2012 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症発症脆弱性因子dysbindin-1による細胞機能制御
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23590124
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Research Institution | Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center |
Principal Investigator |
伊東 秀記 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 神経制御学部, 主任研究員 (40311443)
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Keywords | 統合失調症 / 脳神経疾患 / 細胞周期 |
Research Abstract |
1)サイクリンD1とdysbindin-1の結合の細胞生物学的解析 昨年度までに、dysbindin-1は細胞周期調節に関わることがよく知られているサイクリンD1と結合すること、およびdysbindin-1のC末端領域とサイクリンD1のC末端領域が結合することなどを明らかにした。今年度はサイクリンD1とdysbindin-1の細胞内局在を細胞生物学的手法により検討した。増殖期にある哺乳動物培養細胞に、外来性に発現させたサイクリンD1は、多くの細胞で核に局在した。一方、dysbindin-1は多くの細胞で細胞質での局在が見られた。サイクリンD1とdysbindin-1を共発現させると、サイクリンD1が核に局在する細胞の割合が著しく低下し、細胞質での局在を示す細胞の割合が増加した。この結果から、哺乳動物細胞において、dysbindin-1はサイクリンD1の局在を制御している可能性があると考えられた。 2)マウス個体を用いた神経前駆細胞の増殖、移動、分化におけるdysbindin-1の機能解析 dysbindin-1はサイクリンD1と結合することから、神経前駆細胞の増殖、移動、分化において何らかの役割を果たしている可能性が高い。マウス個体を用いた解析を行うため、新生仔マウスを用いたin vivoエレクトロポレーション法の修得を試みた。新生仔マウスの脳室内にGFP遺伝子を注入し、電気パルスを与えた後に飼育を継続し、脳組織切片を作製した。遺伝子の注入量、注入部位、電気パルスの条件、脳組織切片を作製する時期などを検討し、側脳室周囲部 (subventricular zone, SVZ)、rostral migratory stream (RMS)および嗅球の神経(前駆)細胞をGFP標識することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究期間で、統合失調症発症脆弱性因子の一つであるdysbindin-1と細胞周期調節因子サイクリンD1が哺乳動物細胞内で複合体を形成すること、両分子の結合領域、dysbindin-1によるサイクリンD1の細胞内局在制御などを明らかにできた。今後、dysbindin-1がサイクリンD1と結合することにより、細胞周期進行を制御していることが明らかにできれば、残りの研究期間内で研究成果を取りまとめて公表できる段階にあると考えている。 統合失調症発症の分子機構の解明には、細胞生物学的解析だけではなく、モデル動物を用いた個体レベルでの解析が必要であると考えられる。今年度は、新生仔マウスを用いて、in vivoエレクトロポレーション法により、生後の神経新生を解析する実験系を確立することができた。 以上のようなことから、全体としては本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)細胞周期調節におけるdysbindin-1の機能解析 哺乳動物細胞を用いて、dysbindin-1を外来性に発現させた場合、あるいはRNAi法により発現抑制した場合に、内在性のサイクリンD1の局在に影響が見られるか、主に細胞生物学的手法により解析する。また、dysbindin-1の過剰発現あるいは発現抑制が細胞周期進行に影響を及ぼすか、FACSによる細胞周期解析、BrdU取り込みによるS期細胞の検出などの手法により検討する。 2)新生仔マウスの神経新生におけるdysbindin-1の機能解析 新生仔マウス脳室内にGFP発現ベクターおよびdysbindin-1ノックダウンベクターを注入し、エレクトロポレーションを行う。1週間飼育を継続後、脳組織切片を作製し、SVZ-RMS-嗅球における新生神経細胞の移動、増殖、分化に影響が見られるか、主に形態学的手法により解析する。予備的な実験ではあるが、ある条件下でin vivoエレクトロポレーション法により海馬歯状回新生神経細胞を標識できることを私共は見いだしている。そこで、dysbindin-1が、動物個体内での海馬神経細胞の移動や樹状突起スパイン形成を制御しているのか、形態学的手法により解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度までと同様に、塩類などの一般試薬、市販抗体、チューブや培養用シャーレなどのプラスチック器具類、ビーカーやフラスコなどのガラス器具類、マウスやラットなどの実験動物を購入するため、物品費として使用する。国内外で開催される学会での成果発表のための旅費を使用する。英文論文の校正にかかる謝金、研究試料の運搬にかかる輸送費などとしても使用する予定である。
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Research Products
(11 results)