2011 Fiscal Year Research-status Report
新規慢性炎症関連因子「アンジオポエチン様因子2」を標的とした慢性炎症予防
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23580174
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
西山 和夫 宮崎大学, 農学部, 准教授 (40164610)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アンジオポイエチン様因子2 / 慢性炎症 / 脂肪細胞 / がん / がん細胞 |
Research Abstract |
脂肪細胞に由来するアンジオポイエチン様因子2は肥満時に発現量と分泌量が増加し、脂肪組織において慢性炎症を惹起し、メタボリックシンドロームや糖尿病の発症に重要な役割を果たしていることが報告されている。本年度の研究では、まず、前駆脂肪細胞株である3T3-L1細胞におけるアンジオポイエチン様因子2の遺伝子発現に対するリポ酸の影響をRT-PCR法で調べた。その結果、抗炎症作用を示すことが報告されているリポ酸が成熟過程の3T3-L1細胞におけるアンジオポイエチン様因子2の遺伝子発現を抑制することが認められた。しかし、リポ酸の作用は顕著なものではなかった。 次にアンジオポエチン様因子2の受容体であることが報告されているインテグリンβ1の発現に対する影響について検討した。ラットの繊維芽細胞である3Y1細胞及び3Y1細胞をがん遺伝子v-H-rasで形質転換したHR-3Y1-2細胞におけるインテグリンβ1の発現量を調べた結果、HR-3Y1-2細胞における発現量が3Y1細胞よりも高いことが明らかとなった。さらにこれらの細胞におけるインテグリンβ1発現に対するリポ酸とNADPHオキシダーゼ阻害剤であるアポシニンの作用を調べた結果、どちらもHR-3Y1-2細胞選択的にインテグリンβ1の発現量を低下させることを明らかにした。アンジオポエチン様因子2が炎症に起因する発がんやがん転移に関与することが報告されており、これらの結果は、がん細胞が正常細胞よりも高いレベルのインテグリンβ1を発現しており、アンジオポエチン様因子2に対する高い感受性をもっている可能性を示唆するものである。また、食品成分によるアンジオポエチン様因子2受容体の発現制御による慢性炎症予防の可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アンジオポイエチン様因子2の遺伝子発現をRT-PCRで定量する系を確立した。アンジオポエチン様因子2の受容体であることが報告されているインテグリンβ1の発現に酸化ストレスが関与していることと抗酸化物質による抑制が可能であることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は既に共役リノール酸やプロアントシアニジンが脂肪細胞の分化・成熟を抑制することを明らかにしているので、リポ酸に変えて、これらの食品成分の3T3-L1細胞におけるアンジオポイエチン様因子2遺伝子発現に対する影響を調べる。ELISAによるアンジオポイエチン様因子2タンパク質の定量を試み、タンパク質レベルでの発現への影響も検討する。3T3-L1細胞培養上清のHR-3Y1-2細胞におけるアンジオポイエチン様因子2-インテグリンβ1シグナル伝達への影響とリポ酸、アポシニンによる抑制の可能性について検討する。3T3-L1細胞におけるアンジオポイエチン様因子2遺伝子発現は低酸素ストレスによって上昇することが報告されているが、申請者は共役リノール酸が低酸素ストレスを抑制する作用を示す結果を得ているので、低酸素条件下におけるアンジオポイエチン様因子2遺伝子発現に対する共役リノール酸の影響についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬、血清、培養器具、抗体、ELISAキット等の消耗品に約80%、成果発表のための旅費に約20%使用する予定である。
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Research Products
(10 results)