2011 Fiscal Year Research-status Report
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23580127
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
三橋 渉 山形大学, 農学部, 教授 (50192761)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞周期 / 細胞周期停止因子 / シロイヌナズナ / KRP |
Research Abstract |
1. シロイヌナズナAtKRP3と結合候補タンパク質との酵母内結合実験:AtKRP3と結合候補タンパク質(12種)との結合について酵母 Two hybrid 法を用いて調べた結果、全てで有意な結合が確認された。次に、AtKRP3との結合部位を明らかにする一環としてAtKRP3C末端のCDK/サイクリン結合ドメインを欠如したAtKRP3ΔCとの結合能についても検討したところ、いずれの候補もAtKRP3ΔCとの結合が観察された。2. In vitro 転写・翻訳系を用いた候補タンパク質の合成とAtKRP3との結合実験:結合候補タンパク質12種をコードするcDNAをin vitro 転写・翻訳系としてコムギ胚芽無細胞転写・翻訳系に供したところ、それぞれの分子量に合致したタンパク質を調製することに成功。AtKRP3についてはタンパク質を検出することが出来ず、昆虫細胞由来無細胞転写・翻訳系も試みたが合成されなかった。そこで、平成24年度はBrevibachillus分泌系を導入し、分泌タンパク質として回収予定。結果を待って結合実験を次年度以降に行う予定。3.BiFC法によるin vivo結合実験:酵母two hybrid 法によりAtKRP3と結合した12種のタンパク質のうち8種について、細胞内でのAtKRP3との結合をBiFC法により検討した。eYFPnを各候補タンパク質に融合させるように、また、eYFPcと AtKRP3を融合させるようにそれぞれデザインしたコンストラクトをシロイヌナズナT87株培養細胞に導入し、細胞内で再構成されるYFP蛍光を観察し、結合の有無を調べた。その結果、調査した8種の候補タンパク質で有意と思われるシグナルが観察された。なお、葉緑体の自家蛍光が強く、シグナルが明確でないものもあり、24年度に再度、実験を行い、複合体の細胞内局在を明らかにする予定。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」でも述べたように当初計画の3つの項目については進展がみられるものの、次に述べるような問題もあった。即ち、(1) 酵母two hybrid法による結合能の検討は順調に進んだが、酵母菌体内での目的タンパク質の発現量は実際には極端に低いもので、免疫沈降法やウエスタン・ブロッティング法での検出はできなかった。このため、酵母内でのAtKRP3と候補タンパク質の相互作用を免疫化学的な手法によって検討することは出来なかった。(2) AtKRP3と候補タンパク質のin vitro 転写・翻訳実験では候補タンパク質12種についてコムギ胚芽無細胞系で合成することに成功したが、AtKRP3については同系および昆虫(ヨトウガ)培養細胞由来の無細胞転写・翻訳系を試みたが、有意な合成は確認できなかった。(3) AtKRP3については種々大腸菌株と発現ベクター系を用いた菌体内発現を試みたが、菌体内で分解されるか、インクルージョン・ボディーを形成するか、のいずれかの結果で、AtKRP3を可溶性画分として回収することは出来なかった。(4) 細胞内での結合タンパク質の検出法であるBiFC法では平成23年度は12種の候補タンパク質のうち8種で観察を行い、残り4種については発現ベクター用のコンストラクトの調製が進まなかった。また、共焦点レーザー顕微鏡での観察時に葉緑体の自家蛍光が強く、YFP蛍光を十分に観察できない場合があった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は平成23年度計画分で未達成な部分、即ち、in vitro あるいは異種生物細胞内でのAtKRP3の作成、バクテリア(Brevibachillus)分泌系を用いたAtKRP3タンパク質の合成とin vitroでのAtKRP3と結合候補タンパク質との結合実験、BiFC法における葉緑体自家蛍光の軽減、また、未着手の4種の結合候補タンパク質とAtKRP3のBiFC法を用いた結合実験、についての研究進めるとともに、新たにAtKRP3およびAtKRP3からCDK/サイクリン結合ドメインを欠損したmAtKRP3-ΔCの過剰発現体およびノックアウト(ダウン)体の作成、また、結合候補タンパク質のうち、in vitro での結合実験やBiFC法の結果、有意にAtKRP3タンパク質との結合が確認されたタンパク質について遺伝子よりプロモーター配列を単離し、プロモーター::GUS法により細胞内での局在や細胞周期に伴った変動などを追っていく予定。また、過剰発現体およびノックアウト(ダウン)体が作成された場合、候補タンパク質の動態を観察する必要があることから平成23年度12月より結合候補タンパク質の一つに対して合成ペプチドを合成し、ウサギ由来のポリクローナル抗体の作成にも着手した。抗体作成には候補タンパク質に特異的なアミノ酸配列の特定、また、免疫に3ヶ月、精製に2ヶ月弱を要するため、平成23年度での支払いが間に合わなかった(約40万円)。加えて、AtKRP3遺伝子に対するプロモーター::GUS法の対比実験を行うためにAtKRP3のタンパク質レベルでの分布についても検討を加えることとし、AtKRP3に対するポリクローナル抗体も作成した。この費用も約40万円で、合成80万円の抗体作成費用を平成23年度から24年度に持ち越しさせていただいた。平成24年5月末より抗体の使用が可能となる予定。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度からの繰り越し分80万円(抗体作成費)を除き、平成24年度は分子生物学的な手法が主となるため、直接経費 120万円のうち80万円を遺伝子クローニング、DNAシークエンス、タンパク質の異種細胞での発現、形質転換体の作成、等の分子生物学で一般的に用いられる消耗品代、および、免疫抗体反応をはじめとした生化学手法に用いる一般的な消耗品代として用いる予定。研究室には分子生物学的および生化学的手法を行う上で必要な機器や設備は整っていることから設備備品についての購入計画はない。また、国際学会を含む学会発表用の旅費として30万円、AtKRP3およびmAtKRP3-ΔCの過剰発現体の作成において、植物の管理や種子の回収等のアルバイト代として10万円を それぞれ計上させていただいた。
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