2011 Fiscal Year Research-status Report
3D-CAD/CAEを利用した次世代型ビートタッパの高速高精度化に関する研究
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23580342
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
佐藤 禎稔 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (90142794)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 農業機械 / 機械設計 / テンサイ / モデル化 / CAD / CAE / 高速化 / シミュレーション |
Research Abstract |
北海道のテンサイは,高能率な機械収穫作業が要求され,その際不要な茎葉を除去するタッピング作業を必要とする。ビートタッパのフィラーホイールはテンサイの地上高に追従して上下に動き,それにリンク機構で取り付けられているタッピングナイフで茎葉を切断する。したがって,作業機が高速化すると追従性が低下し,高速化の障害になっている。近年,北海道農業は規模拡大が進み,高速高精度なビートタッパの開発が望まれている。そこで本研究は,パソコン用の3D-CADソフトとCAEの運動機構解析ソフトを利用し,コンピュータシミュレーションによって高速高精度作業を可能にする新たなビートタッパを開発することを目的とする。1)慣行のビートタッパはテンサイの地上高をフィラーホィールによって機械的に検出し,リンク機構によってタッピングナイフを上下に動かし,タッピングを行う。そこで,市販のビートタッパを供試して各部の構造や寸法を実測し,3次元CADソフトを用いてタッピング機構の3Dモデルをコンピュータ上に構築した。2)実際の圃場でテンサイの生育状態や作業速度等を調査し,CAEによるコンピュータシミュレーションを行う場合の各種パラメータを明らかにした。また,欧州の農業機械展および農業博物館等を視察し,ビートハーベスタの発達過程や最新の高性能収穫機についての資料を収集した。3)本研究では,実際のビートタッパのタッピング機構の動作とCAEが出力するシミュレーション結果を比較してその妥当性を検証する必要がある。そこで,ビートタッパが実際の圃場で作業している状態を再現できる機械的なシミュレータを製作し,実際のタッピング機構の挙動をハイスピードムービーカメラで撮影し解析する手法を開発した。また,CAEによる基本的な動作シミュレーションを行い,コンピュータシミュレーションが可能であることの知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慣行のビートタッパは50年ほど前に開発されてから,大きな改良がほとんど行われていない。しかし,北海道十勝地方では農家一戸あたりの耕地面積が約40haにも達し,高速高精度なビートタッパの開発が望まれている。本研究は,近年普及し始めているパソコン用の高性能3D-CAD/CAEソフトを利用し,コンピュータシミュレーションによって高速高精度作業を可能にする新たなビートタッパを開発することを目的としている。 本年度は,まず慣行のビートタッパを供試して各部品の形状と寸法等を測定し,コンピュータのCAD上にその3Dモデルを構築することを第一の目標としたが,その目的は十分に達成された。また,構築した3DモデルについてCAEの運動機構解析ソフトを利用し,タッピング機構の基本的な動作をコンピュータシミュレーションする手法を開発することができた。 さらに,慣行のビート収穫作業の実態を調査し,コンピュータシミュレーションを行う場合の各種パラメータを明らかにすることができた。また,ドイツで開催された農業機械展および農業博物館を視察し,ビートハーベスタ発達過程や大規模農業に対応した高能率ビートハーベスタの有益な最新情報を収集することができた。 本研究では,3D-CAD/CAEを利用して高速高精度に対応したビートタッパを開発することを目的としているが,その際実際のタッピング機構の動作とCAEが出力するシミュレーション結果を比較してその性能等を検証する必要がある。そこで,ビートタッパが実際に圃場走行している状態をある程度室内実験で再現できる機械的なシミュレータを製作し,その挙動をハイスピードカメラで撮影し,動作解析する手法を確立することができた。 以上のように,本年度計画していた研究計画をほぼ予定通りに実施することができ,次年度以降の研究の進展につながるものと自己評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果から,供試した3D-CAD/CAEによって実際のビートタッパのタッピング機構の基本的な挙動をある程度コンピュータシミュレーションできる知見を得た。そこで,次年度はまず,製作した機械的なシミュレータを利用して,実際のビートタッパの地上高に対するタッピングナイフの追従性等をハイスピードムービーカメラで撮影し,その挙動を数値化して評価する。また,供試したビートタッパのタッピング機構の3Dモデルの運動をCAEでシミュレーションして追従性等を分析評価し,シミュレーション結果と実機の挙動を比較することによって両者の相違点とCAEソフトの計算精度等を検証する予定である。さらに,供試機の高速化の障害となっているタッピング機構の問題点などをCAEのシミュレーションで明らかにし,実際に種々の改良をコンピュータ上に構築した3Dモデルに加え,その改善効果についてコンピュータシミュレーションで繰り返し評価し,ビートタッパの高速高精度化の改善点を明らかにしてバーチャル的に次世代型ビートタッパを開発する予定である。 さらに,翌年度は開発した次世代型ビートタッパについて慣行機の改良または試作を行い,室内実験によりその挙動を撮影して改善効果を確認するとともに,開発したビートタッパを実際の圃場で実証試験を行い,3D-CAD/CAEによる農業機械の開発手法の妥当性を総合的に評価する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一般に,農業機械の開発は,対象とする作物が1年に1度しか収穫することができず,しかも,その時期が限られていることから,従来の勘と経験や試作と試験を繰り返す従来の開発手法では,開発期間やコストが増大する欠点がある。そこで,本研究は,最新の3D-CAD/CAEソフトを利用して高速高精度化に対応する次世代型ビートタッパをコンピュータシミュレーションによって効率的に開発することを目的とする。そこで,次年度の主な研究は,供試した3D-CAD/CAEによるビートタッパのタッピング機構の運動機構解析シミュレーション結果の妥当性の評価と新たなタッピング機構についてバーチャル的に開発することを目的としている。そのため,3D-CAD/CAEによる3次元解析等が主な作業になることから,その計算処理を円滑に行うために,高度な3Dグラフィック処理が可能なOpenGL対応のグラフィックボードを利用する。 次年度も実際の圃場でのテンサイの収穫作業を撮影および調査を行い,慣行のビートタッパの問題点等を明らかにする予定であり,その調査旅費および実験補助の謝金が必要である。また,本年度は圃場でのタッピング作業を室内実験で再現できる機械的なシミュレータを製作したが,若干の改良等が必要であり,その経費を必要とする。さらに,本研究の研究成果を学会等で発表するための経費が必要である。 次年度の研究成果をもとに,翌年度は実際にビートタッパを改良および試作し,実際の圃場でその有効性を総合的に評価する予定である。本研究の最終目標である新たなビートタッパを開発するための外注費やその製作に利用する工作機械等,および圃場借料や実験補助の謝金等を必要とする。
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