2012 Fiscal Year Research-status Report
C型インフルエンザウイルスの増殖を制御するNS1蛋白の機能ドメインの解明
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23590536
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
本郷 誠治 山形大学, 医学部, 教授 (90229245)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下平 義隆 山形大学, 医学部, 助教 (30445746)
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Keywords | influenza C virus / NS1 / splicing |
Research Abstract |
splicingを促進する機序を解明することを目標に、NS1がsplicingの行われる核内に局在するための核移行シグナルの同定を以下の方法で試みた。246個のアミノ酸からなる野生型のNS1蛋白のN末端に FLAG tagをもつFLAG-NS1 1-246およびFLAG-NS1 1-246のC末端側から種々の欠失変異を導入したものをCOS-1細胞に発現させ、その局在を抗FLAG抗体を一次抗体に用いた蛍光抗体法で解析した。平成23年度は、以下の成績を得た。FLAG-NS1 1-246は発現の初期には核に局在するが後期には大部分が細胞質に一様に分布するようになるが、C末端側の46アミノ酸を欠失させると後期には細胞質に一様でなく凝集塊のように分布した。従ってこの欠失領域に一様に細胞質に分布するための配列が存在すると示唆された。発現後期にFLAG-NS1 1-154は細胞質に局在したが、FLAG-NS1 1-108は核と細胞質に局在したので、NS1の109から154番目の領域に核から細胞質に移行するための配列が存在すると示唆された。 平成24年度は、以上の成績から示唆されたNS1の細胞内局在に関与する領域を同定することを目的に、NS1のC末端側から詳細な欠失変異を導入し、同様の方法で解析した。FLAG-NS1 1-246のC末端側から4残基欠失しても発現後期に野生型と同様に細胞質に一様に分布するが、さらに3残基欠失すると細胞質に顆粒状に分布するようになった。以上からNS1の240-242番目の配列が発現後期に細胞質に一様に分布することを決定することが明らかになった。さらにその領域の欠失で、Western blotでNS1蛋白の発現量が減少した。それが蛋白の不安定化によるのか否かをパルスチェイス実験で解析し、240-242番目の配列がNS1蛋白の安定化にも関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今後の推進方策として平成24年度に計画した、細胞内の局在に関与するシグナルを同定するために、平成23年度の候補領域に更に細かい欠失変異を導入して、細胞内の局在を担うアミノ酸配列を同定する解析をほぼ計画どおり順調に行うことができた。得られた結果から、240-242番目の配列が細胞質に一様に分布できることを決定する配列であることを明らかにした。さらに同配列がNS1蛋白の安定化にも関与することを明らかにした。しかし、splicingを促進する作用を発揮するために、splicingの行われる核内にNS1が局在するための核移行シグナルの同定には至っていない。また、NS1と相互作用するsplicingに関係する宿主因子の同定という研究課題の成績が得られておらず、達成はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. NS1がsplicingの行われる核内に局在するための核移行シグナルの同定:核移行シグナルの候補がNS1のN末端側に2か所あるため、同領域を含むGFP融合蛋白を発現させ、蛍光顕微鏡で核に局在することを確認する。その後、核移行シグナルの候補部位に変異を導入することにより核への移行が障害されることで、核移行シグナルを同定する。 2. NS1が直接splicingに影響を与えるならばNS1がRNA結合能をもつ可能性があるので、以下の計画でRNA結合能を証明し、それを担う領域を同定する。(1)NS1のRNA結合能の検出:NS1にC型ウイルスのM遺伝子pre-mRNAに直接結合する活性があるかをgel shift assayで解析する。(2)RNAと結合する領域の同定:GSTとWT-NS1の融合蛋白に欠失変異を導入した場合にRNA結合活性が失われれば、欠失した領域にRNAと結合するドメインが存在すると推測される。 3. 上記で作製したNS1欠失変異体を持つrecombinant virusをreverse geneticsで作製し、その感染細胞におけるM遺伝子mRNAのスプライシング効率を定量し、スプライシングを促進する領域を決定する。さらにスプライシングを促進する領域に変異のあるウイルスの増殖能を解析し、NS1のスプライシング促進能がウイルス増殖に影響を及ぼすかを明らかにする。 4. NS1と相互作用するsplicingに関係する宿主因子の同定:GSTとWT-NS1との融合蛋白を大腸菌で発現させ、glutathione agaroseビーズに吸着させて精製後、HeLa細胞の核抽出液とインキュベーションし、pull down法でNS1と結合する宿主蛋白を精製して、液体クロマトグラフ質量分析計により同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に超低温槽を購入して保存には問題がなくなったので、次年度は試薬等の消耗品費と研究成果発表のための旅費の使用が計画される。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Intrinsic temperature sensitivity of influenza C virus hemagglutinin-esterase-fusion protein.2012
Author(s)
Takashita E, Muraki Y, Sugawara K, Asao H, Nishimura H, Suzuki K, Tsuji T, Hongo S, Ohara Y, Kawaoka Y, Ozawa M, Matsuzaki Y
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Journal Title
J. Virol.
Volume: 86
Pages: 13108-13111
DOI
Peer Reviewed
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