2012 Fiscal Year Research-status Report
PEG-IFNα/RBV療法のC型肝炎治療効果を予測する新規バイオマーカーの確立
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23590553
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
黒川 真奈絵 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (90301598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥瀬 千晃 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (00318940)
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Keywords | C型肝炎 / IFNα/RBV療法 / 治療効果予測 / バイオマーカー / ペプチドミクス |
Research Abstract |
難治性C型慢性肝炎(iCH-C)の治療法であるペグインターフェロンアルファ/リバビリン(PEG-IFNα/RBV)併用療法の効果予測に有用な新規血液バイオマーカーの確立を目的とする。 今年度は、PEG-IFNα/RBV療法によりウイルス学的著効(SVR)及びウイルス学的無効(NVR)を完全に判別した107個の血清ペプチドを用いたモデル(107Pモデル、AUROC 1.00)において、主要なペプチドを10個同定した。5個が補体成分C3fの断片、3個がフィブリノーゲンα鎖の断片、残る2つがキニノーゲン-1とPPAR-γ-様蛋白質1コアクティベーターの断片であった。また107Pモデルと、SVR とNVRを完全に判別しなかったが特異度が100%を示した1個のペプチド(C3fデスアルギニン、C3f-dRと同定)を用いたモデル(AUROC 0.73)について、モデル作製例(training set)と異なるSVR 51例、NVR 17例(testing set)を用いて判別能を評価した。107Pモデルではtraining setで感度・特異度とも100%であったのが、testing setでは感度43%・特異度94%、C3f-dRモデルではtraining setで感度53%・特異度100%であったのが、testing setでは感度35%・特異度94%と、両者とも感度が低下した。そこで、全96人のSVR・NVR例を用い、iCH-Cで必須の検査項目を新たな多変量として追加したところ、107個のペプチドにヘモグロビン、body mass index、年齢を加えたモデル(107P/Hb/BMI/Ageモデル)で感度70%・特異度92%、C3f-dRに血小板数を加えたモデル(C3f-dR/PLTモデル)で感度59%・特異度88%と、高い特異度を保ちつつ、感度を大幅に上昇させることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
107Pモデル及びC3f-dRモデルというSVRとNVRの判別モデルを2つ作製し、両モデルとも異なる患者集団を用いて評価した。両モデルともtesting setで特異度94%を示したことから、これらのモデルでSVRと予測された症例の約9割は間違いなくSVRであるということが確認され、有用性の高いSVRの予測法を確立することができた。これらのモデルに臨床検査項目を加えて予測したところ、感度も60-70%に増加し、より臨床のニーズに応えられる予測モデルを作製することができた。 本年度は判別に有用なペプチドのアミノ酸配列の同定と、判別モデルの評価までが目標であったが、既にこれらの検討は終了している。さらに全96人の患者の主な臨床検査項目の結果を全て調べ、その結果を様々に組み合わせながらモデルの変量として追加させるという、作業としては膨大な解析を追加することで、モデルの感度を向上させることが出来た。このような追加解析については次年度である最終年度に対応する予定としていたが、本年度中に終了させることが出来たため、予定より早く進行している。 また昨年度までに一部報告したように、研究のプロセスとしては完全な判別が得られた68個のペプチド、同定された11個のペプチド、C3fの断片である5個のペプチドでも同様に判別モデルを作製し評価したが、107PモデルおよびC3f-dRモデルの判別能を凌駕する評価が得られなかった。即ち、血清ペプチドモデルとして最も優れたものを選定する段階は、今年度までに完全に終了することが出来た。 また現在既に、最終年度の目標である、PEG-IFNα/RBV療法の効果予測法として汎用されてきたIL-28B遺伝子多型の解析と我々の107P/Hb/BMI/Ageモデル及びC3f-dR/PLTモデルの予測能の比較を施行している。詳細及び意義については、次項で述べる。
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Strategy for Future Research Activity |
96人のSVRまたはNVRを示したiCH-C患者のうち、遺伝子検査に同意した患者においてIL-28B rs8099917の遺伝子型を判定する。rs8099917は、rs12979860等の他のIL-28Bの一遺伝子多型(SNP)と比較し、日本人のCH-CにおけるSVRの予測能が優れていると報告されている(Ito et al, J Clin Microbiol 2011;49:1853)。このrs8099917のメジャーホモTT型をSVR予測とし、我々の107P/Hb/BMI/Ageモデル及びC3f-dR/PLTモデルとSVR予測能を比較する。IL-28B遺伝子多型解析は、染色体DNAの抽出後にreal time PCRを行うため、一般には操作が難しく、一検査あたりの費用が高い。我々のペプチドモデルでSVR及びNVRをより高率に予測することができれば、簡便で安価な予測が可能となる。血清ペプチドは遺伝子に規定されないPEG-IFNαRBV療法の効果に関与する因子であり、iCH-Cの治療機序を考える上でも当比較研究の意義は大きい。また、我々のペプチドモデルもIL-28B SNPも感度・特異度が100%には満たないため、両者を組み合わせることにより100%に近い予測能を得られかを検討する。 なお、C3f-dRはPEG-IFNα/RBV療法の効果に重要な影響を与えると考えられるため、肝細胞または末梢血単核球をペプチドの存在下・非存在下で培養し、mRNAおよび蛋白質の発現差異をreal time PCRやproteomicsにて解析する。これらの解析で有意な差が認められれば、C3f-dRの補充・産生阻害による治療効果増強・副作用減弱、関連分子中の新規標的分子等についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
IL-28B遺伝子多型解析については、末梢血単核球分離試薬、染色体DNA抽出キットおよびIL-28B遺伝子多型解析キットを購入済みであるが、測定対象患者の人数に応じて追加購入する。 C3f-dRについて機能解析実験を行うため、当該ペプチド及びその対照となる無作為再配列ペプチドを化学合成する。培養肝細胞としてHep-G2細胞株及びその培養液、仔牛血清等を購入する。免疫系細胞としては、ヒト末梢血単核球を分離して用いる他、Jurkat細胞株及びTHP-1細胞株を購入して使用し、再現性が得られるかを検討する。各細胞にC3f-dRペプチドを添加し生じる、mRNAの発現変化を見るためのreal time PCR用試薬(PCR用プレミックス、プライマー・プローブセット、プラスチックプレート、フィルター付チップ等)、蛋白質の発現変化を網羅的に解析するためのプロテオミクス用試薬(CyeDyes、ゲルストリップ等)を購入する。また必要に応じ、IFNαやIL-28BのELISAキットを購入し、これらサイトカインの測定を行う。免疫系の浮遊細胞については、フローサイトメトリーにより細胞表面及び内部に発現する分子の測定を行うため、細胞染色用の抗体及び関連試薬を購入する。 なお、研究結果を公表し国内外から広く意見を募るため、国内外の関連学会への参加費用(旅費等)及び論文投稿に関わる英文校正費用及び投稿費用等が必要となる。
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Research Products
(22 results)