2012 Fiscal Year Research-status Report
学びと暮らしの環境における木質利用と子どもの育ちに関する基礎研究
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23580225
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
浅田 茂裕 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40272273)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾崎 啓子 埼玉大学, 教育学部, 教授 (80375592)
小林 大介 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (00433144)
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Keywords | 木質化 / 学校施設 / 子育て支援 / 室内環境 / 快適性 / 木材利用 / 木造校舎 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度実施した木造、木質化された学校の快適性調査の結果についての分析と木材を利用した各種施設の快適性や効果についての検討を進めた。 学校に対する調査については、内装の木質率と生徒のイメージやストレス状態の関係など、今後の木造校舎、内装木質化の方法、および木材利用による教育環境の状況についての結果分析を進めるとともに、児童・生徒、教員に対するインタビューなどの調査を併せて実施し、量的資料と質的資料を相互に利用して検討を進めた。とくに、グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)と呼ばれる質的分析法に基づいて、教員、主に管理職の先生方を対象としたインタビュー調査の結果を分析し、木造校舎や内装が木質化された教室のもつ機能や教育的意義を含む、教員の学校校舎の快適性概念を明らかにした。また、調査時の質問項目の内容と構造化の方法、対象とした教員の属性の特殊性と範囲の点から、教員特有の認知構造との関わりや、性差を含めた結果の特殊性と本研究の成果の活用における留意点についても検討した。 木材を利用した施設の検討では、東京都内の子育て支援施設を取り上げ、子どもの学び、育ちと子育て支援に及ぼす木材利用のあり方について検討した。その結果、子育て世代の母親にとっての木質化された子育て支援施設の機能と役割は、木を使った安全安心な室内空間によって、母親自身が日常のストレスから解放され、癒される場であるとともに、子どもを育てることの楽しさや子どもの成長についての喜びを実感し、親としての使命や役割、幸福感を再認識する場であると推察された。また、木質化とともに配置された豊富な木のおもちゃ、遊具の存在は新しい子育て方法についての学習拠点としての機能を付加するとともに、木材利用と子育て空間の関係を子育て世代に伝える重要な情報発信の拠点としても機能していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で進める調査については、概ね実施が完了しており、現在は関係者に対する聞き取り調査など補完的な調査を中心に進めるなど、まとめの段階にある。学校等の施設に対する木質化の効果、とくに心身の健康に及ぼす影響については、詳細な分析が進んでおり、また、学校以外の施設に対する調査についても、すでに24年度中におおむね調査、データの収集は完了しており、現在その分析を進めているところである。とくに、24年度は、調査対象からのインタビュー調査など、質的データの入手、分析に務め、グラウンデッドセオリーアプローチに準拠した方法によって、教員の快適性概念の分析を進め、その構造を明らかにするなど、重要な成果が得られた。また、東京都内の木質化された子育て支援施設の調査においても、子育て世代に対する施設の価値などを明らかにした。 こうした状況から、本研究は研究の目的を達成するために、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度より実施してきた本研究の特徴は、質問紙調査のような量的調査の実施とともに、学校施設関係者、教職員、児童・生徒に対する対面調査(インタビュー)、観察調査等の質的調査を並行して行うところにある。これまでに、学校施設関係者に対する量的、質的調査はほぼ完了し、とりまとめも順調に進んでいる。今後は、学校外の施設(子育て支援施設)に対する調査や建築関係者に対する聞き取りを進め、学校の快適性に関して、使用者の視点と設計・施工者の視点の双方から検討を進め、最終的なとりまとめを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度である25年度については、学校訪問を中心とした調査旅費への研究費配分を中心に計画を進めている。また、分析に必要なソフトウエアの補充や調査用シート等の消耗品、データ分析のための謝金等についても配分するとともに、最終報告書の作成等に予算執行する予定である。
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