2011 Fiscal Year Research-status Report
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23590339
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
嶋 雄一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80425420)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ライディッヒ細胞 / トランスクリプトーム / ステロイドホルモン |
Research Abstract |
平成23年度は、胎仔型ライディッヒ細胞特異的にジフテリア毒素受容体を発現するトランスジェニックマウスを作出した。複数のトランスジェニック系統を作出し、in-situ hybridizationによって発現を確認し、胎仔型ライディッヒ細胞特異的に、かつ強い発現を示す系統を得ることができた。作出したマウスにジフテリア毒素を投与し、投与量・投与回数を検討したところ、50 μg/kgの毒素を1回投与することで十分に細胞を破壊できることを確認した。 胎仔型ライディッヒ細胞における時期特異的な遺伝子発現プロファイルを明らかにするために、各発生段階の胎仔型ライディッヒ細胞をセルソーティングによって回収し、total RNAを調製した。この過程で、出生後のサンプルを調製する際に精細胞の混入が問題となることが明らかとなったため、現在、より少数の純粋な細胞を用いてトランスクリプトーム解析を行うために、予備実験を進めている。 胎仔期精巣におけるステロイドホルモン合成経路を明らかにするために、胎仔型ライディッヒ細胞、胎仔セルトリ細胞、成獣型ライディッヒ細胞をそれぞれ分取し、トリチウムラベルしたステロイドホルモン前駆体(プレグネノロン、アンドロステンジオン)を添加して酵素活性を測定した。この結果、胎仔型ライディッヒ細胞はプレグネノロンからアンドロステンジオンを合成すること、胎仔セルトリ細胞はアンドロステンジオンをテストステロンに変換すること、成獣型ライディッヒ細胞はプレグネノロンからテストステロンを合成することを確認した。この結果から、胎仔期のテストステロン合成にはライディッヒ細胞とセルトリ細胞の両方が必要であることが証明された(論文投稿準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジフテリア毒素を用いた細胞破壊実験は、胎仔型ライディッヒ細胞特異的に毒素受容体を発現するマウスを作出し、解析の準備を整えることができた。また、毒素の投与量・投与回数に関しても予備実験を行い、至適な条件を決定済みである。 遺伝子発現プロファイルに関してはサンプルを調製中である。特に出生後のサンプルを調製する過程で少数の精細胞(成熟した精子)が少数ながら混入するため、胎仔期のサンプルとの比較において精細胞由来のRNAの混入が解析の障害となることが判明した。そのため、より少数の細胞(100~1000個程度)の細胞を目視化に集め、微量RNAを用いたRNA-sequence用のキットを用いて解析を行うことにし、現在予備実験を進めている。 ステロイドホルモンの合成経路に関しては、胎仔型ライディッヒ細胞、胎仔セルトリ細胞、成獣型ライディッヒ細胞をそれぞれ分取し、トリチウムラベルしたステロイドホルモン前駆体を添加することで、胎仔期および成獣期の精巣におけるテストステロン合成経路を明らかにすることに成功した。この成果は間もなく論文として投稿する予定である。 このように、研究計画全体としては、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおり、今後の計画を推進していく。 細胞破壊実験に関しては、既に作出したトランスジェニックマウスに対して、胎齢18.5日、生後10日、21日、56日の各時点で毒素を投与し、その影響を検討する。精巣の組織学的解析、組織中・血中テストステロン値の測定を予定している。 total RNAの調製を進め、トランスクリプトーム解析(次世代シークエンサーを用いたRNA-sequence解析)を行う。解析の結果得られた遺伝子発現プロファイルから、胎仔型ライディッヒ細胞の各発生段階における機能の変化を明らかにする。また特にステロイドホルモン合成酵素と分泌性因子に着目し、胎仔型ライディッヒ細胞の新たな機能を解明する。 ステロイドホルモン合成経路に関しては、過去の報告でライディッヒ細胞によるテストステロン合成をcAMPやhCGが活性化するという報告が多数あるが、胎仔期のテストステロン合成に対する影響は不明である。そこで、申請者自身の研究成果を基盤とし、セルトリ細胞とライディッヒ細胞の相互作用がテストステロン合成に及ぼす影響を、2種類の細胞の共培養系を用いて検討し、さらにその分子メカニズムの解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ジフテリア毒素による細胞破壊実験のためにマウスの繁殖が必要であり、マウスの購入代金が必要である。また、トランスクリプトーム解析のために、各種試薬、キット類、プラスチック器具の購入が必要である。ステロイド合成経路の解明のために、酵素活性測定実験は早稲田大学総合生命科学研究院の筒井和義教授との共同研究を行っており、共同実験や打ち合わせののための出張費が必要となる。またマウス血中や細胞培養液中のテストステロン測定は市販のキットを購入して用いる予定である。この他、国内外の学会での成果発表のための旅費、委託研究(電子顕微鏡による精巣の組織構造の解析)の経費、論文投稿のための英文校閲料、投稿料等を予定している。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Cbx2, a polycomb group gene, is required for Sry gene expression in mice.2012
Author(s)
Katoh-Fukui Y, Miyabayashi K, Komatsu T, Owaki A, Baba T, Shima Y, Kidokoro T, Kanai Y, Schedl A, Wilhelm D, Koopman P, Okuno Y, Morohashi K
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Journal Title
Endocrinology
Volume: 153
Pages: 913-24
DOI
Peer Reviewed
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