2012 Fiscal Year Research-status Report
カルシウム依存性レクチンの糖鎖認識機構及び細胞膜内イオンチャネル形成機構の解明
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23580137
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
畠山 智充 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50228467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海野 英昭 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10452872)
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Keywords | レクチン / 蛋白質工学 / 部位特異的変異 / X線結晶構造解析 / 糖鎖 / カルシウム結合蛋白質 |
Research Abstract |
1)溶血性レクチンCEL-IIIの部位特異的変異体作製とその機能解析 CEL-IIIの膜結合ドメイン(ドメイン3)における活性に関与するアミノ酸残基を部位特異体変異を用いて検討した結果,Lys334,Lys351,Lys405,Lys420をAlaに置換した変異体が,天然型CEL-III以上の高い活性を示すことが明らかになった。これらの残基はいずれも分子内部に位置しており,ドメイン3の構造の安定性に寄与しているものと考えられることから,その変異がドメイン3のコンフォメーション変化を促進し,標的細胞膜内でのオリゴマー化を進みやすくしたものと考えられた。一方,ドメイン3の表面に存在するLys338,Arg378,Arg408のAla置換体では活性が著しく低下していた。このことから,これらの表面に位置する残基は標的細胞膜のリン脂質などとの相互作用に重要である可能性が示唆された。 2)CEL-IIIオリゴマーのX線結晶構造解析 CEL-IIIのオリゴマーを水溶液中で特異的糖と結合させることによって作製し,その結晶化並びにX線結晶構造解析に成功した。その結果,CEL-IIIオリゴマーは7量体であり,長い1本のβバレルを膜内に挿入することによって,イオン透過性ポアを形成することが明らかになった。このβバレルの外側には疎水性アミノ酸,特にVal残基の連続した配列などが見られ,我々がこれまでに想定していたポア構造が基本的に正しかったことが確認された。このような構造は細菌由来の溶血性タンパク質と非常に構造が類似しているが,一方では二次構造の変化過程がかなり異なっている面などもあり,新規なポア形成機構として,この一群のタンパク質の活性発現機構の解明に,今後大きな貢献をするものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
溶血性レクチンCEL-IIIの部位特異的変異体の作製から多くの活性に重要なアミノ酸残基の同定に成功した。さらに,CEL-IIIオリゴマー構造が明らかになったことから,個々のアミノ酸が活性に及ぼす影響を,具体的に立体構造の上から解釈が可能になった。これらの成果から,研究は順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
レクチンの部位特的変異や立体構造決定が進んできたことから,今後はさらに人為的に多くの変異をCEL-I,CEL-IV,CEL-III等に導入し,新規な糖結合特異性や膜貫通ポア形成能を有するレクチンを作製する。これらによって,レクチンの糖認識機構を明らかにするとともに,それらの生理活性の人為的な制御や改変に結びつけることを目指していく。また,その際に基本的な技術として必要とされる簡便なレクチン活性測定法の開発についても,引き続き重要な目標と位置付けている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費については,ほぼ予定通りの使用状況であり,当初の計画通り,部位特異的変異体作製やタンパク質精製のための試薬・器具等の消耗品,さらに結晶構造解析に必要な器具の購入に当てることを予定している。また,海外での発表を含め,これまでに得られた成果を広く公表するための学会旅費等にも当てていく。
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Research Products
(15 results)