2012 Fiscal Year Research-status Report
加圧熱水による反応場を用いたデンプン・多糖類のナノ粒子分散系調製技術の開発
Project/Area Number |
23580157
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
清水 直人 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70323251)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 俊範 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 特任教授 (60111241)
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Keywords | 食品工学 / フードナノテクノロジー / ナノ材料 / 機械工作・生産工学 |
Research Abstract |
本研究は,ある程度過酷な反応場(温度:~200 ℃(473.15 K),圧力:~7 MPa)を加圧熱水システムにより作りだし,大きな目標として食品加工やバイオマス変換技術として広く応用の可能なデンプン・多糖類のナノ分散系調製のための加工基盤技術を開発することにある。具体的な課題として,加圧熱水システムの反応条件に基づいてデンプン・多糖類ナノ粒子分散系を調製するとともに,ナノ粒子化ための各種温度・圧力条件で得られた結果を取り纏めて反応条件と粒子径との関係を明らかにし,粒子径制御プロセスを提案する。 ナノ分散系調製の条件検討:デンプン,ブナ由来キシランを供試し,耐圧容器内の条件を整えた後に,有機合成装置ヒータで昇温させながら,加圧熱水の反応場を創り出した。反応を始めてから設定温度到達までの過程における温度変化,圧力変化を計測しながら,具体的には,昇温時間を4段階18, 36, 54, 72 minに設定した。 ナノスケール加工とナノ分散系の安定性:上記方法を用いて,デンプン・キシランのナノスケール加工を進めたところ,耐圧容器の初期圧力 2.0 MPa,加熱時間 72 minの条件(熱水の内部エネルギー 約13.3 kJ/mol)で,最小ナノ粒子が調製され,これらナノ分散粒子の粒子径(D50)は,デンプンで52.9 nm,キシランで492 nmであった。ナノ粒子分散系の安定性評価を行うため,5℃で1カ月貯蔵試験を行ったところ,最も小さなナノ粒子分散系では,凝集が認められず分散系のナノ粒子は,安定していることが明らかになった。 走査型電子顕微鏡観察:ナノ分散系から調製された固体試料の走査型電子顕微鏡によって,様々の形状や大きさの粒子が観察された。乾式の粉砕方法では,破壊できない糯米デンプン粒が,ナノスケール加工されたナノ分散系の粒子においては,破壊されている状態が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大きな成果としては,加圧熱水システムの条件を設定し,ナノスケール化を進め,乾式粉砕・分級方法では困難であった米デンプン粒子のナノスケール化が達成され,設定目標近くの平均粒径サイズまでデンプン粒子を小さくできたことにある。ナノ分散系調製の設定条件に基づいて,デンプン・キシランのナノスケール加工を進め,得られたナノ分散系の安定性についての知見が得られた。具体的成果としては,デンプン・キシランそれぞれのナノスケール加工を進めたところ,耐圧容器の初期圧力 2.0 MPa,加熱時間 72 minの条件で,最小ナノ粒子が調製され,これらナノ分散粒子の粒子径(D50)は,デンプンで52.9 nm,キシランで492 nmであった。さらに,ナノ粒子分散系の安定性評価を行うため,調製ナノ粒子をスクリューバイアル瓶に封入して5℃で1カ月貯蔵試験を行ったところ,最も小さなナノ粒子分散系では,凝集が認められず分散系のナノ粒子は,安定していることが明らかになったことにある。さらに,これまでの本研究の取り組みで開発されたナノスケール加工技術による調製ナノ分散系粒子の走査型電子顕微鏡による微粒子構造においては,乾式の粉砕方法では,破壊できない糯米デンプン粒が,破壊されている状態が観察されるなど,新しい知見が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
加圧熱水による反応場を用いて設定目標近くの平均粒径(D50:100 nm以下)までデンプン粒子をサイズダウンして,ナノ粒子分散系が調製できた。この成果をもとに,今年度は,糖質素材のサイズダウンによって生ずる融点低下,溶解度増大,結晶化,物性改良等の物理化学的性質の解明を目標に,これら3つの課題を進める。粒子径の揃ったナノ粒子分散系を調製し,明らかにされたそれぞれのナノ粒子の物理特性を取り纏め,調製ナノ粒子の新機能が提案される。 ・超遠心分離機を用いた均一ナノ粒子分散系の調製:超遠心分離機(ベックマン・コールター:L-80XP)を使用して,所定の回転数(~最大 80,000 rpm)に設定してナノ粒子分散液の遠心分離を行い,試料を調製する。 ・ラマン分光/X線回折による構造解析による分散系のナノ粒子の物理特性の解明 ナノスケール加工された分散液や,遠心分離による調製ナノ粒子を用いて,分散粒子の構造解析を進め,ナノ粒子の物理特性を解明する。 ・噴霧乾燥及び凍結乾燥粉末の構造解析 X線回折によるナノ分散液の構造解析を進めるにあたり,調製ナノ分散液濃度を調整する工夫が必要になることが予想され,噴霧乾燥や凍結乾燥を用いた調製粉末を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度に取りまとめた研究成果を海外国際会議にて発表するたの旅費支払いに使用する。
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