2012 Fiscal Year Research-status Report
乳癌個別化診断を目標とする新規エストロゲンシグナル経路の解析と検査法の開発
Project/Area Number |
23590658
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丹羽 俊文 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90218248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 慎一 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60144862)
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Keywords | 乳癌 / 細胞・組織 / シグナル伝達 / エストロゲン / 臨床検査 / 個別化治療 |
Research Abstract |
24年度の研究は膜型エストロゲン受容体(ER)選択的リガンドを活用することによる各種細胞の応答性と核内ERαへの信号伝達経路・応答遺伝子の解析を主として進め,我々が開発したリガンドが細胞内へ侵入しないさらなるエビデンス,核内ERへの信号伝達にMAPK系のリン酸化カスケードが関与している可能性が示唆された。 先に開発したestradiol (E2)の6位に量子マテリアルQdotを結合したQdot-E2およびQdot-6-estrone (Qdot-E1)ををERE-GFPレポーター遺伝子を安定導入したMCF-7E10細胞に作用させたところ,Edot-E2と遊離E1は遊離E2と同様に細胞増殖,ERE活性を亢進したのに対し,Qdot-E1はこれらの応答を起こさなかった。遊離E1は細胞内に取り込まれた後E2に変換されて活性を発現すると考えられ,この結果はエストロゲンがQdotから切断されて細胞内に取り込まれていないことを指示している。また,ERE活性の亢進はルシフェラーゼアッセイによっても確認される一方,これらの効果は抗エストロゲン剤の添加によって抑制され,さらに当研究室で樹立したエストロゲン枯渇耐性株2種のうち,核内ER高発現型は応答し,ER消失型が不応答であったことから,膜型ERより核内ERへの信号伝達が行われていることが確認された。これらの結果は膜型ERと核内ERが密接に関連していることを示唆している。 一方,Qdot-E2で刺激した細胞における各種リン酸化経路に関わる分子の解析を行ったところ,MAPK系のERK1/2のリン酸化亢進が認められ,このリン酸化経路が膜ERからの信号伝達に関与している可能が示された。これに対してPI3K系(Akt)のリン酸化亢進は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の研究実施計画では主として細胞応答と信号経路・応答遺伝子の解析を目的とした。 1) Qdot-E2とQdot-E1による細胞応答の評価より担体から遊離したエストロゲンあるいは結合体そのものが細胞核内に侵入していないことが支持された。 2)代表的な細胞内リン酸化経路に関わる分子を検討し,MAPK系が亢進し,PI3K系は変化していないという結果が得られた。 3)Qdot-E2によるエストロゲン応答遺伝子の変動解析は現在進行中である。 4)Primary cultureにおける応答確認や膜ER分布状況については充分量の臨床サンプルが入手困難であったことから保留とした。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の研究は引き続き細胞応答と信号経路の解析を進めていくが,主として膜型エストロゲン受容体(ER)高発現モデル細胞の樹立および膜型ERによる核内ERα以外への出力応答の探索を行う予定である。 1)代表的なエストロゲン応答遺伝子の変動を解析する(24年度より継続)。 2)膜型選択的リガンドQdot-E2で刺激した細胞の核内ERαにおけるリン酸化を解析するとともに,リガンド結合領域,非結合領域それぞれに対する作用をGAL4アッセイにより確認する。 3)核移行ドメイン該当部分を除去したERα遺伝子にパルミトイル化を受けやすいアミノ酸配列に対応する塩基配列を加えたコンストラクトを構築し,これを核内ERを持たない細胞に発現させ,核内ER陰性/膜型ER陽性モデル細胞の樹立を試みる。 4)上記膜型ER高発現モデル細胞と通常のER陽性細胞におけるエストロゲン応答遺伝子を比較することで膜型ER特有の信号経路の解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴って発生した未使用額であり,平成25年度請求額と併せて次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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