2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23580424
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加藤 大智 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (00346579)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ベクター / 唾液 / サシチョウバエ / リーシュマニア |
Research Abstract |
吸血性の病原体媒介節足動物(ベクター)が吸血時に注入する唾液には、宿主の生体反応や生体防御機構を制御する作用があることや、媒介する病原体の感染を増強する作用があることが報告されている。本研究では、リーシュマニア原虫を媒介するサシチョウバエの唾液成分が、宿主の生理機能や免疫応答にどのような影響を及ぼすのか、また、それがリーシュマニア原虫の感染にどのように影響するのかについて解析を行い、ベクター媒介性感染症におけるベクター由来成分の役割について解明する。1) サシチョウバエ唾液成分のプロファイル解析南米アンデス地域でリーシュマニア原虫を媒介するサシチョウバエLutzomyia (Lu.) ayacuchensisの唾液腺からmRNAを抽出し、cDNA libraryの作製に成功した。そこから無作為に約1,000クローンの塩基配列を決定し、バイオインフォマティックス解析を行い、唾液腺転写産物のプロファイルを明らかにすることができた。2) サシチョウバエ唾液成分の生理活性の解析Lu. ayacuchensisの唾液に最も多く含まれるC末端にRGD配列を持つペプチド(RGD peptide)の組換えタンパクを作製し、その生理活性を検討した。その結果、このタンパクが、濃度依存的にコラーゲンおよびアデノシン二リン酸(ADP)誘発性の血小板凝集を阻害することを明らかにし、その阻害活性に必須な構造が存在することを明らかにした。また、これまでの研究で解析を行ってきたアフリカのサシチョウバエPhlebotomus (P.) dubpscqiの唾液中のnucleotidaseであるapyraseやadenosine deaminaseの組換えタンパクを作製することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サシチョウバエの唾液成分は、そのユニークな生理活性に加え、リーシュマニア原虫の感染増強作用があることやリーシュマニア原虫に対する感染防御ワクチンになる可能性が報告され、近年注目を浴びている。サシチョウバエは800種以上存在するが、コロニー飼育が難しいことや微小なサシチョウバエの唾液の採材や解析が非常に困難なことなどから、これまで旧大陸で5種、新大陸では1種のみ解析が行われている。本研究では、南米アンデスのリーシュマニア症流行地域でサシチョウバエLu. ayacuchensisを採取し、現地で解剖して唾液腺を採材し、cDNAライブラリーの作製に成功した。本研究は新大陸サシチョウバエ種で2番目の唾液腺の網羅的解析の報告で、今回のようにコロニー飼育下ではない自然分布しているサシチョウバエからの唾液腺cDNAライブラリーの作製は、初めての成功例である。Lu. ayacuchensis唾液成分のプロファイルは予想以上にこれまで報告されているサシチョウバエと異なるユニークな成分から構成されていることが分かり、今後の機能解析が期待される。この研究は本年度の計画の柱であり、順調に達成することができたと言える。また、本年度はLu. ayacuchensis唾液RGD peptideの血小板凝集阻害活性とその活性に必須な構造について明らかにすることができた。このタンパクは、Lu. ayacuchensis唾液中の最大の構成成分であることから、吸血の際に大きな役割を果たしていると考えられる。今後はこのタンパクの機能をさらに詳細に解析していく予定であるが、主要タンパクの機能を明らかにすることができたことは、大きな前進であると考えている。今後はさらに、唾液タンパクが宿主免疫やリーシュマニア感染に及ぼす影響などについても解析していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の研究計画では、主にサシチョウバエ唾液のnuclease活性に着目し、サシチョウバエ唾液タンパクが宿主免疫とリーシュマニア感染に及ぼす影響にのみ焦点を当てていた。しかしながら、H23年度で機能解析を行ったLu. ayacuchensis RGD peptideは、予想以上にユニークな機能を持っていることが明らかになりつつあり、この機能やメカニズムについても詳細な解析を行っていきたいと考えている。また、サシチョウバエ唾液成分が宿主免疫やリーシュマニア感染に及ぼす影響については、当初の計画通り、唾液タンパクが原虫感染に及ぼす影響をin vitro, in vivoの実験系により進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度の繰越金134,473円とH24年度の経費1,400,000円、合計1,534,473円のうち、消耗品費については、分子生物学実験関連試薬(834,473円)、ガラス・プラスチック器具類(200,000円)、実験用動物および飼料(100,000円)、細胞培養関連試薬(100,000円)を使用する計画である。旅費については、3回(各1-2泊)程度、国内の学術集会に参加し成果発表や情報収集を行う予定で、200,000円を計上した。また、論文投稿に関する費用(英文校正、論文掲載料など)は100,000円を計上した。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Genotyping of sand fly species in Peruvian Andes where leishmaniasis is endemic.2012
Author(s)
Fujita M, Kato H*, Cáceres AG, Gomez EA, Velez L, Mimori T, Zhang F, Iwata H, Korenaga M, Sakurai T, Katakura K, Hashiguchi Y.
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Journal Title
Acta Tropica
Volume: 121
Pages: 93-98
DOI
Peer Reviewed
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