2012 Fiscal Year Research-status Report
高転移性ルイス肺癌細胞株が類洞様腫瘍血管を誘導する分子基盤の解明
Project/Area Number |
23590349
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
米倉 秀人 金沢医科大学, 医学部, 教授 (80240373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 崇之 金沢医科大学, 医学部, 助教 (00374942)
吉冨 泰央 金沢医科大学, 医学部, 助教 (80399039)
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Keywords | 腫瘍血管新生 / 癌転移 / 血管内皮細胞 / 血管微細構造 / ルイス肺癌細胞 / DNAミクロアレイ |
Research Abstract |
血管形成・新生は組織の発生や維持に必須なだけでなく、癌増殖・転移など多くの疾患に深く関わっている。血管内皮増殖因子(VEGF)の発見以来、血管研究の進展は目覚ましいが、未解明の部分がまだ多く存在する。たとえば、組織ごとに血管の微細構造が異なる分子基盤や癌転移と血管微細構造の関連などはほとんど明らかにされていない。本研究では、血管微細構造の決定機構を明らかにするため、構造の異なる腫瘍血管を誘導する転移性の異なる癌細胞株が分泌する血管形成関連因子群を包括的に明らかするとともに、それら因子群に応答して異なった微細構造を形成するために働く血管内皮細胞側の遺伝子群を明らかにする。24年度は以下の成果が得られた。 1. 高転移性と低転移性癌細胞株で発現に差のある血管形成関連因子(群)の解明 (1) 高転移性ルイス肺癌細胞株(H11)と低転移性細胞株(P29)からそれぞれRNAを分離し、DNAミクロアレイ法を用いて、両者で発現に差のある血管形成関連因子を解析した。その結果、高転移性癌細胞株で発現が上昇している遺伝子が約15種、発現が低下している遺伝子が約10種同定され、定量PCRでそれらの発現を確認した。(2) コラーゲンゲル中でのin vitro血管新生への高転移性細胞と低転移性細胞のconditioned mediumの影響を解析したところ、高転移性細胞のconditioned mediumがより促進的な傾向を示した。 2. 高転移性と低転移性腫瘍の血管内皮細胞の解明 (1) 高転移性癌細胞株(H11)と低転移性細胞株(P29)の一次腫瘍中の血管細胞を免疫組織学的手法等で解析したところ、低転移性細胞は宿主自身からの血管誘導能(血管を引き込む活性)が低いのに対し、高転移性細胞は血管誘導能が高く、また誘導された血管はリンパ管様・sinusoid様の性質を示すことが新たに示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度に高転移性ルイス肺癌細胞株(H11)と低転移性細胞株(P29)を、改めてマウスに移植・転移腫瘍形成を行って高転移性細胞の再度のセレクションを行ったため、その分の遅れが出ている。また、ミクロアレイ解析により多数の遺伝子が同定されたため、機能解析用の過剰発現用レンチウイルスベクターおよび遺伝子ノックダウン用shRNA発現レンチウイルスベクターの作製に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 高転移性と低転移性癌細胞株で発現に差のある血管形成関連因子(群)の解明 DNAミクロアレイ解析により同定した因子(群)が類洞様血管を誘導するかを確認する。具体的には、(1) 同定されたすべての遺伝子の発現レンチウイルスベクターをミックスして低転移性細胞に導入してマウスに移植し、高転移性細胞と同様の構造を持った血管を誘導するかを検証する。(2) レンチウイルスミックスから順次遺伝子を除いて同様の解析を行い、類洞様血管構造を誘導するのに必須な遺伝子を同定する。(3) 必要であれば、遺伝子ノックダウン様レンチウイルスベクターを用いて同様の解析を行う。(4) 類洞様血管構造を誘導するのに必須な遺伝子に対するsiRNAや抗体を高転移性細胞を移植したマウスに投与し、腫瘍内に誘導される血管の微細構造を解析するとともに、癌転移が抑制されるかを調べ、新たな癌転移抑制のための標的遺伝子を明らかにする。 2. 高転移性と低転移性腫瘍の血管内皮細胞の解明 (1) 高転移性と低転移性腫瘍組織中の血管細胞の詳細な性質と由来を明らかにする。具体的には、両者から分離した血管内皮細胞からRNAを抽出してDNAミクロアレイ解析を行って両者間で発現に差のある遺伝子(群)を同定する。また、免疫組織学的手法等を用いて各腫瘍内の血管細胞が移植宿主由来なのか移植した癌細胞由来なのかを明らかにする。 (2) それぞれの腫瘍内の血管内皮細胞で活性化されている遺伝子の発現を、網膜(連続内皮型)、肝臓(類洞様)、腎臓(有窓型)で解析するとともに、それぞれの組織の血管形成時における発現変化を明らかにする。(3) 重要性が示された遺伝子の過剰発現用およびノックダウン用レンチウイルスをマウス胎児や新生児の各組織に導入し、各組織の血管形成における上記遺伝子(群)の役割を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(8 results)