2012 Fiscal Year Research-status Report
転作作物としての新規需要米生産による耕畜連携の促進に関する研究
Project/Area Number |
23580293
|
Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
宮田 剛志 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (70345180)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 信和 東京農業大学, 農学部, 教授 (20115596)
萬木 孝雄 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (30220536)
|
Keywords | 農業者戸別所得補償制度 / 新規需要米 / 生産者・作付面積・出荷量の増加による一定の成果 / 単位面積当たりの一律助成 / 主食用米の単収<飼料用米の単収 / 肥料や農薬の種類や量、あるいは施用方法の変更 / 制度の的確な再設計 / 基本計画の実現の可能性 |
Research Abstract |
旧政権における農業者戸別所得補償制度の成果について政策資料と現地実態調査から整理・分析を行った。そこで本研究では、旧政権における制度が実施される以前より新規需要米の生産を行っていた地域を主な分析対象地として、その効果を政策資料と現地実態調査から検証することを課題とした。 2010年度の戸別所得補償モデル対策(以下、モデル対策と略記)と同様に、新規需要米に対して8万円/10aの単位面積当たりの助成金が継続して支払われることとなったため、新規需要米の作付を行う生産者・面積・出荷量は順調に増加している点から一定の成果が挙げられたことが確認される。 ただし、単位面積当たりの一律助成という制度が、単収増加や生産・流通費用のコスト削減を阻害してしまう実態が、同じ分析対象地の中においても拡大している点についても現地調査より確認された。このため、本来ならば、主食用米よりも多収品種である新規需要米(特に、飼料用米)において、単収が主食用米よりも低下してしまっている実態も明らかとなった。この点は、モデル対策、本制度の実施に伴って、新たに単収の低い生産者が加わったことのみではなく、それ以前から新規需要米の生産を行っていた生産者にも起因していた。その主な要因として、肥料や農薬の種類や量、あるいは施用方法などが変更された点が挙げられる。また、飼料用米品種の大よその栽培方法が掴めたため、肥料や農薬、水管理等の作業を適度の抑えて一定程度の単収に留めるといった率直な回答をされた生産者も少なくはなかった。とはいえ、生産・流通コストの問題を認識されながらも依然として主食用米よりも高い単収を実現している生産者も存在している。 すなわち、長期的に増産へのインセンティブを組み込み、輸入穀物価格との価格差が解消されるような制度が的確に再設計されるならば、基本計画が掲げる目標も実現も、あながち困難とは考えられない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、新規需要米に関して、特に、飼料用米、WCS用稲に焦点を当て、耕種・畜産の両部門から現地実態調査を実施し、新政権に求められる政策的に整合性を有した、安定的で、かつ、ぶれない施策のための具体的な論点に関して示唆を行うことを目的としている。 新規需要米に関して、モデル対策、本制度下の下では、飼料用米の玄米単収で800kgを実現している生産者がいるにもかかわらず、生産・流通いずれのコストもかさんでしまうために、かえってその収益性は単収が低い(600kg程度の)生産者をも下回ってしまう問題を、また、その問題がさらに拡大している可能性について実態分析を通して説明している。 畜産部門に関しては、まず、リスクとそのマネジメントに関して、ISO31000(Risk management –Principles and guidelines:リスク・マネジメント-原則及び指針-)などもとに整理を行った。その上で、養豚経営の成長と安定性を阻害するリスク特定とそれに対応した制度に関して整理した、具体的には,家畜疾病に起因するリスク特定と制度,2006-2008年の飼料穀物価格の高騰等によって市場価格の変動に起因したリスク特定と制度-配合飼料価格安定制度,養豚経営安定対策事業-についても確認を行った。その上で,大規模法人経営や大規模家族経営が,どのようにこれらのリスクをマネジメントしてきたのか、また、これらのリスクが発生した際、その影響規模、その後の処理手段,損失の発生について明らかにしてきた。大規模法人経営では、日常的飼養管理の中で家畜疾病に起因したリスクが発生した場合、その被害は、繁殖めす豚100頭~150頭規模の家族経営の年間出荷頭数を上回る影響規模になることも確認された。
|
Strategy for Future Research Activity |
モデル対策、本対策の成果を踏まえて、耕種部門に関しては次の手順で分析が進められる。GPS(全地球測位システム)に関しては、大分県北部地域の主食用米、飼料用米、WCS用稲の生産者である建設業、集落営農、大規模経営体の作業毎の機械において装着してもらっており、2011-2012年度、有益なデータが収集されている。収集されたデーターに関しては、各経営体や関係諸機関への補足調査を実施することによって、各圃場毎に作業時間、労働日数等について、GIS(地理情報システム)を用いて視覚化を研究代表者(宮田)が中心となり行う。また、計測された実測値をもとに、計量的手法を用いて、地域農業の効率的な農地利用についてのシミュレーション分析を研究代表者(宮田)が中心となり研究分担者(万木)の協力を得ながら行う。 また、上記の研究と同時並行して、研究分担者は(谷口・万木)は、新規需要米の現状に関するマクロ的な把握や整理とともに、研究代表者(宮田)による実態調査や分析に関して全面的な支援を、具体的には、データの入力や分析、分析結果の考察に関しても、可能な限り作業を担う予定である。その上で、研究分担者(谷口・万木)は、研究代表者(宮田)との連携に基づき、新政権に求められる政策的に整合性を有した、安定的で、かつ、ぶれない施策のための具体的な論点に関して、その成果を取りまとめる予定である。具体的には、水田における新規需要米を促進する上で、より効率的な補助金制度の在り方、及びそれを支えるための組織体制に関してのより深い分析成果である。 畜産部門に関しては、特に養豚を対象として、①どの程度の飼料用米、及びWCS用米が給餌されているのか、②輸入粗飼料・濃厚飼料との価格差は解消されているのか、③生産コスト、収益性の水準といった3点に関しても、成果を取りまとめる予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
モデル対策、本制度の成果、また、新政権の制度について研究代表者(宮田)が中心となり研究分担者(谷口・万木)の協力を得ながら政策資料と研究動向の両面から分析・整理を行うための書籍費・資料収集費が中心となる。 耕種部門に関しては、GPS(全地球測位システム)、GIS(地理情報システム)を用いて、大分県北部地域、秋田県を対象とした各経営の農地利用、遊休化の状況、作業の効率性などの計測・視覚化の継続を行うための現地実態調査やそのための謝金が中心となる。 畜産部門に関して、全畜種、特に養豚に焦点を当てて、現地実態調査やそのための謝金が中心となる。
|
Research Products
(11 results)