体構造モデルを構築し解析した。その結果、Gas6の推定結合領域の近傍に各々糖鎖修飾可能部位があることがわかった。Tyro3ではこの糖鎖修飾可能部位は、ホモダイマー界面近傍でもあることから、本来の生体内では多量体形成様式、およびリガンド(Gas6)結合様式が異なる可能性があると考えた。このような背景のもと、今年度はTyro3の糖鎖修飾に関する解析を開始した。野生型(WT)と糖鎖修飾部位に対する2つの変異体、Asn→Arg(NR)及びAsn→Cys(NC)について、大腸菌による大量調製系を確立した。15N標識を施しNMRスペクトルを測定した結果、いずれも構造が形成されていることがわかった。ゲルろ過により分子量を確認したところ、NRはモノマー、NCはダイマーであること、一方WTではモノマー/ダイマーが混在していることがわかった。NR置換では、ダイマー界面の静電相互作用が阻害され、NC置換ではジスルフィド結合により二量体が安定化されたと考えられる。引き続きこれらの試料について、Gas6との複合体形成能をゲルろ過により調べた。その結果、WTとNRはGas6と1:1で複合体を形成するが、NCは結合能を持たないことがわかった。WTとNRのGas6結合能について、現在表面プラズモン共鳴を用いてより詳細に解析している。糖鎖修飾は負電荷を付加する一方で嵩高いため、実際に糖鎖修飾されたTyro3の構造を調べる必要がある。現在、酵母K.lactisによる糖鎖修飾されたTyro3の大量調製に向けて、精製条件の最適化を行なっているところである。他方、Merについても大腸菌による大量調製方法を確立し、Tyro3と同様な解析に向けて準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はTyro3及びMerの大腸菌による大量調製方法を確立した。前者については各種変異体を作製し、Gas6結合及びダイマー形成に関する解析をゲルろ過により行った。現在表面プラズモン共鳴を用いて詳細な解析を進めているところであり、より定量性の高いデータが得られつつある。またTyro3のWTについては、NMRによる構造及び相互作用解析に向けて主鎖の帰属を行なっている。さらに糖鎖修飾されたTyro3を得るために、 K.lactisによる発現系も構築し、精製条件の最適化を行なっているところであり、調製の目処は立っている。同様の試料調製及び解析をMerについても行うための準備も順調に進んでいる。また次年度以降に行う予定である、タンパク質間相互作用の解析及びリガンドの標的タンパク質結合部位の決定を行うための手法を開発した。このように、研究は概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
Tyro3とMerについてGas6の認識機構に関する解析を進める。まず、Tyro3のダイマー形成及びGas6との結合能について、表面プラズモン共鳴を用いて定量的な解析を行う。また、K.lactisを用いて糖鎖修飾されたTyro3の大量調製を行い、得られた糖鎖付加Tyro3についてもダイマー形成及びGas6との結合の解析を行う。その際、ゲルろ過及び表面プラズモン共鳴を用いる。他方、Merについても以上のTyro3と同様の解析を行う。これらの解析は全て、本年度の成果を活かすことができる。また、NMRにより構造、相互作用及び分子運動解析を行う。そのためにまず、糖鎖付加TAM受容体に対してアミノ酸選択的標識や重水素標識を行うための培養条件を最適化する。このようにして、TAM受容体によるGas6の認識機構の解明に向けた知見を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は主に、タンパク質の大量調製及び結合解析に必要な各種試薬、培地(安定同位体標識用の培地を含む)、消耗品等に当てる。また、打ち合わせ、情報交換などに必要な学会参加費及び旅費も必要となる。
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