2011 Fiscal Year Research-status Report
新規ナノキャリアを用いた次世代インフルエンザユニバーサルワクチンの開発
Project/Area Number |
23590550
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
松井 政則 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (50199741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川野 雅章 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (30447528)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ワクチン / SV40ウイルス様粒子 / ナノキャリア / 細胞傷害性T細胞 / HLA-A2 / インフルエンザウイルス |
Research Abstract |
当該(平成23)年度では、まず、ワクチンのナノキャリアとして実験に使用する組換えSV40ウイルス様粒子(SV40-VLP)を作製した。すなわち、ウイルス内部抗原M1タンパク質由来で、すべてのインフルエンザウイルスの亜型、株において共通に存在するHLA-A2拘束性CTLエピトープである M1 58-66を、SV40ウイルス様粒子(SV40-VLP)の表面に導入した(SV40-VLP-M1-58-66)。そして、SV40-VLP-M1-58-66によって M1 58-66エピトープが細胞内に導入され、その細胞がCTLによって認識されることを、in vitroの実験系で明らかにした。さらに、作製したSV40-VLP-M1-58-66を、腹腔投与、静脈投与、経鼻投与、筋肉投与、皮下投与など、さまざまな投与ルートで HLA-A2トランスジェニックマウスに投与して免疫した。それらのマウスから脾臓リンパ球を調整し、抗原特異的に誘導されるIFN-gamma陽性及びCD8陽性CTL数をフローサイトメトリーで測定した。さらに、マウスに誘導されたCTLのkilling活性を、in vivo CTL assayと51Cr release assayで測定した。その結果、すべて強い陽性を示し、アジュバントを加えなくてもSV40-VLP-M1-58-66単独で、効率よくマウスにインフルエンザウイルス特異的CTLを誘導できることが証明された。この結果は、本研究遂行の骨格となる重要な結果である。また、SV40-VLPが、有効なインフルエンザワクチンの新規ナノキャリアとなりうる可能性を示唆したのでたいへん意義があると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成23年度において、実験に使用するCTLエピトープを導入したSV40-VLPを作製し、それを使ってin vitroの実験を行う事であった。インフルエンザウイルスの亜型、株に共通に存在するウイルス内部抗原M1タンパク質由来のHLA-A2拘束性CTLエピトープは、特に問題なくSV40-VLPの表面に導入できた。その際、表面のHIループに導入したものとDEループに導入したもの2種類を作製したが、CTL誘導効率に大差はなかった。予想以上にスムーズに実験が進んだため、平成24年度から行う予定であった、HLA-A2トランスジェニックマウスを使ったin vivo実験も行った。アジュバントを加えなくても、SV40-VLPキャリアだけで効率よくマウスにインフルエンザ特異的CTLを誘導することができ、好結果を得た。さらに、本研究に関して、国内特許出願を行った。以上のように、今のところ、当初の計画以上に進展しており、現在までの達成度は高い自己評価となった
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Strategy for Future Research Activity |
HLA-A2トランスジェニックマウスを使って、ウイルスチャレンジ実験を含めたin vivo実験を詳細に進める。具体的には、SV40-VLPでマウスを免疫し、in vivoにおけるインフルエンザウイルス特異的CTLの誘導効果をさらに詳しく検討する。今のところ、1種類のCTLエピトープだけを使って実験を行っているが、SV40-VLPが他のエピトープでも効率よくCTLを誘導できることを明らかにする。また、HLA-A24トランスジェニックマウスを所有しているので、HLA-A24拘束性CTL誘導も検討する。多くの日本人はHLA-A2と共にHLA-A24を持っているため、これらの結果は日本人のためのワクチン開発に有意義なデータとなると考えられる。また、SV40-VLPで免疫したマウスに、さまざまな亜型のインフルエンザウイルスをマウスに感染させて、肺におけるウイルス量や体重変化、生存率を測定し、ウイルスに対してユニバーサルな防御効果があるかどうかを検討する。さらに、SV40-VLPは、がんワクチンのキャリアにも使えると考えられるので、インフルエンザウイルスタンパク質を発現する腫瘍細胞でもチャレンジし、誘導されたCTLが腫瘍細胞を排除するかどうかも検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では、当該年度に複数のエピトープを導入したSV40-VLPを作製して実験に使用する予定であったが、実際は1種類(M1 58-66)のエピトープで実験を先に進めたため、次年度使用の研究費が生じた。前述のとおり、平成24年度は複数のエピトープを導入したSV40-VLPを作製して実験を行うが、当該の次年度使用研究費はこの実験経費に使われる。 大がかりにin vivo実験を行うため、多数のHLA-A2トランスジェニックマウス、HLA-A24トランスジェニックマウスを繁殖・維持する費用が必要である。また、次年度においてもSV40-VLPを大量に調整する必要があるため、遺伝子工学用試薬(各種制限酵素、ポリメラーゼ、primer)とProtein Separose、および昆虫細胞へのtransfectionの試薬の購入に研究費を使用する。さらに、さまざまなアッセイでCTL誘導を解析したり、インフルエンザウイルス量を定量したりするために、大量の細胞培養を行う必要があり、細胞培養関連試薬・器具を購入する費用が必要である。また、細胞内サイトカインの測定のためにラベル抗体や、51Cr、テトラマー等の購入費用が必要である。さらに、国内学会に参加するため、国内旅費費用に研究費を使用する。
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Research Products
(5 results)