2012 Fiscal Year Research-status Report
アンモニア揮散低減と肥効促進を目的とした家畜排せつ物堆肥化時のMAP生成促進
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23580343
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
前田 武己 岩手大学, 農学部, 准教授 (40333760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立石 貴浩 岩手大学, 農学部, 准教授 (00359499)
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Keywords | 農業環境工学 / バイオマス / 廃棄物再資源化 / 環境技術 / 園芸学 |
Research Abstract |
ブロイラー排せつ物を用い,含水率55 %w.b.,MgCl2添加量を乾燥質量1 kg当たり0.2あるいは0.4 molとした堆肥化実験を行った。実験は容積4 Lの反応槽を備えた2基の装置により行い,0.2 mol区と無添加である対照区A,0.4 molと同じく対照区Bの組み合わせにより行った。堆肥化は12日間とし,昨年度と同様の測定を行った。 実験終了時である12日後の有機物分解率は0.2 mol区が37%と最も高く,同時に行った対照区Aの32%よりも高かった。一方,0.4 mol区の分解率は20%であり,同時に行った対照区Bの28%よりも低い値となった。初期pHは0.2 mol区と0.4 mol区がともに8.3であり,対照区Aは8.7,対照区Bは8.8であった。堆肥化によりpHは上昇したが,0.2 mol区と0.4 mol区とでは3日後に最高値となるそれぞれ8.9,8.7を観測した後,0.2 mol区が8.8程度,0.4 mol区が8.5程度に推移した。対照区では3日後以降は9.3~9.5の高い値を維持しており,MgCl2の添加によって材料pHが低下したとみられる。MAP-Nは添加区では対照区よりも増加したが,その増加量は少なかった。しかし,アンモニア揮散は添加区では抑制されており,0.4 mol区では対照区Bの76 %,0.2 mol区では対照区Aの80 %であった。TANは添加区が対照区よりも多く推移しており,材料のpHが対照区よりも低く推移したことが,NH4+からNH3への移行を抑制したためと考えられる。 搾乳牛排せつ物については,平成23年度に行った肥育牛排せつ物と同様に,初期含水率70%w.b.,MgCl2添加量を乾燥質量1 kg当たり0.1,0.2,0.4 molとした堆肥化実験を実施し,現在は無機成分の測定と得られた結果の解析にとりかかっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度には肥育牛排せつ物と肥育豚排せつ物とを,平成24年にはブロイラー排せつ物と搾乳牛排せつ物とをそれぞれ対象とした堆肥化実験により,これまでに,肥育牛排せつ物と肥育豚排せつ物について,MgCl2添加がMAP生成促進とアンモニア揮散とに及ぼす影響を検討してきた。当初計画では,ここまでは平成23年度,遅くも平成24年度の前半までに進める予定であった。しかしながら,東日本大震災による影響があり着手当初から遅れがあったことに加え,これまで実験試料の不具合(試料の変質,採取ロットによる性状差異)など突発的な事由の影響も加わり,現在のところ約半年程の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在,当初計画に挙げた主要家畜の排せつ物については個別の堆肥化実験をほぼ終了し,得られた結果を比較・検討しているところである。またこれまで得られた結果から,MgCl2添加がアンモニア揮散の抑制には効果的であるが,その一方でMAP生成の促進効果は予想よりも小さいことが明らかになってきた。この理由として,MgCl2の添加が材料の初期pHを低くし堆肥化の際にもその上昇を抑制してアンモニア揮散を抑制するが,このpHの低下は同時にMAP生成をも抑制している可能性がある。また対象家畜によっては排せつ物中のリン成分が少ないことや,何らかの質的な制約によりMAP生成が少なくなる可能性がある。このため,MAP生成促進とアンモニア揮散抑制とを両立させる方法の検討を進めている。研究に用いる堆肥化実験装置は新たに2基を作成し既に使用しており,従来の2基と合わせて計4基が利用可能である。既にMgCl2のみの添加については傾向を把握しており,今後は通気量制御やアルカリ源添加など,操作の組み合わせによる効果を検討する。 当初計画にあった実規模想定試験については,現在その実施・時期について検討中である。その理由は,MgCl2添加のみによるMAP生成促進効果が既往文献等を基とした予測したよりも小さく,先ずはこの改善が必要と考えられるためである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでと同様に,平成25年度分に相当する研究費については,堆肥化実験とその試料分析に用いる消耗品費ならびに試料分析員の謝金などに利用するとともに,成果発表として論文投稿・校正の費用,学会発表旅費等に充てる。また,平成24年度からの繰越分については,当初平成24年度に予定していた実規模を想定した実験装置の部品等とその実験関連費用に利用する。
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Research Products
(2 results)