2011 Fiscal Year Research-status Report
HTLV-1の発がん性を規定するPDZドメイン蛋白シグナル制御のメカニズム
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23590537
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
樋口 雅也 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (50334678)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | HTLV-1 / PDZ / シグナル伝達 / 成人T細胞白血病 |
Research Abstract |
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病の原因ウイルスである。HTLV-1がコードするトランスフォーミング蛋白Tax1はPDZドメイン結合配列(PBM)を持ち、種々のPDZドメイン蛋白と結合しその機能を阻害する。本研究ではこのTax1の機能が細胞がん化に関わるのか、そのメカニズムを明らかにすることを目的とする。Tax1はPDZドメイン蛋白Dlg1、Scribbleと結合しその機能を阻害するが、それらをノックダウンしてもTax1 PBM欠失変異体のトランスフォーミング活性はレスキューされない。つまりDlg1、Scribble以外のPDZドメイン蛋白がTax1の真の標的になっている可能性が考えられた。我々はTax1に結合するPDZ蛋白を網羅的に探索した結果、新たなTax1の標的としてMAGI-1を同定した。HTLV-1感染T細胞株ではMAGI-1の発現が低下しており、さらに低分子領域にMAGI-1の分解産物とみられるバンドが認められた。さらにTax1でIL-2非依存性へとトランスフォームしたマウスT細胞株CTLL-2においても、MAGI-1の顕著な発現低下と低分子量のバンドが認められた。またTax1の発現によりMAGI-1は可溶性画分から不溶性画分へと移行した。これらのことから、Tax1はMAGI-1とPBMを介して結合することによりその局在を変え、分解を促進していることが示唆された。次にCTLL-2細胞でMAGI-1をノックダウンし、Tax1およびTax1 PBM変異体のトランスフォーミング活性を検討したところ、トランスフォーミング活性の上昇および回復は認められなかった。従ってMAGI-1はTax1の標的分子のひとつであるが、Dlg1やScribbleと同様に単独の不活化ではTax1のトランスフォーミング活性に影響を与えないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度はTax1の真の標的となるPDZ蛋白の同定を目標とし、候補蛋白のひとつとしてMAGI-1の解析を行った。しかしながら、Tax1の真の標的となるPDZ蛋白の同定はできなかった。またTax1によるPDZ蛋白の不活化が細胞内のどのようなシグナル伝達経路に影響を与えるのか、その解析を試みたが、現在のところ実験系を構築する段階にとどまっており、有用なデータは得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はTax1の真の標的となるPDZ蛋白の同定を第一の目的としているが、複数のPDZ蛋白が同時に不活化されることがTax1のトランスフォーミング活性に必須である可能性がある。したがって、これまでのような個々のPDZ蛋白の単独のノックダウンではなく、複数の蛋白のノックダウンを同時に行うことにより、標的PDZ蛋白の同定を行う。また我々が新規に同定したTax1結合PDZ蛋白MPP7については、すでにノックアウトマウス作製に成功しており、引き続き表現型の解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は主に抗体、試薬などの消耗品、学会へ出席するための旅費、マウスの飼育費等に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)