2011 Fiscal Year Research-status Report
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23580466
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
堀田 光生 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物生態機能研究領域, 主任研究員 (10355729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北本 宏子 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物生態機能研究領域, 主任研究員 (10370652)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | バイオエタノール / 土壌消毒 / 土壌還元 / 土壌微生物 / 有機成分 |
Research Abstract |
1.植物バイオマスからエタノール発酵により生産・回収したバイオエタノール溶液の土壌消毒試験 農耕地土壌には多種の土壌伝染性の病害虫が存在するため、これら病害虫に汚染された土壌に、植物バイオマスから得られたバイオエタノール溶液を用いて土壌消毒試験を行い、その効果を確認した。材料として、エタノール固体発酵させた飼料イネ、発酵過程で得られる排液、回収したエタノール蒸留液、および飼料作物ソルガムのエタノール発酵液を用い、それぞれ所定のエタノール濃度に希釈後、トマト萎凋病菌およびナス青枯病菌を埋設した土壌に灌水し、処理後の病原菌の生残数を測定した。その結果、いずれの材料を用いても精製エタノールと同程度以上の殺菌効果がみられた。 2.バイオエタノール溶液中に含まれる各種成分の分析と土壌消毒効果への影響調査 バイオエタノール発酵産物にはエタノール以外の様々な有機成分が含まれており、またその組成比がエタノール発酵に用いる原材料やエタノール抽出段階でそれぞれ異なってくるため、これら成分の違いが土壌消毒に及ぼす影響を調べた。イネ植物体発酵産物中には、エタノールの他、有機酸として酢酸、乳酸が、糖類としてグルコースが主に含まれていた。そこで、これら酢酸、乳酸、グルコース水溶液をそれぞれ別個に調製し、エタノールと同様に添加して土壌消毒試験を行った結果、いずれも精製エタノール添加区と同様にトマト萎凋病菌に対する殺菌効果が認められた。また、これら処理区では土壌中の酸化還元電位が急速に低下し、土壌が好気的状態から嫌気的状態に変化した。以上の結果から、バイオエタノールを用いた土壌消毒では、発酵産物に含まれるエタノール以外の成分もエタノールと同様に作用して殺菌効果を促進していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初に予定していた、(1)各種バイオエタノール発酵産物の土壌消毒効果、および(2)バイオエタノール発酵産物に含まれる成分の土壌消毒への影響についての試験を進め、想定していた以上の研究成果が得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
バイオエタノールを用いた土壌消毒では、土壌中の特定の微生物群が活性化し、添加されたエタノールや有機酸の代謝、土壌環境の還元化、および病害虫の死滅に関与していると考えられ、バイオエタノール添加後の土壌中で起きている状況を経時的に追跡することで、病害虫に対する作用機作を明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
バイオエタノール添加後の土壌中の各種病害虫の死滅に要する時間、土壌微生物相の変化(微生物の種類やそれらの菌数の変化)、土壌特性の変動(酸化還元電位、pH、エタノール・有機酸濃度)などの調査に必要な物品(消耗品)、試薬を購入し、使用する。
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