2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590271
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
村上 政隆 生理学研究所, 細胞器官研究系, 准教授 (10104275)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 上皮機能 / 傍細胞輸送 / タイト結合 / 血管灌流唾液腺 / 水輸送 / 細胞内信号 / 蛍光物質分泌 / 駆動力 |
Research Abstract |
タイト結合開放は刺激開始に同期せず30秒遅れる。摘出ラット顎下腺を動脈より定流灌流し、1)高速共焦点顕微鏡にて1秒毎の3D画像を撮像し、蛍光色素Sulfo-rhodamin Bが管腔に出現する時間経過、種々の自律神経受容体を個別に刺激した場合の管腔への色素出現と細胞容積の時間変化を計測した(東京歯科大学 橋本・渋川氏、日本大学成田氏、福島氏と連携)。一方、灌流液から唾液へシフトする蛍光色素量から傍細胞輸送を評価する高時間分解の測定法を開発した。2) 灌流速度を変え組織圧を変えた時の微少分泌速度変化を測定し傍細胞水輸送を検討した結果、傍細胞輸送成分には圧依存性成分と圧非依存性成分が存在し、前者は傍細胞水輸送のうち約30%、後者は約70%と測定された。圧依存水分泌の水透過性はムスカリン受容体刺激で増加した。また、圧非依存成分もムスカリン受容体刺激で増加した。3)動静脈静水圧差から組織圧の変化を推定した。ムスカリン受容体刺激により毛細血管床拡大が起こり、同一個体では、ムスカリン受容体刺激に用いたカルバコール用量に依存して血管抵抗が減少した。しかし個体差が大きく、実験群間に統計的優位差なかった。4) ムスカリン受容体刺激により細胞内Ca濃度が上昇した場合、高浸透圧により細胞容積が収縮した場合の血管灌流ラット顎下腺を切り出し、液体ヘリウムで急速凍結固定を行い、凍結割断レプリカを作成した。このレプリカを透過型電子顕微鏡で観察した(橋本氏と連携)。その結果、ムスカリン受容体刺激ではタイト結合直下の細胞内骨格の格子間隔が減少していた。5)ムスカリン受容体刺激では、顎下腺の酸素消費は増加する。この酸素消費はNa/K ATPase阻害剤ウアバインにより抑制され、同時に唾液分泌も抑制された。またNa/K/2Cl共輸送を阻害するブメタナイドにより、酸素消費および唾液分泌は抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
タイト結合開放は刺激開始に同期せず30秒遅れる。この30秒間に起こる現象について, 1)共焦点顕微鏡での1秒毎の3D画像を撮像し、分泌刺激による細胞容積の時間変化を計測した。今後実験回数を確保せねばならない。また、細胞間隙から管腔への蛍光色素の流入を観測し、タイト結合が開くことを確認した。2)高感度の電子天秤による微少分泌速度の測定を実施したが、頻発する地震の影響で正確な測定が困難となった。高性能徐震台を導入し克服する。3)灌流腺動静脈の静水圧測定系により、タイト結合の開放と血管系の関係を測定し検討した。これは日本生理学会、台北IUPS, マンチェスター国際シンポジウム、日本唾液腺学会、日本生理学会で発表した。4)タイト結合直下細胞内骨格の変化。βアドレナリン受容体刺激により細胞内cAMP濃度が上昇した場合、ムスカリン受容体刺激により細胞内Ca濃度が上昇した場合、高浸透圧により細胞容積が収縮した場合の細胞内骨格の変化について急速凍結割断法(橋本氏と連携)を観察した。しかし、共焦点レーザー顕微鏡法による細胞内骨格f-アクチンの形態変化の観察は時間が限られたため延期した。微少分泌速度測定以外の他の実験項目は順調に実施できた。高性能徐震台導入により地震の影響を克服できれば平成23年度に立ち後れた実験の補完を行うことができる。また共焦点レーザー顕微鏡法による細胞内骨格f-アクチンの観察は装置の予約状況に依存しており、期間内の研究目的の達成は可能と予測している。
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Strategy for Future Research Activity |
分泌初期30秒以内に起こるイベントを人工的に与えて傍輸送開始の有無をマーカの測定、圧依存成分の測定により明らかにする。1)分泌初期のNa/K ATPase活性化のタイミングと傍細胞輸送の活性化の時間経過が近いため、阻害剤ouabainを投与しておいてムスカリン受容体を刺激し、傍細胞輸送マーカの動態を測定する。これにより傍細胞輸送開始機序に近接できると予想している。2)刺激初期一過性に起こる管腔へのCl分泌及び基底側(血管側)へのK放出の直後に傍輸送が開始する。これらのイオン流の直接の関与の有無を検討する。3)開口分泌に伴うATP放出の傍細胞輸送開始への関与を検討する。4)組織カリクレインなどキニン系の物質の傍細胞輸送開始への関与を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本実験では、チオペントタール麻酔下に雄性ラットより顎下腺を摘出、唾液排出導管、動脈、静脈に挿管し、酸素ガスにて飽和した人工灌流液を拍動ポンプで動脈より定流灌流する。臓器は恒温チャンバーに設置し、37℃を中心とした温度制御の下実験する。導管カニューレには規格化したフッ素樹脂製の細管を用いる。傍細胞輸送は灌流液から唾液へシフトする蛍光色素量から評価する。サンプル希釈プロセスを工夫し、高時間分解の測定法を開発する。本研究では蛍光色素にはLucifer YellowあるいはSulfo-rhodamin Bを用い、現有マイクロプレートリーダにて定量する。 研究費のうち物品費として、1)実験動物、2)灌流実験用薬品、蛍光色素、3)急速凍結切片作成用液体ヘリウム、液体窒素、4)共焦点レーザー顕微鏡による連携実験のための旅費(岡崎/東京歯科大)3日4回。5)学会発表のための国内旅費、外国旅費、6)その他として学会登録料 を使用する計画である。なお高性能徐震台は研究所内現有のものを使用するため費用負担はない。
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