2011 Fiscal Year Research-status Report
樹高限界決定因子の解明ー樹木水分生理学の視点からー
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23580213
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
池田 武文 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (50183158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 正文 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (00444993)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / アメリカ合衆国 / カナダ |
Research Abstract |
【はじめに】樹木はどこまで高くなれるのか?琉球列島に分布するリュウキュウマツは成長につれて樹冠上側のシュートの上方向への成長が止まり横方向にのみ伸びることで、樹冠上部が扁平になる。さらに、人工造林された宮古島のリュウキュウマツでは、樹冠が扁平化した樹冠上部のシュートが2004年頃から枯れる個体が見られる。その原因を探るため、葉量と葉色からリュウキュウマツを健全木と衰弱木に区別し、針葉の水分生理特性に関する各種パラメーターと枝の水分通道特性を調べた。【結果と考察】健全木、衰弱木とも、Ψw,tlp(初発原形質分離時の水ポテンシャル)≒Ψw,mid(日中の水ポテンシャル)で、葉が萎れる寸前まで水分状態が低下していた。さらに。衰弱木の枝の水分通導能力は健全木に比べ著しく低かった。キャビテーション感受性は両者の間に有意な差は認められず、それは根においても同様であった。キャビテーション感受性の増大が水分通道機能の低下に関与する可能性は低いことが示唆された。衰弱木の枝には傷害跡が多数認められたことから、染色液を通して水分通道部位を確認したところ、傷害跡が認められた枝の通道部位は正常な枝の半分程度であった。この傷害跡が形成された時期を特定するために顕微鏡で年輪を観察すると、2003年に襲来した台風14号の猛烈な風による傷であることがわかった。以上より、宮古島のリュウキュウマツの水分状態は萎れる寸前まで低下しており、台風による枝の損傷が枝の水分通道部位を低下させることで、水の供給が低下し、シュートが枯れるというメカニズムを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宮古島のリュウキュウマツで見られるシュートの枯れのメカニズムを水分生理の視点から示すことができた。これに関しては、渡米し海外共同研究者であるユタ大学教授ション・シュペリーと議論し、今後研究の方向性として、自生地である沖縄本島のリュウキュウマツとの比較が必要であることを確認した。さらに、2011年オーストラリア・メルボルンで開催された第8回国際植物会議に参加・研究発表と行い、本研究課題に関連する情報収集につとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
このようなシュートの枯れは沖縄本島では認められないことから、今後は、その差が何に起因しているのかを探り、樹冠扁平化のメカニズム解明につなげる。さらに、宮古島のリュウキュウマツではシュートの枯れにとどまらず個体の枯れも発生していることから、この原因解明にも取り組み、リュウキュウマツ人工林の管理指針に役立てたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
野外の自然状態で生育している樹木の反応は、年による気象条件の変動に左右されるため、宮古島においては、平成23年度に実施した水分状態の測定を実施し、この測定に供した試料を研究室に持ち帰り、実験室での水分生理特性、水分通道特性、枝のキャビテーション、枝の解剖学的特性に関する観察を行う。さらに、宮古島のリュウキュウマツとの比較のため、沖縄本島に自生するリュウキュウマツについても、同様の研究を進める。ここで得られた研究結果は、もう一人の海外共同研究者であるカナダ・アルバータ大学のハッケ准教授の評価をあおぎ、次年度への研究、そして論文作成と平成25年度にイギリス・ロンドンで開催される国際生態学会での研究発表にそなえる。
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Research Products
(2 results)