2011 Fiscal Year Research-status Report
SUMO転移反応におけるダイナミズムの精密解析と生物種特異性の解明
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23570151
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
山崎 俊正 独立行政法人農業生物資源研究所, 生体分子研究ユニット, ユニット長 (40360458)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生物物理 / 蛋白質 / 分子認識 / 構造生物学 / SUMO化翻訳後修飾 / SUMO化酵素 |
Research Abstract |
SUMO結合酵素E2に存在する2つのSUMO結合部位(高親和性の第1結合部位と低親和性の第2結合部位)のそれぞれにおけるSUMO相互作用を精密に解析するため、第1結合部位の結合能を欠損したE2[R18A/K19A]と第2結合部位の結合能を欠損したE2[K75A/S90A/T92A]について等温カロリメトリー(ITC)法による熱力学解析を行った。この結果、SUMO結合の熱力学パラメータは、第1結合部位でKd = 20.3 uM、dH = -1549 cal/mol、dS = 16.3 cal/mol/K、第2結合部位でKd = 826 uM、dH = -7677 cal/mol、dS = -11.6 cal/mol/Kであった。さらに、天然型E2と上記2種類の変異体について、E1からE2へのSUMO(T)チオエステル転移反応の効率を測定した結果、E2[K75A/S90A/T92A]では転移反応が劇的に阻害されたことから、第2結合部位におけるSUMO-E2相互作用の機能的重要性が証明された。 SUMO活性化酵素E1の構成因子SAE2のC末ユビキチン様フォールドドメインSAE2(UFD)について溶液NMR解析を行い、単体の立体構造を決定するとともに、E2認識領域を特定した。さらに、SAE2(UFD)-E2のITC解析の結果、SAE2(UFD)はE2の第1SUMO結合部位に1:1の結合比で結合し、Kd = 0.42 uM、dH = 1120 cal/mol、dS = 32.9 cal/mol/Kであることが明らかにされた。また、第1結合部位に結合したSUMO分子はSAE2(UFD)によって置換され、第2結合部位に移動することが明らかになった。これは、E1からE2へのSUMO転移反応の分子機構に関する我々の仮説の正当性を支持する結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の目的は、E1からE2へのSUMO転移反応の分子機構を構造生物学的および熱力学的見地から解明することである。本年度は、E2とSUMOおよびSAE2(UFD)の相互作用についてNMR構造解析と熱力学解析を行い、SUMO転移反応の分子機構に関する我々の仮説の正当性を支持する実験結果が得られた。さらに、天然型E2-SUMO複合体、E2[R18A/K19A]-SUMO複合体、および、SAE2(UFD)-SUMO複合体の結晶化条件の探索にも目処が立った。
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Strategy for Future Research Activity |
イネ由来の天然型E2-SUMO複合体、E2[R18A/K19A]-SUMO複合体、および、SAE2(UFD)-SUMO複合体の結晶構造を決定し、分子認識機構の詳細を明らかにする。酵母やヒト由来タンパク質を適宜利用して、SUMO転移反応における普遍性と生物種特異性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は当初予定していた学会発表を1件キャンセルしたため残額(32,086円)が発生した。次年度は、特殊高額消耗品(安定同位体など)700千円、一般試薬消耗品432千円、国内旅費(成果発表)100千円、外国旅費(成果発表)300千円、合計1532,086円の使用を見込んでいる。タンパク質のNMR解析では安定同位体標識タンパク質を、X線解析ではSeMetタンパク質を必要とするため、特殊高額商品の購入が必要となる。
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