2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23580424
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加藤 大智 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (00346579)
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Keywords | ベクター / 唾液 / サシチョウバエ / リーシュマニア |
Research Abstract |
吸血性の病原体媒介節足動物(ベクター)が吸血時に注入する唾液には、宿主の生体反応や生体防御機構を制御する作用があることや、媒介する病原体の感染を増強する作用があることが報告されている。本研究では、リーシュマニア原虫を媒介するサシチョウバエの唾液成分が、宿主の生理機能や免疫応答にどのような影響を及ぼすのか、また、それがリーシュマニア原虫の感染にどのように影響するのかについて解析を行い、ベクター媒介性感染症におけるベクター由来成分の役割について解明する。 これまでの研究でサシチョウバエLutzomyia (Lu.) ayacuchensisの唾液遺伝子転写産物を解析し、最も多く含まれる分子として、2つのシステインに挟まれたインテグリン結合RGD(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸)配列(CRGDC)をC末端に持つペプチドを同定した。本年度の研究では、大腸菌発現系を用いてLu. ayacuchensis唾液RGDペプチドの組換えタンパクを作製し、機能解析を行った。血小板凝集に及ぼす影響を検討したところ、このRGDペプチドはADPやコラーゲン誘発性の血小板凝集を濃度依存的に阻害したが、C末端のRGD配列を除くことによりその活性は消失した。また、RGD配列の両側に存在するシステインをセリンに置換することでも活性は消失した。このことから、RGDペプチドの血小板凝集阻害にはC末端のRGD配列およびその両側のシステインが不可欠であることが明らかになった。またRGDペプチドは、インテグリンαIIbβ3のフィブリノーゲンへの結合をRGD配列依存的に阻害したことから、このタンパクはRGD配列を介して血小板膜上のインテグリンαIIbβ3とフィブリノーゲンの結合を妨げることにより、血小板の一次凝集を阻害すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サシチョウバエの唾液成分は、そのユニークな生理活性に加え、リーシュマニア原虫の感染増強作用があることやリーシュマニア原虫に対する感染防御ワクチンになる可能性が報告され、近年注目を浴びている。サシチョウバエは800種以上存在するが、コロニー飼育が難しいことや微小なサシチョウバエの唾液の採材や解析が非常に困難なことなどから、これまで旧大陸で5種、新大陸では1種のみ解析が行われている。これまでの研究では、南米アンデスのリーシュマニア症流行地域でサシチョウバエLu. ayacuchensisを採取し、現地で解剖して唾液腺を採材し、cDNAライブラリーの作製および遺伝子転写産物の網羅的解析に成功した。本年度はこれまで得られた成果をもとに、唾液腺物質の生理活性について詳細な機能解析を行い、そのユニークな特性を明らかにすることができた。このタンパクは他に類を見ないユニークなタンパクで、今後の検査・研究試薬、天然新薬開発への応用が期待される。今後はさらに他の唾液タンパクの生理活性を明らかにするとともに、唾液タンパクが宿主免疫やリーシュマニア感染に及ぼす影響などについても解析していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の研究計画では、主にサシチョウバエ唾液のnuclease活性に着目し、サシチョウバエ唾液タンパクが宿主免疫とリーシュマニア感染に及ぼす影響にのみ焦点を当てていた。しかしながら、23年度、24年度では当初の予想以上にユニークな生理活性物質が見つかってきていることから、唾液タンパクの生理活性についての機能解析も並行して進めていく。サシチョウバエ唾液成分が宿主免疫やリーシュマニア感染に及ぼす影響については、当初の計画通り進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度の繰越金102,119円とH25年度の経費1,200,000円、合計1,302,119円のうち、消耗品費については、分子生物学実験関連試薬(702,119円)、ガラス・プラスチック器具類(100,000円)、実験用動物および飼料(100,000円)、細胞培養関連試薬(100,000円)を使用する計画である。旅費については、3回(各1-2泊)程度、国内の学術集会に参加し成果発表や情報収集を行う予定で、200,000円を計上した。また、論文投稿に関する費用(英文校正、論文掲載料など)は100,000円を計上した。
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Research Products
(20 results)
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[Journal Article] Analysis of salivary gland transcripts of the sand fly Lutzomyia ayacuchensis, a vector of Andean-type cutaneous leishmaniasis2013
Author(s)
Kato H, Jochim RC, Gomez EA, Uezato H, Mimori T, Korenaga M, Sakurai T, Katakura K, Valenzuela JG, Hashiguchi Y.
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Journal Title
Infect Genet Evol
Volume: 13
Pages: 56-66
Peer Reviewed
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[Journal Article] Genetic diversity of the mitochondrial cytochrome b gene in Lutzomyia spp., with special reference to Lutzomyia peruensis, a main vector of Leishmania (Viannia) peruviana in the Peruvian Andes2013
Author(s)
Yamamoto K, Cáceres AG, Gomez EA, Mimori T, Iwata H, Korenaga M, Sakurai T, Katakura K, Hashiguchi Y, Kato H.
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Journal Title
Acta Trop
Volume: 126
Pages: 156-163
Peer Reviewed
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[Journal Article] Dimiconin, a novel coagulation inhibitor from the kissing bug, Triatoma dimidiata, a vector of Chagas disease2012
Author(s)
Ishimaru Y, Gomez EA, Zhang F, Martini-Robles L, Iwata H, Sakurai T, Katakura K, Hashiguchi Y, Kato H.
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Journal Title
J Exp Biol
Volume: 215
Pages: 3597-3602
Peer Reviewed
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