2012 Fiscal Year Research-status Report
新規ナノキャリアを用いた次世代インフルエンザユニバーサルワクチンの開発
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23590550
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
松井 政則 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (50199741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川野 雅章 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (30447528)
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Keywords | ワクチン / ウイルス様粒子 / SV40 / ナノキャリア / 細胞傷害性T細胞 / HLA class I / インフルエンザウイルス |
Research Abstract |
昨年度(平成23年度)は、まず、ワクチンのナノキャリアとして実験に使用する組換えSV40ウイルス様粒子(SV40-VLP)を作製した。具体的には、すべてのインフルエンザウイルスの亜型や株に、共通に存在するウイルス内部抗原M1タンパク質由来のHLA-A2拘束性CTLエピトープである M1 58-66を、SV40-VLPの表面上のHIループまたは、DEループに導入した(SV40-VLP-M1-58-66)。それを、HLA-A2トランスジェニックマウスに投与し、アジュバントを加えなくてもSV40-VLP-M1-58-66単独で、効率よくマウスにインフルエンザウイルス特異的CTLを誘導できることを、さまざまな検出系で証明した。当該年度(平成24年度)では、昨年度の研究結果を基にして、SV40-VLP-M1-58-66で、HLA-A2トランスジェニックマウスを免疫し、インフルエンザウイルス特異的CTLを誘導させた後、インフルエンザウイルスを感染させて、肺におけるウイルス量を測定し、ウイルスに対する防御効果を検討した。その結果、インフルエンザウイルスの増殖を有意に抑制する事が明らかになった。この結果は、SV40-VLPがインフルエンザワクチンの新規キャリアになりうること、また、副作用を伴う人工アジュバントを加えなくても有効であることを示した重要な結果である。従って、新規インフルエンザワクチンの開発という本研究の主目的の達成に近づく大きな進歩であり、たいへん意義があると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成24年度までに、実験に使用するCTLエピトープを導入したSV40-VLPを作製し、それを使ってHLA-A2トランスジェニックマウスに免疫して、インフルエンザウイルス特異的CTLを誘導させる計画であった。インフルエンザウイルスの亜型、株に共通に存在するウイルス内部抗原M1タンパク質由来のHLA-A2拘束性CTLエピトープは、問題無くSV40-VLPの表面に導入できた。その際、表面のHIループに導入したものとDEループに導入したもの2種類を作製したが、両方とも効率よくインフルエンザウイルス特異的CTLを誘導することができた。これらの実験が予想以上にスムーズに進んだため、平成25年度に行う予定であったインフルエンザウイルスによるチャレンジ実験を行った。その結果、免疫時にアジュバントを加えなくても、SV40-VLPキャリアだけで効率よくマウスにインフルエンザ特異的CTLを誘導することができ、さらに免疫誘導後、チャレンジしたインフルエンザウイルスの増殖を有意に抑制するという好結果を得た。また、昨年度に本研究に関する国内特許出願を行ったが、本年度では、国際特許出願も行った。さらに、SV40-VLPのワクチンへの応用に関して英文総説(Expert Review of Vaccines、査読有り)を執筆した。以上のように、今のところ、当初の計画以上に進展しており、現在までの達成度は高い自己評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
HLA-A2トランスジェニックマウスを使って、インフルエンザウイルスによるウイルスチャレンジ実験を含めたin vivo実験を詳細に進める。具体的には、SV40-VLPでさまざまな条件で免疫したマウスに、インフルエンザウイルスを感染させ、ウイルスの増殖が抑えられるか、病状は改善されるか等を検討する。今のところ、1種類の亜型しか実験に使用していないが、他の亜型ウイルスも使って広範に実験を行い、複数の亜型ウイルスに有効であるという、SV40-VLPワクチンのユニバーサルな防御効果を証明する。また、1種類のCTLエピトープだけを使って実験を行ってきたので、SV40-VLPが他のエピトープでも効率よくCTLを誘導できることを明らかにする。HLA-A24トランスジェニックマウスを所有しているので、HLA-A24拘束性CTL誘導も検討する。多くの日本人はHLA-A2と共にHLA-A24を持っているため、これらの結果は日本人のためのワクチン開発に有意義なデータとなると考えられる。さらに、SV40-VLPは、がんワクチンのキャリアにも使えるので、インフルエンザウイルスタンパク質を発現する腫瘍細胞でもチャレンジし、腫瘍細胞を排除するかどうかも検討する。また、SV40-VLPによる免疫には、人工のアジュバント剤を加える必要がないことが明らかになったので、SV40-VLP自身がアジュバント効果を持つ事が推測される。研究計画調書には記載していないが、この現象は極めて重要であるため、詳細に検討する。インフルエンザウイルスに対するワクチンキャリアのデータがずいぶん集まったので、年度内に論文を1つ書き上げる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では、複数のエピトープを導入したSV40-VLPを作製して実験に使用する予定であったが、実際は1種類のエピトープで実験を先に進めたため、次年度使用の研究費が生じた。今後は、複数のエピトープを使って実験を行うので、当該の次年度使用研究費はこの実験経費に使われる。また、次年度においてもSV40-VLPを大量に調整する必要があるため、さまざまな試薬の購入に研究費を使用する。さらに、さまざまなアッセイでCTL誘導を解析したり、広範なウイルスチャレンジ実験を行ったりするので、次年度の研究費は、これらの実験に必要な細胞培養関連試薬・器具の購入に使用する。
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Research Products
(4 results)