2013 Fiscal Year Research-status Report
低分子量G蛋白質Rhoシグナルが関わる疾患の分子基盤の解明
Project/Area Number |
23590357
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
天野 睦紀 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90304170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
貝淵 弘三 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00169377)
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Keywords | キナーゼ / プロテオミクス / Rho / シグナル伝達 / リン酸化 / 細胞骨格 |
Research Abstract |
本研究では疾患の発症や進行におけるRhoファミリーシグナル伝達系の下流のリン酸化シグナルネットワークに注目して、Rho-kinase, PKN, MRCK, aPKC, PAK等のキナーゼについて申請者が開発したインタラクトームを基盤とした網羅的基質同定(KISS法)を行い、疾患発症・進行との関わりを明らかにすることを目指している。 平成25年度には心臓を対象としたRho-kinaseおよびPKNの基質のスクリーニングを行い、多数の基質候補蛋白質を得た。基質候補蛋白質の中には特発性心筋症との関連が示唆されている蛋白質が複数含まれており、このうちMYL2、CSRP3、ANKRD1、BAG3などの蛋白質についてはin vitroにおけるリン酸化を確認した。特に心保護効果を持つ転写補助因子とされるANKRD1については、相互作用分子との結合がリン酸化によって調節されることを示唆する結果を得た。Rho/Rho-kinaseシグナルが圧負荷やアンジオテンシン依存的な心肥大に関わることは既に報告されているが、その下流の分子基盤については殆ど明らかではなかった。本研究で得られた基質蛋白質のリン酸化の生理機能やダイナミクスを解析することで、心肥大におけるRho/Rho-kinaseシグナルの役割が明らかになるものと期待される。 またRho-kinaseやPKN以外にも、AMPKやAkt、GSK3betaなど、疾患に関わりの深いキナーゼの基質のスクリーニングを行い、多数の基質候補蛋白質を得ており、今後、生理機能についての解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Rho/Rho-kinaseは、平滑筋や非筋細胞においてはミオシン軽鎖のリン酸化を介して細胞の収縮性を調節することがよく知られているが、心筋細胞においてどのような作用機序で機能しているかは殆ど明らかではなかった。今年度はRho-kinaseとPKNの心臓における基質のスクリーニングを行い、多数の基質候補蛋白質を得た。基質候補蛋白質の中には特発性心筋症との関連が示唆されているサルコメア構成蛋白質が複数含まれており、アンジオテンシン等によってRhoが活性化されると、下流のRho-kinaseやPKNが活性化されてこれらの蛋白質をリン酸化することで、サルコメアの収縮性や遺伝子発現に影響を及ぼすことが心肥大の一因となることが予想された。 また、スクリーニング条件を検討することで、AMPKやAkt、GSK3betaなど、疾患に関わりの深いキナーゼの基質候補蛋白質を得ることが出来た。 以上のことより、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
疾患に関連するキナーゼの基質スクリーニングを行ってきたが、予想以上に多数の基質候補蛋白質が得られた。重要と思われる候補も多数含まれていたため、データ解析・ターゲットの絞り込みに時間がかかった。一部の蛋白質については機能解析を行い、疾患においてそのキナーゼがどのような役割を果たすか、その分子基盤の理解を進めることが出来た。一方で、依然多数の基質候補蛋白質が残されており、今後引き続きこれらの機能解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度に疾患関連キナーゼ基質のスクリーニング、25年度にその機能解析を行う予定であったが、スクリーニングの結果予想以上に多数の基質候補分子が得られた。重要と思われる分子も多数含まれていたためデータ解析に予想以上に時間を要し、機能解析の着手までに時間が掛かったため、未使用額が生じた。 25年度に引き続き、スクリーニングの結果得られた基質候補分子について、細胞モデルや疾患動物モデルにおける機能解析やリン酸化状態のモニタリングを行い、疾患の分子基盤となるシグナル伝達経路についての解析を行う。そのための細胞培養試薬、遺伝子導入試薬、抗体等消耗品の購入に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)