2011 Fiscal Year Research-status Report
転作作物としての新規需要米生産による耕畜連携の促進に関する研究
Project/Area Number |
23580293
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
宮田 剛志 高崎経済大学, 地域政策学部, 講師 (70345180)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 信和 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (20115596)
萬木 孝雄 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (30220536)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 戸別所得補償モデル対策 / 第3回目の食料・農業・農村基本計画 / 新規需要米(特に、飼料用米) / 生産費用 / 流通費用 / 単収の高い生産者の収益<単収の低い生産者の収益 / 大規模法人経営における生産に起因するリスク / 大規模法人経営における市場に起因するリスク |
Research Abstract |
戸別所得補償モデル対策(以下、モデル対策と略記)の成果について政策資料と現地実態調査から整理・分析を行った。 第3回目の食料・農業・農村基本計画(以下、基本計画と略記)では、10年後の平成32年度を目標に食料自給率50%を実現するために、各品目の目標生産量・収量・作付面積が算定された。飼料用米生産では800kg/10aの収量で8.8万haの作付がその目標とされ、その政策手段として8万円/10aの助成が行われることとなった。この助成金の水準は主食用米との収益差を前提に算定されていた。そこで本研究では、モデル対策が実施される以前から飼料用米生産を行っていた地域を主な分析対象地とし、モデル対策の効果を検証することを課題とした。 そこでは、モデル対策が実施される以前から第3回目の基本計画が目標としている800kg/10a以上の収量を実現している生産者も存在していた。加えて、モデル対策の実施の効果により急速に飼料用米生産の作付面積が拡大していた。ただし、モデル対策が実施される以前より800kg/10a以上の収量を実現している生産者では、主食用米とほぼ同様の施肥・雑草防除を行っていたため、生産費用、流通費用の両面において800kg/10a以上の収量を実現している生産者>600kg/10a以上の収量を実現している生産者の関係が成立している可能性が推察された。このため、収益性においては800kg/10a以上の収量を実現している生産者<600kg/10a以上の収量を実現している生産者の問題が顕在化している可能性が示唆された。この結果、モデル対策下では、このような収益差のさらなる拡大の可能性が指摘されていた。 一方、日本農業の構造再編の最先端に形成されている大規模畜産法人経営といえども、2000年代に入り生産、市場に起因するリスクによって損失を発生させている実態も指摘されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、新規需要米について、特に、飼料用米やWCS用稲に焦点をあて、耕種・畜産の両部門から現地実態調査を実施し、農業者戸別所得補償制度に求められる政策的に整合性を有した具体的な論点について示唆を行うことを目的としている。具体的には、耕種部門に関しては、(1)戸別所得補償モデル対策(以下、モデル対策と略記)が生産調整の中心に据えている飼料用米やWCS用稲といった新規需要米が、現場でどのように実施されているのか、(2)遊休農地=「過剰水田」の解消が実現されているのか、(3)資源循環型社会の構築の可能性、という3点から現地実態調査が進められる。畜産部門に関しては、全畜種を対象として、(1)どの程度の飼料用米、及びWCS用稲が給餌されているのか、(2)輸入粗飼料・濃厚飼料との価格差は解消されているのか、(3)生産コスト、収益性の水準の検証といった3点について、同様の調査が進められる。 耕種部門の収益性に関しては、モデル対策下で、800kg/10a以上の収量を実現している生産者<600kg/10a以上の収量を実現している生産者の問題がさらに拡大している可能性が指摘されている。ただし、このような問題の発現があるにせよモデル対策の実施の効果により急速に飼料用米生産の作付面積が拡大しており、遊休農地=「過剰水田」の解消が進展している可能性も示唆されている。 また、畜産部門に関しては、日本農業の構造再編の最先端に形成されている大規模畜産法人経営といえども、2000年代に入り生産(家畜疾病に起因するリスク:口蹄疫等々)、市場に起因するリスク(飼料価格高騰に起因するリスク等々)によって損失を発生させている実態も指摘されている。加えて、特に、飼料用米生産においては、助成金を前提とした上で、依然としてなお、濃厚飼料との価格差が解消されていない可能性も推察された。
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Strategy for Future Research Activity |
戸別所得補償モデル対策(以下、モデル対策と略記)の成果を踏まえて、耕種部門に関しては次の手順によって分析が進められる。 GPS(全地球測位システム)、GIS(地理情報システム)に関しては、大分県北部地域の飼料用米、WCS用稲の生産者である建設業、集落営農、個別大規模経営の作業毎の各機械において、装置を着けてもらう予定である。大分県北部地域では、外部の「仲介・調整」組織によって飼料用米、WCS用稲の作付・収穫先の調整やそのためのルールづくり等が模索されてきた経緯からも、GPS(全地球測位システム)の装着に伴う有益なデータが収集されると期待される。その際、調査設計は研究代表者(宮田)が中心となって行い、各経営体や関係機関への聞き取り調査は、研究分担者(谷口・万木)と連携して行う。GPS(全地球測位システム)を用いて計測された圃場での作業時間、労働日数等について、GIS(地理情報システム)を用いて視覚化を研究代表者(宮田)が中心となり行う。また、実測値をもとに、計量的手法を用いて、地域農業の効率的な農地利用についてのシミュレーション分析に関しても研究代表者(宮田)が中心となり研究分担者(万木)の協力を得ながら行なう。上記の研究と同時並行して、研究分担者(谷口・万木)は、WCS用稲の現状についてマクロ的な把握や整理を行うと共に、研究代表者(宮田)による聞き取りや分析について全般的な支援、具体的には、データの入力や分析、分析結果の考察などについても、可能な限りの作業を担う予定である。また研究分担者(谷口・万木)は、研究代表者(宮田)との連携に基づきながら、水田における飼料用米及びWCS用稲を政策として促進する上で、より効率的な補助金制度のあり方、及びそれを支えるための組織の体制についても、分析を深めて成果として取りまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成22年度の戸別所得補償モデル対策、平成23年度の農業者戸別所得補償制度の成果について、研究代表者(宮田)が中心となり研究分担者(谷口・万木)の協力を得ながら政策資料と研究動向の両面から分析・整理を行うための書籍費・資料収集費が中心となる。 耕種部門に関しては、GPS(全地球測位システム)、GIS(地理情報システム)を用いて、大分県北部地域、秋田県を対象とした各経営の農地利用、遊休化の状況、作業の効率性などの計測・視覚化の継続を行うための現地実態調査やそのための謝金が中心となる。 畜産部門に関しては、全畜種を対象に現地実態調査やそのための謝金が中心となる。
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Research Products
(5 results)