2012 Fiscal Year Research-status Report
実験的肝毛頭虫症におけるクリオグロブリン血症と糸球体腎症の病態解明
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23580415
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
代田 欣二 麻布大学, 獣医学部, 教授 (70147974)
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Keywords | クリオグロブリン血症 / 肝毛頭虫 / 免疫病理学 / B-1a細胞 / 寄生虫免疫 |
Research Abstract |
肝毛頭虫(C. hepatica)感染マウスの脾臓では、IgMκ陽性細胞がIgMλ陽性細胞に比べて優位に増加しており、モノクローナルに増殖するIgMκ陽性細胞が、IgM型RFを産生することが示唆された。増殖細胞を同定するために、8週齢雌のBALB/cマウスにC. hepatica虫卵を経口接種し、接種後24日に脾臓のリンパ球についてフローサイトメトリー及び共焦点顕微鏡により解析した。その結果、リンパ濾胞周囲で増加するB細胞は、μ鎖+κ鎖+CD45R/220+CD5+の性質を持つB-1a細胞であり、このB-1a細胞の増加がクリオグロブリン(CG)血症の発症に関与していることが示唆された。また、B-1a細胞にはIL-5受容体が発現していた。昨年度の研究で、本モデルではTh2型に偏向した宿主免疫状態がIL-5の上昇を介してCG形成に促進的に働くことを見出しており、この結果から、CG血症の病態形成にはC. hepatica感染によりTh2に偏向した免疫状態がB-1a細胞に発現するIL-5受容体を介して直接的に関与していることが示唆された。 また、C. hepatica抗原とCG産生の関連性を明らかにするため、CG及び糸球体に沈着する免疫グロブリンの虫体に対する反応性を解析した。C. hepatica虫体可溶性画分を試料とし、感染マウス血清、CG可溶化物及び糸球体抽出物中のIgMを一次抗体として用いてウエスタンブロッティングを行った。また、血清及びCGの虫体への反応性を間接蛍光抗体法(IIF)により検出した。接種後30日の全ての個体のCG及び糸球体抽出物は、55kDaの虫体抗原に特異的に反応した。また、IIFでCGは、虫体の体壁細胞に特異的に結合した。以上の結果から、虫体の特異抗原に対するモノクローナルなIgMの産生がCG血症の発症に重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究から、24年度の推進方策として計画していた、1)糸球体に沈着したCGあるいは血清中のCGがある特定の分子量の虫体抗原と特異的に反応する抗体に由来するものであること、2)それらの抗体が、虫体内の体壁構造に特異的に結合する事が明らかになった。また、3)これらの抗体はB-1細胞という特殊なB細胞由来であり、その増殖にIL-5が関与している事も明らかになった。 これらの事から平成25年度の研究の方向付けが明確になり、当初の研究計画にほぼ近い形で実験が進められると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年の結果を受け、最終年度にあたる25年度では、特定の虫体抗原に反応するB-1a細胞のみがモノクローナルに増殖するメカニズムの解明を進めていく予定である。 また、IL-5過剰発現マウスを用い、IL-5の反応性が必須であるかを解析する。具体的には、脾臓よりB-1aを単離して、in vitroにおいてIL-5や虫体抗原への反応性およびその特異性を検討する。また、肝臓に病変が惹起される事と腎臓病変の関連は認めらないと思われ、虫体抗原の免疫によってCG症や腎病変が再現されるかどうかも検討したい。 当初計画していた糸球体病変の修飾に関する実験については、上記の実験に時間がかかるため、終了年度内に解決が出来ないかも知れない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の支出については、上記の実験を遂行するため、主に分子生物、細胞生物学的実験に使用する試薬、実験消耗品の購入に充てる計画である。
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Research Products
(2 results)