2012 Fiscal Year Research-status Report
HTLV-1の発がん性を規定するPDZドメイン蛋白シグナル制御のメカニズム
Project/Area Number |
23590537
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
樋口 雅也 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (50334678)
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Keywords | HTLV-1 / PDZドメイン / 白血病 / ROS |
Research Abstract |
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病の原因ウイルスである。HTLV-1がコードするトランスフォーミング蛋白Tax1はPDZドメイン結合配列(PBM)を持ち、種々のPDZドメイン蛋白と結合しその機能を阻害する。本研究ではTax1によるPDZ蛋白の制御と細胞がん化について、そのメカニズムを明らかにすることを目的とする。Tax1はDlg1、ScribといったPDZドメイン蛋白と結合するが、我々はTax1結合蛋白として新たにMAGI-1を同定した。MAGI-1の発現はHTLV-1感染細胞やTax1でIL-2非依存性へとトランスフォームしたCTLL-2細胞で顕著に低下していることから、MAGI-1はT細胞のがん化を抑制している分子である可能性が示唆された。Tax1は細胞内の活性酸素種(ROS)を上昇させることが知られているが、PBMを欠失したTax1ではこのROSの産生が見られなかった。このことは、Tax1によるROSの産生にはPDZドメイン蛋白の不活化が関与していることを示唆する。面白いことにMAGI-1をノックダウンするとROSの上昇が観察された。このことからTax1によるMAGI-1の不活化がROSの上昇を招き、細胞のがん化に寄与していると考えられた。 また我々は新規に同定したTax1結合PDZ蛋白Mpp7のノックアウトマウスを作製した。Mpp7ノックアウトマウスは外見上正常であり組織学的にも全く異常が見られなかった。血球系細胞に関してFACS解析を行ったが、分化、細胞数とも正常であった。ConAによる肝炎を誘導したところ、ノックアウトマウスは野生型マウスに比べ、肝炎の重症度が高い傾向が見られた。したがってMpp7はT細胞依存性の免疫反応の制御に関わっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に続き今年度はTax1の真の標的となるPDZドメイン蛋白の同定を目指した。我々が新たに同定したMAGI-1はTax1によるROSの産生に関与していることを示唆するデータが得られ、MAGI-1が真の標的蛋白である可能性は高い。しかしながらMAGI-1のノックダウン実験等、それを裏付ける実験を行うことができていない。またMAGI-1がどのようなメカニズムでROSの産生を制御しているのかに関しては、MAGI-1の結合蛋白の同定を含めまだ未解決である。 またTax1のin vivo白血病発症モデルに関しては、いまだアッセイ系の確立ができていない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はTax1の真の標的となるPDZドメイン蛋白の同定を第一の目的としている。MAGI-1のノックダウン実験を行うことで、MAGI-1がその蛋白なのか確認する。また複数のPDZドメイン蛋白が不活化されることが細胞のトランスフォーメーションに必須である可能性もあるので、Dlg1、Scribのノックダウンも同時に行う。 Tax1のin vivo白血病発症モデルの確立に関しては、さしあたりヒトではなくマウスの造血幹細胞にTax1を導入し、それをガンマ線照射したマウスに正常の骨髄細胞と混合して移植するという実験を行い、このシステムで白血病を発症させられるか確認する。 Mpp7ノックアウトマウスの解析については、ConA肝炎の増悪がどのようにして起こっているのか、細胞レベルでの解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は主に抗体、試薬などの消耗品、学会へ出席するための旅費、マウスの飼育費等に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)