2011 Fiscal Year Research-status Report
臨床経済学で用いられる効用理論に関する概念的,倫理的問題の体系的研究
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23590625
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
能登 真一 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (00339954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 隆元 杏林大学, 医学部, 講師 (10232795)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 効用理論 / 費用効用分析 |
Research Abstract |
本研究は効用理論をめぐる概念的,倫理的な問題に焦点を当て,それらを実証的に検証することで,国内における効用理論の導入に関する理論的基盤を整備するとともに,効用理論の医療政策への反映の可能性を探ることを目的として実施するものである. 研究1年目は欧米を中心としたすでに費用対効果のシステムが医療政策へと反映されている諸外国における効用理論に関する議論と,効用値測定のための方法論を整理した.とくに効用理論がどのように発展し,その過程でどのような議論があったかをレビューし,それらから現状の問題点は何かを整理した. イギリスでの調査を含めて研究の過程で知り得たことは,これまで効用値を算出するための直接法としてStanderd Gamble法やTime Trade-Off法が知られていたが,近年はDiscrete Choice Examination法という方法が使用し始められていることと,それを用いた効用値の算出には計量経済学のモデル構築が欠かせない現状になっているということである.これらの多くはEQ-5Dのモデリングを通して検証されていた. またこれとは別に,海外における効用値測定の方法論や倫理的に問題となるような諸問題(例えば,「死よりも悪い状態」や「障害者における完全に健康な状態」)の測定方法などについては,より鮮明,つまり障害の状態を「死よりも悪い」とする結果が報告され,日本との相違を検討する余地がより深まっていることも明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,3年計画の1年目は効用値測定をめぐる諸問題を整理することに当てる予定であった.1年目の調査により,これが概ね整理できたと考えている. 具体的には上記,研究実績の報告で述べた通り,効用値を求めるための直接法の種類およびその選択と「死よりも悪い」健康状態に対する評価という2点に集約される.関連する文献はほとんど集めることができたし,この分野で最も汎用されているEQ-5DのMeetingに参加するなどし,各国の専門家がどのような目的で研究を行っているかという現状を把握することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
臨床現場で一定の健康状態にある,Known Peopleに対して健康状態の効用値評価を実施する.対象疾患は脳血管疾患,整形疾患,神経難病などとする.評価対象者は患者自身に加えて,患者家族,医療従事者とし,それぞれ時間得失法,基準的賭け法といった直接法とEQ-5DやHealth Utilities Indexといった間接法によって効用値を測定する.これにより,測定方法間の関係や評価者の違いという見地から検討する. これとは別に,1年目の研究で明らかとなった新たな直接法であるDiscrete Choice Examination法を用いた効用値評価とモデリングのための研究もあわせて実施する.この調査は一般住民に対して実施するため,マーケティング会社にその一部を委託する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2年目はデータ収集がメインとなるため,その研究会議のための交通費とデータ提供料が中心となる.またDiscrete Choice Examination法については,ソフト開発が必要となるため,その費用とマーケティング会社に委託する場合は委託費が発生する.
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