2012 Fiscal Year Research-status Report
SUMO転移反応におけるダイナミズムの精密解析と生物種特異性の解明
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23570151
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
山崎 俊正 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, ユニット長 (40360458)
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Keywords | 生物物理 / 蛋白質 / 分子認識 / 構造生物学 / SUMO化翻訳後修飾 / SUMO化酵素 |
Research Abstract |
SUMO化翻訳後修飾は、活性化酵素E1 (SAE1/SAE2ヘテロダイマー)、結合酵素E2、リガーゼE3による3段階の反応を経て、標的タンパク質のLys残基とisopeptide結合を生じる。これら3種類のタンパク質およびSUMOは生物種を問わず高い相同性を示すにもかかわらず、生物種の異なる組み合わせではSUMO化反応の効率が著しく低下する。興味深いことに、イネのSUMO化反応系でE2だけを酵母由来E2に置換すると反応効率が低下するだけだが、酵母のSUMO化反応系でE2をイネ由来E2に置換するとSUMO化反応が全く進行しなくなる。本年度は、E1の構成因子SAE2のC末ユビキチン様フォールドドメインUFDとE2の相互作用に着目して、SUMO化反応における生物種特異性の原因を探索した。まず、等温カロリメトリー(ITC)法を用いてE2 (イネrE2と酵母yE2)とUFD (イネrUFDと酵母yUFD)の複合体形成を解析した。この結果、複合体形成能はrE2-rUFD (Kd=1.21 microM) > yE2-yUFD (2.34 microM) > yE2-rUFD (8.97 microM)で、酵母E2とイネUFDは親和性が低下するものの複合体を形成することが明らかになった。一方、イネE2と酵母UFDは複合体を形成しないことが判明した。続いて、rE2-rUFD複合体の結晶構造を決定して分子認識機構を解析した。既報のyE2-yUFD複合体の分子認識機構との詳細な比較検討から、SUMO化反応における生物種特異性の原因を構造生物学的見地から解明した。また、E2とSUMOのNMR相互作用解析から、イネE2には親和性は弱いが特異的な第3のSUMO結合部位が存在する新たな知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の目的は、E1からE2へのSUMO転移反応の分子機構を構造生物学的および熱力学的見地から解明することである。本年度は、E2とSAE2(UFD)の複合体についてX線結晶構造解析と熱力学解析を行い、生物種特異的なE2-UFD相互作用様式とSUMO化反応におけるE2-UFD相互作用の重要性を明らかにした。さらに、天然型E2-SUMO複合体、および、E2[R18A/K19A]-SUMO複合体についてもX線回折データを取得して構造の精密化を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
イネ由来の天然型E2-SUMO複合体とE2[R18A/K19A]-SUMO複合体の結晶構造を決定し、分子認識機構の詳細を明らかにする。さらに、新たに得られたイネE2の第3のSUMO結合部位の機能的役割を明らかにし、E1からE2へのSUMO転移反応の分子機構を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は当初予定していた国際学会発表をキャンセルしたため残額(416,637円)が発生した。次年度は、特殊高額消耗品(安定同位体など)700千円、一般試薬消耗品420千円、国内旅費(成果発表)100千円、外国旅費(成果発表)300千円、合計1,520,000円の使用を見込んでいる。タンパク質のNMR解析では安定同位体標識タンパク質を、X線解析ではSeMetタンパク質を必要とするため、特殊高額商品の購入が必要となる。
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