2012 Fiscal Year Research-status Report
チクングニヤ熱媒介蚊対策に資する殺虫剤抵抗性分子機構の研究
Project/Area Number |
23590501
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
葛西 真治 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 主任研究官 (80332360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨田 隆史 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 室長 (20180169)
駒形 修 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 研究員 (20435712)
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Keywords | チクングニア熱 / デング熱 / ネッタイシマカ / シトクロムP450 / CYP9M6 / CYP6BB2 |
Research Abstract |
シンガポール産ネッタイシマカ成虫は、室内淘汰の結果ピレスロイド剤であるペルメトリンに1600倍を超える抵抗性を発達させている。昨年度までの研究により、この抵抗性には殺虫剤の作用点であるナトリウムチャネルの変異による低感受性とともに、シトクロムP450による解毒活性増大が主要な機構として働いていることを明らかにした。また、マイクロアレイ解析の結果、7種のP450アイソフォーム遺伝子が抵抗性系統で過剰発現していることを明らかにしている。 24年度は23年度に候補遺伝子として選抜された7種P450遺伝子についてリアルタイム定量PCR法によりその発現量を検証した。いずれの遺伝子も成虫雄、雌ともに抵抗性系統で過剰発現が認められ、マイクロアレイ解析の結果が裏付けられたが、中でもCYP9M6は雌で23倍、雄で33倍と最も大きな比(抵抗性系統/感受性系統)が認められた。また、CYP6BB2は雌で5.8倍、雄で3.5倍であったものの、相対的な発現量が多く、抵抗性への関与が示唆された。したがって、これら2つのP450の抵抗性への関与をさらに検証することとした。 CYP9M6とCYP6BB2をバキュロウィルスを介してSf9細胞で発現させ、得られたミクロゾームタンパクを用いてペルメトリンの代謝試験を行った。その結果、両タンパクともにペルメトリンを4'HO-ペルメトリンへ解毒する活性を有していることが明らかになった。 以上のことから、シンガポール産のネッタイシマカのピレスロイド抵抗性には少なくともCYP9M6とCYP6BB2という2つのP450が関与していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
24年度は当初の計画通りマイクロアレイ解析の結果スクリーニングされた7種P450遺伝子の発現量を検証することができた。さらに、可溶タンパクに比べて異種細胞発現が容易ではないP450をバキュロウイルスを介して培養細胞中で発現することに成功した上、発現させたタンパクを用いて実際にペルメトリンの代謝試験を行い、これらのP450が実際に殺虫剤を解毒する能力を有していることを直接的に証明することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度までの私たちの研究結果に加え、これまでに世界で報告されたデータから、ネッタイシマカでは少なくともCYP9M6、CYP6BB2、CYP9J24、CYP9J26、CYP9J28、CYP9J32という6種のP450がピレスロイド剤の解毒能力を有していることが明らかになっている。25年度はチクングニア熱の主要媒介蚊であるヒトスジシマカからこれらの遺伝子に同祖先的な遺伝子をクローニングし、将来的に我が国にチクングニア熱が侵入した場合に備えて抵抗性の分子診断法確立の基礎となるデータを集積する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に遺伝子クローニングのための消耗品費に当てられる予定である。もし有力遺伝子がスクリーニングできたならば、これをバキュロウイルスを介して培養細胞中で発現させる事となるため、発現解析に費やされる予定である。
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Research Products
(2 results)