2011 Fiscal Year Research-status Report
薬剤師自ら会話環境の弱点を認識するための評価法の確立
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23590622
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小山 由美 日本大学, 薬学部, 助手 (50318458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽入 敏樹 日本大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (70299981)
星 和磨 日本大学短期大学部, その他部局等, 助手 (50373171)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | スピーチプライバシー / 調剤薬局 / サウンドマスキング / プライバシー臨界距離 / 波動音響解析 / リスクマネージメント |
Research Abstract |
会話空間の質は、業務の効率性や情報伝達の正確性に大きく影響する。医療施設における会話空間の質向上は安全な医療や治療の効率化に欠かせないが、施設の規模、構造、特色によりその要求度や優先度は異なる。従って実質的に質向上を図るには、画一的な尺度で対策や評価基準を定めることはできない。調剤薬局はオープンな構造であるため、患者との会話が洩れ聞こえるなど医療情報の保護は難しい。薬局は服薬指導に必要な診断名等の情報を他の医療機関と共有することは患者の同意を必要とするため難しく、薬剤師は患者から必要な情報を一から聞き出さなくてはならない。薬剤師が会話環境の適正を自ら認識し評価できる簡易予測法を確立するため、薬局の規模、形状、レイアウトをモデル化し、漏洩度評価のアルゴリズムの確立および保護度を予測する物理的パラメータを検討した。室内音響理論に基づきABC(A:吸音,B:遮へい,C:マスキング)保護効果をシミュレーションに加え、多面的に検討した。その結果スピーチ保護領域の目安となるプライバシー臨界距離を提案した。会話漏洩に影響するレイアウトについて検討した。服薬カウンターに設置された衝立の遮音効果について解析した。これまでの実物大模型実験の結果を踏まえ、時間領域有限差分法を用いてブース数・衝立の質・大きさをパターン化し、会話の漏洩度・漏洩領域について解析した。会話の直接音・反射音・回折音の伝わり方は衝立の数・素材・大きさにより異なった遮音効果として表れ、待ち合い席に会話が伝わり易いパターンや左右方向のブースに遮音効果が表れるパターン等が明らかとなり、本解析によりレイアウトの漏洩保護度を予測できる可能性が得られた。会話漏洩が問題に発展する人的機能的助長因子とその先行指標と最終指標のあり方について検討をおこなった。現在、業務の優先順位や安全性保護とバランスがはかれるよう助長因子を整理している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、調剤薬局の薬剤師がスピーチプライバシーの問題など、会話環境の弱点を自ら認識して医療情報をやり取りすることでリスクの軽減を図ることを目的としたもので、会話環境の実態を薬剤師にも評価できる手法の確立を目指している。23年度は、羽入、星は物理的側面から会話空間の評価法の開発に向け研究を進めた。これまで得られた研究成果やスピーチプライバシーの国際的動向を調査し、日本の現状に合ったスピーチプライバシー対策の評価法として、プライバシー領域を評価する臨界距離を提案した。また、室内レイアウトによる会話漏洩保護の効果を波動音響解析を用いて検討した。小山は人的機能的側面から研究を進めた。会話の漏洩が問題化する助長因子とその先行指標と最終指標のあり方を検討した。研究協力者である船橋市内の薬局薬剤師が震災による計画停電などにより長期間都合がつかず、そのため当初の計画通りには進まなかったが、全体的におおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
米国におけるスピーチプライバシー研究は歴史が長く、既にABC 効果を目的とした対策を民間企業が手がけており、実用化されつつある。ABC 効果(A:吸音,B:遮へい,C:マスキング)や評価法に関する先行研究を検討するため、米国を調査する。医療施設における会話環境の現状についても調査する。(小山・羽入・星)会話環境の簡易評価の確立に向け、物理的側面および人的機能的側面よりアプローチする。物理的側面からのアプローチでは、これまでの結果を踏まえ漏洩度・保護度を簡易予測する手法の確立を目指す。シミュレーション結果の妥当性や改善点を検討するため、薬局にて音響特性の測定および評価など実地調査をおこなう。(羽入・星)人的機能的側面からのアプローチでは、助長要因に関係する先行指標と最終指標の組み合わせや、その基準について多面的に整理・検討する。(小山・協力薬剤師)薬剤師自身による漏洩領域予測法を検討する。具体的には、薬剤師が模擬服薬指導を行い、待合室のどの領域が聞き取りやすく話しやすいかを薬剤師自身の耳、もしくはICレコーダーにより評価するものである。模擬服薬指導、心理実験計画およびマスキー・暗騒音の評価は星と小山が担当する。薬局の多様性や特色、保護限界をどう扱うか、診断結果と提案のあり方を検討する。診断結果に多様性を考慮し、業務と安全性保護の優先順位がはかれるようネットワーク分析を用いて指標と多様性の関係を解析する。解析は小山が中心となり星と検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
米国調査および薬局調査のため交通費・旅費を1,000,000円(3人)計上した。現地調査(薬局等)の音響特性評価やシミュレーション・ネットワーク解析などに係わる物品費として800,000円計上した(内、パワーアンプ200,000円)。心理実験への協力および薬剤師等の専門知識の提供およびテープ起こし代に対する人件費・謝金として400,000円計上した。現地調査の運搬代、訪問時の手土産代、研究会費、研究成果の投稿関係費等に対し、その他として380,000円計上した。分担金の内訳は次の通りである。小山1,480,000円、羽入600,000円、星500,000円
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