2011 Fiscal Year Research-status Report
微高圧炭酸ガス殺菌技術のメカニズムと適用性に関する基礎的・基盤的研究
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23580191
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
岩橋 均 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (60356540)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 炭酸ガス / 殺菌技術 / 酵母 / ゲノミクス / メタボロミクス / 食品 |
Research Abstract |
(1) 殺菌メカニズム解析 23 年度は、ゲノミクスによる遺伝子発現解析を進めて、より信頼できる結果を蓄積した。メタボロミクス解析については、条件を設定し、来年度開始できる状態にした。遺伝子発現解析の結果をまとめる。5気圧炭酸ガス処理により誘導された遺伝子は、2倍誘導で507遺伝子、4倍誘導で、67遺伝子であった。これらを機能解析したところ、2倍誘導では、アルギニン代謝、尿素サイクル等の代謝系、鉄イオンの輸送、イオンの輸送など細胞膜トランスポーター系、熱ショック応答によるストレス応答系、熱感作反応、グルタチオン関連、過酸化反応などの解毒系、等の機能群が顕著に誘導されていた。4倍誘導では、上記の内、尿素サイクル、イオンの輸送系が残り、これら機能が顕著に誘導されている可能性を示している。2倍誘導遺伝子産物の細胞内局在を解析したところ、液胞、細胞膜、に局在する遺伝子産物をコードする遺伝子の誘導が顕著であった。特に液胞に局在する因子をコードする遺伝子の誘導が顕著であった。誘導された遺伝子のリストを解析すると、上位に位置する遺伝子のほとんどが、細胞膜に局在する鉄イオン輸送に関与する遺伝子であった。また、界面活性剤などのように細胞膜に影響を与えると誘導される遺伝子マーカーとして知られる、INO1とOPI3の誘導が顕著であった。以上を総合すると、液胞、を構成する細胞膜に、大きな影響を与えていることが推定される。また、鉄イオンの細胞内輸送に何らかの影響を与えていることを示している。今後の解析ターゲットとして確認実験を行う予定である。(2) 適用微生物種プロファイルの作成 本研究開始時期に、職場を移動した事と旧職場が被災したため、保存菌株の移送が不可能と成った。このため指示菌株の収集を開始、菌株の再収集を完了することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
転職による職場の変更並びに旧職場における地震被害のため、殺菌プロファイル部分が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)殺菌メカニズム解析(推定から確認実験へ) 24 年度にはメタボロミクス解析を終了する。これにより、炭酸ガス殺菌効果のメカニズム推定が可能になる。推定の根拠となるのは、炭酸ガスによって誘導される遺伝子の機能群に関する情報と、その結果、変動が期待される代謝物質量がメタボロミクス解析結果で確認できるか否かとなる。ゲノミクス・メタボロミクス結果から推定されるメカニズムの確認実験が、24 年度以降の中心的課題となる。まず、特定の機能群が誘導されているという情報を利用して、これに該当する機能群に属する遺伝子について、遺伝子破壊株を用いた確認実験を行う。選択する遺伝子破壊株は、炭酸ガスによって誘導される遺伝子ではなく、誘導される機能群に含まれる遺伝子である。遺伝子を標的とするよりは機能を標的とした方が、メカニズム解析に有効であることは既に報告している。予備的検討からは、細胞膜にその遺伝子産物が局在する遺伝子の誘導が顕著であることが示唆されている。この点が確認されれば、誘導された遺伝子の中で、GFP で標識された膜局在タンパク質についても蛍光顕微鏡観察を行う予定であるが、現時点では確定しない。さらに、誘導遺伝子、誘導されないが誘導機能群に属する遺伝子、GFP 融合タンパク質観察によりその重要性が確認された遺伝子については、定法に従い分子生物学的改変や解析を行う予定であるが、前述のように高圧ガスが生物に与える影響についてはその知見がほとんどないことから、現時点では、操作を特定できない。24 年度には、メカニズムに関する研究をほぼ終了させたいと考えている。24 年度は遅れている真核微生物に加えて、原核微生物を対象として、適用微生物種プロファイリングの作成を行う。対象は、大腸菌、枯草菌、非病原性サルモネラ属株等、入手可能なタイプカルチャーを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
培地等の実験試薬消耗品(100万円)、メタボロミクス解析にかかる委託分析費(100万円)または分析消耗品の支出が予定されている。滋賀での国際学会などへの参加費を含めた学会発表並びに情報交換にかかる交通費(30万円)が考えられるが、予算ではまかなえないため、極力節約に努める。
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Research Products
(3 results)