2012 Fiscal Year Research-status Report
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23590410
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
藤盛 孝博 獨協医科大学, 医学部, 教授 (30095385)
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Keywords | 潰瘍性大腸炎関連腫瘍 / 前癌状態 / 癌化高危険群 / REG Iα / DNMT1/3b / IL-22 / STAT3 |
Research Abstract |
当該年度に実施した研究の成果発表については研究発表欄に記した。その具体的な内容としては、平成23年度は大腸炎発癌モデルとヒト潰瘍性大腸炎組織を用いて前癌状態(癌化高危険群の予測)、前癌病変(dysplasia)の診断と非浸潤癌から浸潤癌への各段階において関与している遺伝子などを解析することであった。当該年度の研究を進めるにあたり、腫瘍発生の高リスク群の抽出、さらにはUC発症や関連腫瘍の発生の機序の解明がまず始めるべき課題であると考えられた。そこで本年度は、研究期間内の目標のうちで上記事項に重点をおいた研究を進めた。 結論として、1)UC関連腫瘍の発育に関与が示唆されるREG Iαの免疫組織学的な発現形式は病変の質によって異なっており、UC関連腫瘍の診断に有用な補助マーカーであることを示すことができた、2)UC関連腫瘍における非腫瘍性直腸粘膜の免疫組織学的なDNMT1およびDNMT-3bの発現は腫瘍非合併症例の正常直腸粘膜における発現と比較し明らかに亢進していた。つまり、簡便な直腸生検によるこれらの免疫組織学的診断がUC関連腫瘍を合併する可能性のある高リスク患者を拾い上げる上で有用であることを示すことができた,3)大腸癌細胞においてIL-22はチロシンリン酸化STAT3及びNF-KBの活性化を介してDMBT1の発現を増強した。IL-22刺激によるDMBT1遺伝子のプロモーター活性化の責任領域は-187~-179に存在した。UC粘膜においてDMBT1及びIL-22 mRNAの発現は増強しており、両者は正の相関を示し、炎症を伴う上皮ではIL22陽性のリンパ球が増加し、IL-22R1及びDMBT1蛋白の発現が増強していた。つまり、IL22から誘導されるDMBT1は、UCの大腸粘膜の初期免疫において重要な役割を担っていることが示唆される、以上のことが当該年度の主たる結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本検討結果は、今後のUC関連腫瘍に関わる病理診断及び臨床での取り扱いをより確かなものとするものであり、さらにUC関連腫瘍における分子生物学的機序の解明の一助となるものと考えられた。実際のところ、難治性炎症性疾患に区分されている潰瘍性大腸炎の患者数は昨今増加傾向にある。特に長期罹患及び広範囲罹患したUC患者に発生するUC関連腫瘍は生命を脅かす合併症であり、その増加が危惧されている。臨床病理学的な非腫瘍/腫瘍診断精度の向上、サーペイランスの観点から腫瘍発生の高リスク群の抽出、さらにはUC発症や関連腫瘍発生の機序の解明などが可能になると考えられた。しかし、50数例の潰瘍性大腸炎関連腫瘍合併例の臨床病理学的検討は多大な労力と時間が必要である。1症例200~300ブロックの連続的段階切片で形態診断から免疫染色を行い、しかもマッピングをルーチン化している。そのような理由から動物実験のモデルによる検討が準備も含めて進んでいないのが現状である。実務上、膨大な労力と時間は必要であるが、上記形態診断の確立が最も重要であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
50数例の潰瘍性大腸炎関連腫瘍合併例を集積した。集積した症例は全て200~300ブロックに段階切片で全割して切り出した上で種々の検討を行っている。現状ではHE染色での異型度診断とマッピング、同じ切片でのP53免疫染色さらには前述のDNMT1やDNMT3b、REG Iα、β-catenin、DMBT1の免疫染色を行い、分布を検討した。その成果を英論文とした。研究計画の動物実験モデルを用いた研究に進めないのが現状である。今後は、当初の研究実施計画に準拠した研究を進めたいと考えているが、研究材料の増加からは、次年度も臨床病理学的解析をさらに充実したものにすることを主眼に研究を行うことになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
幹細胞の特徴は多分化能を有することで、正常もしくは炎症や癌組織に誘導された血液幹細胞がその組織中で上皮や血管、間質細胞に分化を遂げている可能性がある。潰瘍性大腸炎の癌化症例において異形成(dysplasia)は多様な形態をとる。その中でもpancellular dysplasiaではdystrophic goblet's cellsやneuroendocrine cellsへ高頻度に分化を示すことが現状まででわかっている。これらのことを証明するために、各種細胞分化マーカー(上皮:サイトケラチン、MUC;内分泌細胞:クロモグラニン、血管およびリンパ管:CD34、D2-40、筋細胞:α-SMA;幹細胞候補:CD133、Lar5など)の二重染色を行い、これらの分化様式の関連を明らかにするための研究を推進する為に次年度の研究費を使用したいと考えている。
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Research Products
(18 results)