2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23580144
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
鈴木 優志 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 特任助教 (30342801)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | オーキシン / シロイヌナズナ / 遺伝子発現 / 生合成 / 代謝中間体 / TAA / YUCCA |
Research Abstract |
昨年、シロイヌナズナにおけるオーキシン生合成経路に関する研究は大きく進歩した。トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(TAA)とYUCCA(YUC)というわずか2段階でインドール酢酸(IAA)はトリプトファンから生合成され、この経路が主要なオーキシン生合成経路であることが示された。科研費基盤Cの本プロジェクトはオーキシン生合成におけるフィードバック制御機構の分子機構を明らかにすることなので、TAAとYUCのどちらがフィードバック制御のターゲットサイトなのかを遺伝子発現の観点から調べた。TAA遺伝子ファミリー(TAA1, TAR1, TAR2, TAR3, TAR4)とYUC遺伝子ファミリー(YUC1, YUC2, YUC3, YUC4, YUC5)の遺伝子発現に与えるIAAとAOPP(TAA阻害剤)の影響を調べた。TAA遺伝子ファミリーの発現レベルはIAAやAOPP処理による影響を受けず、TAAがフィードバック制御の調節ステップである可能性は低いと考えられる。一方、ShootでのYUC2とYUC4の発現はAOPPで誘導され、IAAはこの発現誘導を解消した。このことはYUC2とYUC4がフィードバック制御の調節ステップである可能性を示唆している。RootではYUCCA遺伝子ファミリーはAOPP処理による影響をほとんど受けなかった。 また、AOPP処理によってIAA生合成が阻害されたときにどのような中間体がオーキシン生合成に生体内で寄与するかを、AOPP処理+中間体投与による遺伝子発現解析と形態観察で調べた。その結果、主要経路の中間体であるインドールピルビン酸(IPyA)が最も効率よく阻害剤の効果を解消したが、これまで一般的に考えられてきたIAA生合成中間体に加えてトリプトフォールに阻害剤処理からの回復効果が見られ、トリプトフォールもIAA生合成に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AOPP処理によって、ShootでのYUC2とYUC4の発現が誘導されたことから、これらの遺伝子発現がオーキシン生合成フィードバック制御のターゲット遺伝子である可能性が示唆された。オーキシンのフィードバック制御はGH3によるIAAのアミド化が知られているが、今回、生合成そのものによる調節がオーキシンホメオスタシスに寄与している可能性が示唆され、非常に意義深い成果と考えている。YUCCA遺伝子ファミリーはオーキシン生合成の律速段階をコードする遺伝子であり、律速酵素が触媒するステップが負のフィードバック制御の調節ステップであることは合理的であると考えている。プロジェクト初年度においてフィードバック制御のターゲットサイト候補が得られており、プロジェクトの進捗状況は非常に順調であると考えている。 その一方で、中間体プロファイルの解析は遅れている。これは、当初来年度に予定していた中間体投与実験を前倒しで行なったことが原因である。しかし、中間体投与実験を先に行ったことで、阻害剤効果から回復させる有効な中間体を複数絞り込むことに成功した。来年度はこの成果を活用して、中間体プロファイリングを行う予定である。 安定同位体標識中間体を用いたトレーサー実験については、オーキシン生合成の主要経路が同定された現在、経路間の区別をすることにあまり意味が無くなったため中止する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までにオーキシン生合成フィードバック制御のターゲットサイトがYUC遺伝子であることが示唆された。しかし、ShootとRootではYUC遺伝子ファミリーの発現プロファイルも異なる。また、YUC遺伝子ファミリーの中でもそれぞれ異なった発現パターンを示す。さらに、オーキシン量の増減がどのような分子メカニズムを介してYUC遺伝子ファミリーの発現調節に繋がっているのかは明らかでない。今後は、1)YUC遺伝子ファミリーの発現がどのような分子メカニズムを介して調節されているか、2)その結果、オーキシンの変異体や阻害剤処理でどのような中間体プロファイルになっているのかを調べることで、オーキシン生合成におけるフィードバック制御の分子機構を明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の中核となる実験は大きく分けて2つに大別される。一つは様々なサンプル、条件におけるYUC遺伝子ファミリーの発現解析を調べるための定量RT-PCRであり、もう一つは様々なサンプル、条件におけるオーキシン生合成中間体プロファイリングのための化合物分析である。前者の実験にはRNA抽出、逆転写および定量RT-PCRなどが含まれ、これら分子生物学実験用試薬・キットに80万円を計上する。後者の実験はLC-MS等によるオーキシンおよび中間体の定量分析であり、カラム代等LC-MSの運転に関わる分析消耗品および関連試薬として80万円を計上する。その他に一般プラスチック消耗品および植物栽培関連製品として10万円ずつを計上する。
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