2011 Fiscal Year Research-status Report
トロポニンCのカルシウム親和性が不整脈の頻拍周期の決定に果たす役割の解明
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23590253
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三浦 昌人 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30302110)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
トロポニンCのカルシウム親和性と頻拍周期の関係を明らかにするために、トロポニンCからの解離カルシウム量の変化が、頻拍周期にどのような影響を与えるかをラットの多細胞心室筋を用いて観察した。ラット右心室より多細胞心室筋であるトラベクラを摘出した。張力は力トランスデューサーで、サルコメア長はレーザー回折法で、膜電位は微小電極法で、細胞内カルシウムは蛍光色素であるフラ2を用いて記録した。不整脈を誘発するために0.3秒間隔の電気刺激を30秒間行った。細胞外液の電解質と温度の変化、β受容体刺激薬や伸展によるトロポニンCカルシウム親和性の変化が、不整脈の頻拍周期に与える影響を記録した。細胞外カルシウム濃度の増加によって、頻拍周期は増加した。ただし、細胞外カルシウム濃度8mmol/L以上の増加は頻拍の持続そのものを抑制した。24度Cから36度Cへの温度の増加によって頻拍周期は増加した。β受容体刺激薬の投与によって頻拍周期は増加した。伸展によるトロポニンCカルシウム親和性の増加によって頻拍周期は増加した。伸展による頻拍周期の増加は、伸展活性化チャネルの阻害作用が知られているストレプトマイシンによって抑制されなかった。これらの結果よりトロポニンCカルシウム親和性の増加は、撃発性不整脈の頻拍周期を増加させ、致死的不整脈に繋がりうることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、心筋局所トロポニンCにおけるカルシウム親和性と撃発性不整脈における頻拍周期との関係の解明を目指したが、ラット正常心筋の右室より摘出した心室筋の局所心筋特性を可逆的に変化させ、さまざまな条件下で張力・サルコメア長・細胞内カルシウム画像・膜電位を記録する事により、正常心筋における解離カルシウム量と撃発性不整脈の頻拍周期の関係を既に明らかにしたため。
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Strategy for Future Research Activity |
心筋虚血直後より心筋細胞外にはカリウムが蓄積(>20mM)し、これが虚血時の不整脈の発生に関与することが知られている。この状態を再現するために、30mM高カリウム液で心筋局所を潅流する。この高カリウム局所潅流によってカルシウム波が誘発されることを、我々は既に観察している。(1)高カリウム局所潅流心筋における解離カルシウム量の測定一過性伸展で解離するカルシウム量を高カリウムの局所潅流域で測定する。細胞外液の電解質変化、温度変化、トロポニンIのリン酸化の有無などによるトロポニンCのカルシウム親和性変化が、解離カルシウム量に与える影響を解明する。(2)解離カルシウム量と頻拍周期の関係高カリウム液の局所潅流心筋において、細胞外液の電解質変化、温度変化、トロポニンIのリン酸化の有無などによるトロポニンCのカルシウム親和性変化が、頻拍周期に与える影響を測定する。これにより、高カリウム局所潅流心筋(虚血心筋)においては、どのような条件で頻拍周期が最も増加し、致死的不整脈に繋がりうるかを決定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の遂行に必要な設備・備品は全て現有しており、研究経費の大半は以下のような消耗品費に充てる。カルシウム蛍光色素としてはフラ-2を使用し、150,000円/年の経費を予定する。実験に適したトラベクラは平均して3-4匹のラットで1個しか見つからないため、多くのラットを必要とする。そのため、ラット代として300,000円/年の経費を予定する。試薬費200,000円の中には、潅流液や細胞内液を作るための精製液や試薬などの費用、ラットの麻酔時に必要なネンブタール、ヘパリン等の費用を含んでいる。また、不均一収縮モデルの作製に使用するBDM、カフェイン、ブレビスタチンや心不全モデルの作製に必要なモノクロタリンなども含んでいる。プラスチック器具費50,000円には、ビーカーやメスシリンダー等の器具の他にHEPESバッファー液を潅流するビニールチューブやシリコンチューブの費用を含んでいる。光学機器用消耗品200,000円の中には、キセノンランプの光源、顕微鏡やトラベクラ摘出時のランプの光源を含み、局所潅流や膜電位記録に使用する微小電極の費用も含んでいる。研究成果の発表は、主にアメリカ心臓学会と日本循環器学会で毎年行う予定であるが、そのために海外旅費を150,000円、国内旅費を50,000円予定する。研究成果投稿料として50,000円、印刷費として50,000円を予定する。
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