2011 Fiscal Year Research-status Report
医療従事者のための模擬患者参加型コミュニケーション学習の構築に関する研究
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23590627
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
大嶋 耐之 金城学院大学, 薬学部, 教授 (20213697)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | コミュニケーション / 薬剤師教育 / 模擬患者 |
Research Abstract |
現在ウェブサイト上に公開されている「がん患者の語りデータベース」から、SP参加型学習に用いるシナリオの作成を行った。シナリオ作成においては、がんの発見から治療、予後に至るまでの一連のがん治療の流れについて、データベース上の患者の声を基に、治療や患者の生活背景に至るまでをできる限り忠実に再現したものとなるよう作成した。これにより、実際のがん患者が、各治療段階において、どのような思いを持ち、何に苦しみ、どのような支援・関わりを求めているのかなどについて、学習者がSP参加型学習を通じて体験し、学ぶことで、現場に生かすことのできる学習プログラムの作成を行った。現在、ウェブ上で公開されている「乳がん」「前立腺がん」について、各6ステージ(発見・治療選択・治療・転移再発・予後・その他各疾患において必要な学習課題など)3ステージ(発見・治療選択・治療)のシナリオを作成した。また、作成の際には、データベースの他、各疾患におけるガイドラインや薬物治療等の文献資料を用い、検討・確認を重ねながらシナリオの作成を行った。 作成したシナリオについては、医師2名、看護師1名、医療事務1名、薬剤師3名、一般市民8名で構成されるシナリオ検討委員会を立ち上げ、各シナリオについて内容を吟味し、よりリアリティで信頼性の高いシナリオの作成を行う体制整備を行った。作成したシナリオは、2回のプレ学習を開催し、シナリオの不備な点、矛盾点について検討し、その完成度をさらに高めた。SPについては、現在コミュニケーション学習でSPとして活躍している、おあしすSP研究会(愛知県)を活用し、その養成は、シナリオの読み込み、SPとしての演技・フィードバックの訓練等を数回実施し、SPとしての一定のスキルを勉強会で身につけ、プレ学習に臨んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「がん患者の語りデータベース」をモチーフとしたシナリオを基に、SP参加型コミュニケーション学習プログラムの構築を行い、作成したシナリオの有用性と、その学習プログラムが学習者に与える効果について、その妥当性、有用性について検証を行うことである。さらに、本学習をより多くの医療者が活用することのできる学習運営の検討と、SPの養成・発展のための活動も併せて実施していく。 この一連の研究の中で、現在まで、その骨幹となるシナリオ作成およびSP養成を実施してきた。本年度実施する本学習に向け、準備ができ、昨年度は計画通り研究が進んだと自負している。
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Strategy for Future Research Activity |
作成したシナリオを用いてSP参加型学習を現役薬剤師を対象に、愛知県薬剤師会、三重県薬剤師会、富山県病院薬剤師会の協力のもと実施し、新たな学習方法を実践する。各薬剤師会の協力のもと、現役薬剤師を対象に、9ステージのシナリオについてSP参加型学習を実施する。(1回あたりの参加者は12名程度とする) 学習プログラムの流れは、(1)事前にシナリオを読み込んだSPを相手に、学習医療者が患者対応を行う。(セッションの様子は、デジタルビデオカメラにて収録)、(2)セッション終了後、SP、参加者、ファシリテーターからその学習医療者の対応について、コミュニケーションの振返りと現状での問題解決などフィードバックを行う、(3)SPから、学習者に対して、対応した患者の解釈モデル(そのシナリオでの学習目標とする患者の思いや背景)について説明を行う、(4)各シナリオには、そのシナリオ作成でモチーフとした「患者の語り」があり、SP参加型学習実施の際に、学習医療者に対して放映する。これにより、学習医療者はSP体験と共に患者の生の声を聞くことで、さらに患者の思いに直に触れる機会を設ける、(5)SPセッションでの学習医療者の対話を逐語録(会話の語句、表情や仕草など)に起こす、(6)SPセッションの様子をビデオで振り返った後、逐語録を用いて各コミュニケーション技法について、ブレインストーミング方式を用いて討論を展開し、参加者全員が各自行動変容する手掛かりの場を提供する。 学習者自身のコミュニケーション能力の到達度を確認するために、「学習者用コミュニケーション能力チェックシート」を作成し、学習前後で実施する。この結果を要因分析することにより、本学習によるコミュニケーション能力の習得度について評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、ワークショップを名古屋3回、津3回、富山2回開催し、コミュニケーション学習を実施する。そのため、SPへの謝金それに関わる旅費を主に計上している。 直接経費としては、消耗品費、旅費、謝金、その他、本研究に必要不可欠なものばかりを計上し、本研究の主軸であるコミュニケーション学習を円滑にまた有効に実施できるように研究費を使用する予定である。
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