2011 Fiscal Year Research-status Report
複製フォークの進行、停止回復におけるBRCA1/HERC2の役割
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23590348
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
呉 文文 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (10434408)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | BRCA1 / 細胞周期 / 複製フォーク / HERC2 / claspin |
Research Abstract |
本年度では、BRCA1/HERC2がDNA複製関連蛋白質との相互作用及び細胞周期進行に与える影響を検討した。BRCA1/HERC2が複製フォークの進行への影響も検討した。BRCA1のE3活性が複製フォーク進行への影響を解析するため、変異体の作成に取り組んだ。 本年度の研究結果については、免疫沈降技術にて、クロマチン分画に対して、BRCA1/HERC2または他のメディエーター(TopBP1、53BP1、MDC1、Claspinなど)の免疫沈降複合体解析を行った。HERC2はClaspinと複合体を形成し、BRCA1はHERC2/Claspin複合体の形成には必須であることを示した。siRNAを用いた解析で、HERC2/Claspin複合体はS期の進行に対する影響を検討した。HERC2はS期進行を抑止するのに対して、ClaspinはS期進行を促進する結果が得られた。HERC2/Claspin複合体はS期進行制御に機能していることを明らかにした。BrdU標識、免疫蛍光染色解析を行った。HERC2は複数の複製因子共局在し、S期では複製フォーク複合体に局在する。HERC2/Claspin複合体の細胞周期制御は複製フォーク進行制御であることが分かった。BRCA1/HERC2複合体は複製フォーク複合体ダイナミクスに関与するが、HERC2の蛋白分解活性は複製フォーク複合体ダイナミクスに必要がないことを明らかにした。BRCA1のE3活性が複製フォークの進行への影響を解析するため、BRCA1のE3活性を持たない変異体を作成し、今後の解析ツールにする。 HERC2は多数の複製因子と複合体を形成し、その中にも、Claspinとの結合はBRCA1の発現に依存して、複製フォーク複合体ダイナミクスに関与し、複製進行や複製開始点の発火に機能する。BRCA1が細胞周期制御のメカニズムに新しい知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間内に明らかにしようとする点からみると、本年度の研究はおおむね順調に進展していると評価した。 その理由については、その1、『正常時、BRCA1/HERC2は進行している複製フォークとの相関性、その局在並び機能を明らかにする』について、HERC2は細胞周期S期に複製フォークに局在して、claspinと複合体を形成していることや、HERC2/claspin複合体の形成はBRCA1に依存していることなどの点を明らかにしており、研究目標はほぼ達成した。 その2、『DNA損傷修復時、BRCA1/HERC2は停止した複製フォークとの相関性、複製フォークの安定化及び複製回復の分子機構を明らかにする』については、HERC2/claspin複合体は複製フォーク進行制御で細胞周期をコントロールし、DNA傷害時、HERC2/claspin複合体がMCM2リン酸化経路に働くなど、その分子機構の解明も進んでおり、この点についても目標がほぼ達成できたと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策について、現在、研究が比較的に順調に進んでいるため、予定している計画で進めたいと思う。来年度の研究計画には大きな変更点はないが、今年度、研究試薬や、資材の物価変動により生じた約5千円程度の研究経費を残額として来年度の研究経費に計上したいと考えている。 具体的には、明らかにしようとする点は以下の二つに絞る。 その1、BRCA1/HERC2の複製フォークにおける分子機能がチェックポイント誘導に関わる役割を明らかにする。その2、複製フォークの進行、停止および回復時、BRCA1のユビキチンリガーゼ活性の役割を明らかにする。 研究実行に関しては、継続的に『BRCA1のE3活性が複製フォークの進行への影響を解析する。BRCA1/HERC2が複製フォーク複合体の安定性における役割を検討する。BRCA1/HERC2がPathwayにおける位置付けを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度において、実験対象となる細胞株の培養用試薬やディッシュ類、また、サンプリングにあたって、チューブ、チップ、ピッペトなどの消耗品には約65万円を配分する。 免疫沈降やウェスタンブロット法、または多重蛍光染色に必要な抗体を購入するのに、48.5万円に試算した。 RNA干渉法に使用するsiRNAや導入用試薬には、40万円を予定する。 遺伝子の構築などに必要な試薬(PCRキット、DNA polymerase、LB培地など)、オリゴの合成および制限酵素などには10.5万円の費用が必要と考える。 細胞周期の確認のために行うフローサイトメトリー(FACS)、またはマーカー確認のための抗体(抗histon H3など)購入には16万円で試算する。
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