2012 Fiscal Year Research-status Report
トマト根浸出液に含まれる青枯病菌の走化性誘引物質の解明
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23580146
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
夏目 雅裕 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10201683)
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Keywords | 青枯病菌 / 走化性 / 根滲出液 / トマト / 誘引物質 |
Research Abstract |
トマト5品種(桃太郎、ポンテローザ、大型福寿、世界一、千果)の根滲出物を調製し、酢酸エチル抽出物、活性炭吸着フラクションと水溶性フラクションに分画した。各フラクションの収量・割合は、ミニ品種の千果以外はほぼ同じであった。各フラクションの走化性誘引活性を昨年度選抜した青枯病菌株を用いて調べた。その結果、千果以外の4品種の水溶性フラクションは強い誘引活性を示し、大型福寿の活性炭吸着フラクションにも活性が見られた。しかし、予備実験で活性のあった酢酸エチル抽出物には活性は見られなかった。また、昨年度の被検菌の選抜で比較的良好な反応を示した2菌株に対する大型福寿の活性炭吸着フラクションの活性を調べたが、反応は弱かった。以上の結果から、今後は大型福寿の根滲出物について昨年度選抜した被検菌株を用いて走化性誘引活性物質を探索することとした。 トマト以外の植物の根浸出液に走化性誘引活性があるかどうかを調べるために、イネ、ナタネ、アルファルファを栽培し、根滲出物を得て、トマトの場合と同様に分画した。イネの水溶性フラクションの収量がトマトや他の植物よりやや多かったが、それ以外のフラクションの収量には大きな違いは見られなかった。現在、各フラクションの走化性誘引活性を調査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最終目標は青枯病菌を誘引するトマトに特徴的な成分を根浸出液から単離構造決定することである。予備実験では酢酸エチル抽出物に活性があり、目標とする化合物が存在する可能性が高いということで本研究に踏み切ったが、繰り返し行った追試でも活性は見られなかった。しかし、トマト品種を調査した結果、大型福寿という比較的古い品種の活性炭吸着フラクションに誘引活性が見られたことから、このフラクションから目的化合物が得られる可能性はあると考えている。来年度はこの物質の活性の確認と精製単離を進めたい。 一方、トマトに特徴的な成分を明らかにするという視点で、トマト以外の植物の根滲出物と活性を比較しながら精製をすることで、トマトの根滲出物に含まれる主要な走化性誘引活性物質を解明することも新たな目標とする軌道修正を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
①大型福寿の根滲出物活性炭吸着画分に含まれる走化性誘引物質の単離構造決定:本物質はトマトに特徴的な青枯病菌誘引物質である可能性が高く、粗生成物の段階でもポジティブコントロールであるグルタミンより低濃度で活性を示すことが明らかになっており、その単離構造決定が期待される。 ②水溶性フラクションに含まれる主要な走化性誘引活性物質の解明:水溶性フラクションはアミノ酸や糖、有機酸などこれまでに走化性誘引活性が報告されている既知物質を含むと考えられることから更なる検討は行っていなかった。しかし、これまでの走化性誘引物質研究は根滲出物の活性とアミノ酸や糖などの標品の活性を調べるに留まっており、根滲出物中の何が誘引活性に最も寄与しているかを調べた研究は無い。そこで、走化性誘引活性を指標に根滲出物を精製し、主要な活性物質を明らかにする。 ③上記①と②の研究は、イネ、ナタネ、アルファルファの根滲出物と活性を比較しながら精製をすることで、トマトに特徴的な走化性誘引成分の解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画からの変更はなく、主にトマト種子や精製基剤の購入に充てる予定である。
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