2012 Fiscal Year Research-status Report
薬剤師自ら会話環境の弱点を認識するための評価法の確立
Project/Area Number |
23590622
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小山 由美 日本大学, 薬学部, 助手 (50318458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽入 敏樹 日本大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (70299981)
星 和磨 日本大学短期大学部, その他部局等, 助手 (50373171)
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Keywords | スピーチプライバシー / 調剤薬局 / 騒音 / プライバシー臨界距離 / サウンドマスキング / リスクマネージメント |
Research Abstract |
会話環境を薬剤師自ら認識し評価するための簡易予測法の確立を目指し以下の解析・調査をおこなった。 物理的側面からはABCルール(A:吸音,B:遮音,C:マスキング)に基づく漏洩度評価のアルゴリズムを確立するため、情報マスカーとエネルギーマスカーの効果の違いを反映した評価を可能とするスピーチプライバシー臨界距離(PCD)を提案し、その有効性について検討した。 調剤薬局のカウンセリングブースにおけるパーティションの効果をいくつかのシミュレーションモデルを構築し評価をおこなった。その結果複数のブース間をパーティションで区切った場合、パーティションの吸音率が低いほど左右のブースに対する遮音効果は小さくなる傾向があり、また吸音率が高くなると遮音効果も大きくなる傾向が得られた。 米国の医療施設における会話環境の現状を調査した。米国ではスピーチプライバシー問題の他に、入院患者の騒音問題(患者が治療に専念できない、睡眠を妨げるなど)や医療情報の伝達を妨げる音問題が重視されており、音響および医療分野の研究者(Health Care Acoustics Working Group)が包括的に研究調査を進めている。医療現場にふさわしい音環境の基準が検討され、FGIガイドライン(病院や医療施設の設計と建築に関するガイドライン)の中で複数の指標を用いて各段階に求められる評価水準を示している。 既存施設の会話環境の改善は日本同様に容易でなく、その背景には医療施設が抱える課題の優先順位や、ある対策を講じることが他の業務を妨げてしまうなどの理由が存在した。ガイドラインの基準が考慮され建築された施設でも、依然として音環境の問題は存在しており、物理的な対策と共に、人的機能的な問題対策についても更なる研究が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、守秘性の高い医療情報を安心してやり取りできる会話環境の実現を目指している。 薬剤師が会話環境の弱点を自ら認識し評価できる手法の確立を目指し、24年度は物理的側面からの検討は羽入と星が担当し、シミュレーションモデルによる基礎データの取得と解析を中心におこなった。会話環境に影響する人的および機能的な助長因子の解析および簡易評価指標作成に向けた包括的検討については、研究代表者が急病にて研究が一時中断した。そのため研究打ち合せや調査が実施できず、24年度の研究がやや遅れる結果となった。 また年度初めに計画していた海外調査は年度末に実施し、計画は遅れたものの、その後研究は順調に進み成果をあげつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
会話環境の簡易予測法の確立に向け、物理的側面および人的・機能的側面より検討する。 物理的側面からは、スピーチプライバシー臨界距離やシミュレーション等の解析結果、およびこれまでの訪問調査や米国調査の問題傾向を根拠として、漏洩度・保護度を簡易予測する指標・手法の確立を目指す。簡易評価指標・手法の妥当性の検討には、模擬薬局や協力薬局にて評価をおこなう計画である(羽入・星)。 米国調査の結果より、会話環境に求められる評価水準は、医療の特色(優先度)に即した実際的な指標へと修正・追加されていることから、それら指標の妥当性を比較検討するために日本の病院やクリニックの会話環境を調査する(小山・羽入・星)。 人的および機能的側面の検討は、薬局の多様性や特色、保護の限界、問題に発展する助長要因などの多面的な要素を整理し、簡易予測法や評価項目の結果が過重になる、実際の業務を妨げるといった、現実と乖離することがないように検討を進めていく(小山・協力薬剤師・協力研究者)。 さらに、会話の漏洩領域の簡易予測方法について検討する。具体的には薬剤師が模擬的に服薬指導を行い、聞き手(他の薬剤師もしくはICレコーダー)が簡単に会話の漏洩度を評価する方法について検討する。評価項目の検討および評価の根拠となる客観的なデータ収集と解析を行う(星・小山)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実地調査(薬局・模擬薬局等)の音響特性評価などに係わる物品費として500,000円計上した(内、騒音計200,000円)。 調査・研究打ち合せおよび学会発表に伴う旅費・交通費として200,000円計上した。 心理実験への協力および薬剤師等の専門知識の提供およびテープ起こし代に対する人件費・謝金として200,000円計上した。 現地調査の運搬代、協力の謝礼品、研究打ち合せ会費、研究成果の投稿関係費等に対し、その他として300,000円計上した。
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