2012 Fiscal Year Research-status Report
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23580127
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
三橋 渉 山形大学, 農学部, 教授 (50192761)
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Keywords | 細胞周期 / 細胞周期停止因子 / シロイヌナズナ / KRP |
Research Abstract |
1) 平成23年度にAtKRP3の各種in vitro発現系を試みたが, 殆ど合成されなかった。そこで、本年度はホスト大腸菌を様々変え、異所発現系の構築を目指した。その結果、発現プラスミドにpGEX-4-3を、ホスト大腸菌にBL21派生株であるRosetta株を用い、低温での誘導を短時間行なった場合に少量ではあるが比較的安定した発現を行なうことが可能となった。 2) AtKRP3結合候補タンパク質のうち核コード葉緑体タンパク質については平成23年度にコムギ胚芽無細胞転写・翻訳系を用い、生産量に差はあるものの合成には成功していた。24年度はこれらのうちから一分子種について葉緑体移行能を調べた。葉緑体の調製はシロイヌナズナ(Col株)幼芽生えとT87培養細胞からパーコール・ステップワイズ密度勾配遠心法で行った。培養細胞は不定形で巨大な葉緑体をもっており無傷葉緑体を安定的に回収することは出来なかった。幼植物体から葉緑体を調製し、無細胞翻訳系に添加した。葉緑体を再回収し、SDS-PAGEとウエスタンブロッティングで目的タンパク質の移行を検討したところ、抗体を用いた検出方法では目的タンパク質の有意な移行は観察されなかった。 3) AtKRP3過剰発現体については35S-プロモータ(Ω配列を有したもの)でドライブした形質転換体を作成した。遺伝子導入はアグロバクテリウムを用いた。 F1のヘテロ体ではAtKRP3の過剰発現が確認されている。24年度末よりホモ系統の確立を続けており平成25年度はこのホモ個体を用いて解析を進める予定。 4) AtKRP3よりCDK-cyclin結合ドメインを削ったドミナントネガティブ的に機能することが予想されるミュータン-AtKRP3(AtKRP3ΔC)の過剰発現体についても作成に成功した。平成25年度にホモ株を確立する予定。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画と比べ、方法論的な困難さ等が重なり、達成度はやや遅れている。例えば、平成23年度には(1)酵母内での候補タンパク質の発現量が極端に低く,免疫沈降法やウエスタンブロッティング法での検出が出来なかったこと、(2)AtKRP3が非常に不安定なタンパク質であり、in vitro 転写・翻訳系を含む異所発現系の構築が滞り、平成24年度には酵母発現系や in vitro 転写翻訳系に代え、ホスト大腸菌や発現ベクターの組み合わせを種々検討する方法を検討し、かなりの時間を費やしてしまった。結果的に大腸菌BL21のRosetta派生株と発現ベクターpGEX-4-3の組み合わせに回帰し、発現条件を種々検討した結果、低温で短時間の誘導によって少量ではあるものの比較的安定した発現系を構築した。また、(3)平成23年度末よりAtKRP3と結合候補タンパク質との細胞内での結合を蛍光タンパク質再構成法(Bimolecular fluorescent complementation, BiFC法)により進めているが、幾つかの候補タンパク質との 結合については, 結合により再構成されたYFP蛍光が細胞質中で大きなドット状に分布することが観察された。これらは細胞内での人工異物としての「封入体」や「ファゴソームに取り込まれた複合体」とも考えられる。そこでこうした可能性を検討すべく平成24年度には候補タンパク質のN末およびC末にYFP断片が結合できる発現ベクターを調製し直した。加えて、平成24年度よりAtKRP3過剰発現体とC末端欠損AtKRP3の過剰発現体の作製を行い、現在、両者についてホモ化を進めているが、(4)AtKRP3のノック(アウト)ダウン体については形質転換体の作成を進めることが出来なかった。現状では平成25年度中にノック(アウト)ダウン体の作製を終了することは困難となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は申請の最終年度となるが、「11.現在までの達成度」でも述べたように研究計画に遅れがでている。基本的には当初計画に沿って研究を遂行するが、これまでの遅延部分の解決に力点を置く必要があることから、当初24年度に作製を計画していた「ノック(アウト)ダウン体の作製」については当初計画を変更し、新たにRNAi用のコンストラクトを調製し、これをシロイヌナズナ培養細胞に導入した一過的発現系を用いて観察を進めていく予定。また、23, 24年度の実験で問題の生じていたBiFC法については、新規コンストラクトを用いて改めてin vivoにおける相互作用能を検討していく。なお、結合候補タンパク質の幾つかについては、その本来の細胞内局在が不明なものもあり、これらについては培養細胞でのGFP融合タンパク質の一過的発現系を構築し、合わせて明らかにしていく。また、25年度に計画していた「AtKRP3プロモーター::GUSを導入した植物体の作製」については、今年度はコンストラクトの作製までを目標とし、実際の植物体の作製は来年度以降に変更し、代わりに培養細胞を用いた発現時期の解明に注目して実験を進めていく予定。他の突然変異体については、平成25年度はT1およびT2過剰発現体の解析に重点を置いて研究していく予定。 これらの成果から最終年度となる平成25年度には相互作用タンパク質の生体内における意味について総合的に考察を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、平成24年度に計画していたノック(ダウン)アウト体の作製をはじめとした前年度からの遅れによる繰り越し分233,579円を25年度に繰り越した。平成25年度は上記「今後の推進方策」に沿って研究を進め、手法的には分子生物学的および生化学的手法を主に利用するため、直接経費120万円と前年度繰り越し金の合計、1,433,579円のうち約93万円を遺伝子のクローニング、DNAシークエンシング、発現ベクターの構築、形質転換体の作成と各種遺伝子の発現解析等の分子生物学用の一般的消耗品費に、また、免疫沈降反応や免疫学的検出等の生化学的手法の一般的な消耗品費として支出予定。設備については研究室には分子生物学的および生化学的手法を行なう上で必要な機器や設備は整っており、設備備品についての購入計画はない。また、国際学会を含む学会発表用旅費として30万円、過剰発現体のホモ体作成において、植物の管理や種子の回収等にアルバイト代として10万円、論文投稿費と報告書作成費を合計で10万円、それぞれ計上させていただいた。
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