2011 Fiscal Year Research-status Report
C型インフルエンザウイルスの増殖を制御するNS1蛋白の機能ドメインの解明
Project/Area Number |
23590536
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
本郷 誠治 山形大学, 医学部, 教授 (90229245)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下平 義隆 山形大学, 医学部, 助教 (30445746)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | C型インフルエンザ / ウイルス / NS1 / スプライシング / 病原性 |
Research Abstract |
これまでに我々は、C型インフルエンザウイルスのmRNAのsplicingが亢進している現象が、C型のNS1がsplicingを促進するためであることを明らかにした。そこで我々は、C型のNS1はsplicing促進能により、ウイルス増殖を調節しているという作業仮説を提唱した。本研究の第一の目的は、この作業仮説を検証することである。第二の目的はsplicingを促進する機序を解明することである。平成23年度は 第二の目的を解明するために、その前提条件であるNS1がsplicingの行われる核内に局在するための核移行シグナルの同定の解析を行い、以下の成績を得た。246個のアミノ酸からなる NS1蛋白のN末端に FLAG tagをもつFLAG-NS1 1-246を一過性発現ベクターpME18Sにsubcloningし、それをCOS-1細胞にtransfectionして、発現したNS1の局在を抗FLAG抗体を一次抗体に用いた蛍光抗体法で解析した。さらに FLAG-NS1 1-246のC末端側から種々の欠失変異を導入し、発現した各NS1変異体の局在を蛍光抗体法で解析した。 FLAG-NS1 1-246は発現の初期には核に局在するが後期には大部分が細胞質に一様に分布するようになる。C末端側の46アミノ酸を欠失させると後期には細胞質に局在するが、一様でなく凝集塊のように分布した。したがってこの変異領域に細胞質での分布に関与する配列が存在すると示唆された。C末端側の92アミノ酸を欠失させると後期でも核と細胞質に局在するようになったので、この変異領域に核から細胞質に移行するための配列が存在すると示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、当初の研究実施計画では平成24年度に行う予定だった splicingが行われる核内に局在するための核移行シグナルの同定の解析を、FLAGをN末端にもつNS1に種々の欠失変異を導入し、COS-1細胞に発現させた各NS1変異体の局在を抗FLAG抗体を一次抗体に用いた蛍光抗体法で行った。細胞内の局在に関与する配列を含む領域の候補が見つかったが、その領域をさらに狭めて移行シグナルを同定する実験が必要である。また平成23年度に予定していたC型インフルエンザウイルスNS1蛋白のsplicing促進活性を担う領域を決定し、その領域がウイルスの増殖と病原性に必要であるか否かを明らかにするという研究課題は手つかずであり、平成24年度、25年度に行う必要があり、達成がやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度:1.細胞内の局在に関与するシグナルの同定:平成23年度の候補領域に更に細かな欠失変異を導入し、移行シグナルを同定する。2.NS1と相互作用するsplicingに関係する宿主因子の同定:GSTとWT-NS1との融合蛋白を大腸菌で発現させ、glutathione agarose beadsに吸着させaffinity chromatographyで精製したのち、HeLa細胞の核抽出液とインキュベーションし、pull down法でNS1と結合する宿主蛋白を同定する。平成25年度:1.NS1のRNA結合能の検出: NS1にC型ウイルスのM遺伝子pre-mRNAに直接結合する活性があるかをgel shift assayで解析する。2. RNAと結合するドメインの同定:GSTとWT-NS1の融合蛋白に欠失変異を導入した場合にRNA結合活性が失われれば、欠失した領域にRNAと結合するドメインが存在すると推測される。3.以上のスプライシングに関する機能ドメインの情報が集積したのち、その変異体を用いて、当初23年度の計画であったスプライシングを促進する領域を決定し、さらにウイルス増殖に及ぼす影響をreverse geneticsで明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の途上で作製した欠失変異体を組み込んだベクターおよびそれを導入した大腸菌を保存する冷凍庫のスペースが足りなくなるという状況が発生した。それを解決するために平成23年度の次年度への繰越金と平成24年度の研究費で冷凍庫を購入する計画である。冷凍庫が設置されることになれば、今後の研究が支障なく遂行されると思われる。
|
Research Products
(9 results)