2012 Fiscal Year Research-status Report
アルコールの脂質代謝産物が各種細胞の情報伝達系に及ぼす効果の機能形態学的な検証
Project/Area Number |
23590241
|
Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 洋一 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40118253)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋野 朝幸 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (40305991)
東尾 浩典 岩手医科大学, 公私立大学の部局等, 講師 (50342837)
|
Keywords | 脂肪酸エチルエステル / 細胞内カルシウム濃度 / 膵腺房細胞 / 血球 / 高速共焦点レーザー顕微鏡 |
Research Abstract |
アルコール飲酒に伴い、各種の脂肪酸エチルエステル(FAEEs)が体内で生成され、膵腺房細胞や血球細胞では、FAEEsによって細胞内情報伝達系の乱れが引き起こされると報告されてきたことから、各種FAEEsに対する反応を、血管系(脳組織や通常の結合組織から分離した細動脈、細静脈と毛細血管で、血管内皮、平滑筋、周皮細胞の反応を解析)、神経系(上頸神経節、脊髄後根神経節、PC12)、血球系(腹腔由来のマスト細胞と単核細胞、末梢血白血球)、外分泌系(膵臓外分泌部)で検討した。実験には高速共焦点レーザー顕微鏡を用い、蛍光色素としてIndo-1を負荷した。前年度では、膵腺房細胞で細胞死に至る組織・細胞が観察されたにもかかわらず、[Ca2+]i変動が観察されにくかった。これは粗製FAEEsが灌流液中のBSAと結合したためかもしれない、ということで、本年度は純化したBSAを使用して実験をおこなった。それにもかかわらず、本年度も同様に[Ca2+ ]i では変化が少なく、先行研究で記載されているほど、[Ca2+]i上昇による細胞障害は重要でないように思われた。先行研究では完全単離腺細胞を使用していたが、我々は羨望構造を維持したままの生組織標本を用いていることから、細胞に対するダメージが軽減されたせいかもしれない。また、平成24年度に用いた高速レーザー顕微鏡は光ダメージがおきにくく、生理的な反応を人工産物無しに観察することに適したものであるのに対し、先行研究で用いられた顕微鏡ではゆっくりした走査による光ダメージが生じていた可能性もある。なお、前年同様に、ラット腹腔から得られた血球系の細胞では、Palmitoleic Acid Ethyl Esterで一部の単核細胞で急激な[Ca2+]i変動を引き起こしたが、その細胞種を同定するには至らなかった。 至らなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に得られていた実権結果の再現性が乏しく、実験系の再立ち上げを余儀無くされた。繰り返し実験をおこなっても先行研究の結果をトレースすることができないことから、本年度は、ひとつひとつの事項で起きうる人工産物の可能性を排除していく地道な作業に終始した。 なお、派生実験としておこなっていた血管系標本を用いたカルシウムイメージングの実験では、静脈系と動脈系の血管平滑筋の差異が明らかになったことから、FAEEの実験にに割く時間が少なくなったことも遠因となってた。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度であることから、これまで反応が観察された血管系標本と血球系標本を用いた実験に集中する。具体的には、1) [Ca2+]i変動が如何なる機転によるものか(InfluxかMobilizationか、あるいは除去系の破綻か)を判定する。2) [Ca2+]i 変動が見られた細胞の種類を同定する。【腹腔単核球や末梢血白血球】グリッドで位置決めがなされやすいカバーグラス上に細胞を播種し、[Ca2+]i変動観察後に、CD4, CD8, CD14等の細胞膜表面マーカーによる免疫組織化学的な同定やギムザ染色を施す。3) [Ca2+]i 変動を、超高速イメージングが可能なYokokawa CSU-Xで観察する。4) 細胞内情報伝達系の乱れを生化学的に検証する(例:各種リン酸化特異的抗体を用いたWestern blot, Caspaseの逸脱など)
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品:蛍光試薬、ラット、培養試薬と器具、画像情報保存メディア(シリコンディスク) 旅費:国内学会(バイオイメージング学会(東京)、解剖学会地方会(札幌))で成果発表 その他:英文校閲料、論文掲載料
|