2012 Fiscal Year Research-status Report
キサンチン酸化還元酵素における阻害剤の作用の研究―「鍵と鍵穴」のドグマを超えて
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23570198
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
菊地 浩人 日本医科大学, 医学部, 准教授 (00224907)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 研 日本医科大学, 医学部, 准教授 (60267143)
藤崎 弘士 日本医科大学, 医学部, 准教授 (60573243)
古田 忠臣 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (10431834)
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Keywords | 酸化還元酵素 / 構造・機能予測 / 分子動力学 / キサンチン / 痛風治療薬 / 阻害剤 / フェブキソスタット / 創薬 |
Research Abstract |
阻害剤 febuxostatが、哺乳類のXORには効くがバクテリアのXORには効かないという実験事実を示し、その差異の原因が、本来の基質と結合する酵素側鍵穴部分の活性部位アミノ酸の影響ではなく、酵素の鍵穴の入り口付近のアミノ酸の違いにあることを分子動力学計算によって指摘した(Sci. Rep. 2, 331; DOI:10.1038/srep00331 (2012))。それを受けて、XORのアミノ酸置換モデルにfebuxostatが結合した結合モデルに対して、MM-PBSA法やGB-SA法を用いて結合自由エネルギーを計算し、阻害作用を議論している。一方で、反応の前後の状態だけから自動的に反応経路を計算する手法である string法やパスサンプリング法の開発を、研究分担者の藤崎が行い、パスサンプリング法を発展させ、簡単なリガンド結合の系を例にして計算することに成功した(PLoS Comput. Biol. 8 (2012) e1002555-1-12)。今後、XORとfebuxostatの系にも適応させる目途がついた。 XORの生体中での機構は、補酵素モリブドプテリンが、基質キサンチンと共有結合で結合して電子を奪うが、阻害剤 FYX-051は、キサンチンと同様、モリブドプテリンと共有結合すると同時に、febuxostatのように鍵穴を埋め尽くすという、2つの阻害方法を伴っている。このFYX-051がモリブドプテリンに共有結合をして、電子が奪われる際の化学反応の機序に関して、研究分担者の岡本は、X線結晶構造解析を基にしてそのモデルを提唱した(Current Pharmaceutical Design 2013;19:2606-14)。阻害剤側の重要な部位を明確にすること等、FYX-051とfebuxostatを比較しながら研究を進めるために意義のある研究結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェブキソスタットは、哺乳類には効くが、バクテリアには効かないことに関して、従来のドッキングソフトウェアでは、その違いを明らかにすることはできなかったが、分子動力学計算を行うことによって、実験事実を再現することが出来た。 その違いの原因に対して、幾つかのアミノ酸残基の原因であることの予測は出来ているが、結論には至っていない。酵素と阻害剤の結合自由エネルギーを精度良く量的に計算することに対する困難にぶつかっている。 しかし、別のアプローチである、string法やパスサンプリング法の開発に関して、簡単なリガンド結合の系を例にして計算することに成功した。 XORの補酵素部分と共有結合をすると同時に、フェブキソスタットのようにXORの鍵穴を埋め尽くすタイプの阻害剤であるFYX-051の電子伝達に関わるモデルを、X線結晶解析から提出することができ、フェブキソスタットと比較しながら研究を進めていくための重要な結果が得られた。すなわち、阻害作用における阻害剤側の重要な部位を特定するための重要な結果が得られたということである。 細菌、鳥、哺乳類に対して、フェブキソスタット、Y-700、BOFなどの阻害剤に関して、分子動力学計算に基づいて、まだ実験事実と類型的に比較できていないが、その準備は着実に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き、様々なXORのアミノ酸置換モデルを作成し、それに febuxostat が結合した結合モデルに対して、MM-PBSA法やGB-SA法を用いて結合自由エネルギーを計算して阻害作用を議論し、哺乳類とバクテリアの阻害作用の違いを明らかにする。 実験では、現在、ニワトリ肝からのXORの精製が出来ているので、その結晶化と構造解析を行う。また、フェブキソスタット複合体の構造解析も併せて行う。 更に、細菌、鳥、哺乳類に対する、フェブキソスタット、Y-700、BOFなどの阻害剤の阻害作用に関して、分子動力学計算を行い、類型的に実験事実と比較する。そして、その結果に基づいて、動力学的な手法による阻害作用の見積の妥当性に関する知見を積み上げる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の菊地の学会出張費や物品費に対して、30万円を予定している。 研究分担者の岡本が、阻害作用の実験を行うための消耗品の購入に対して、20万円の支出を予定している。 研究分担者の藤崎の学会出張旅費として、10万円を予定している。 県有分担者の古田の学会出張旅費として、10万円を予定している。
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Research Products
(11 results)