2011 Fiscal Year Research-status Report
間質性肺炎疾患におけるリン脂質代謝異常の解析と質量分析による検査法の開発
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23590665
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
日高 宏哉 信州大学, 医学部, 准教授 (10362138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 孝行 信州大学, 医学部, 教授 (80238815)
本郷 実 信州大学, 医学部, 教授 (40209317)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | リン脂質 / MALDI-TOF MS / 脂質分解酵素 / 肺胞洗浄液 |
Research Abstract |
マトリックス支援イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)を用いた内部標準法により、脂肪酸側鎖別のコリン含有リン脂質およびその代謝産物の定量測定系を確立した。定量測定系は、内部標準品(IS)によりキャリブレーションを行い、ISを試料に添加して質量分析を行い、ISとのピーク比から各リン脂質濃度を測定した。再現性、直線性、酵素法との相関性などの基礎的検討より、良好な測定精度を得ることができた。 この定量測定系を応用してリン脂質水解酵素である市販ホスホリパーゼA2の酵素活性測定法を確立することができた。タイムコースや酵素濃度および基質濃度変化による基礎的検討から、良好な測定精度を得ることができた。現在、生体試料中の脂質分解酵素活性測定の検討を行っている。 肺胞洗浄液(BAL-F)をクロロホルム/メタノール(C/M:2/1 v/v)有機溶媒混液を用いて脂質成分を抽出し、濃縮操作後に薄層クロマトグラフィ(TLC)により、BAL-Fの脂質組成を検討した。さらに、この脂質試料の脂質組成をMALDI-TOF MSで分析した。BAL-F試料では、検体採取の際リドカインが用いられたため、そのイオンピークを同定し除外する必要があった。BAL-F脂質試料中において、肺サーファクタントの構成主要成分であるジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を同定できたが、試料によっては検出感度以下でDPPCが検出されなかった。また、MALDI-TOF MSによりDPPC以外の脂質ピークを複数検出し、検体材料により脂質プロフィルの相違が観察された。現在、この未同定分子の分子構造および由来についての検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、間質性肺炎などの呼吸器疾患の検査で得られる肺胞洗浄液(BAL-F)を用いて、肺胞内の脂質代謝の障害とその機序の解明を目的としている。そのため、BAL-F中の脂質およびその代謝産物を分析、同定するとともに、代謝機序に関わる脂質分解酵素を測定し、代謝異常を証明することと、そのマトリックス支援イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)を用いた臨床検査法の確立である。 現在まで、主要リン脂質およびその代謝産物の分析をMALDI-TOF MSで定量的に良好な精度で測定ができるようになった。また、市販ホスホリパーゼA2の酵素活性の測定系を確立でき、H23年度の研究計画目標のMALDI-TOF MSによるリン脂質の分析法については、ほぼ達成できた。また、患者BAL-F試料の分析実験を開始して、主要脂質成分の同定はできたが、未知の脂質分子を検出した。現在、未同定分子の分析を行っており、BAL-F中の脂質分子の同定を行おうとする次年度研究計画への準備も進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
ホスホリパーゼA2以外の酵素活性の同定をおこない、マトリックス支援イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)によるBAL-F中の脂質、脂質代謝産物およびその脂質分解酵素活性の測定法を確立させる研究を推進する。現在の技術、環境下で研究計画を推進できる予定である。 また、肺胞洗浄液(BAL-F)中に検出された未同定の脂質分子の検討を、MALDI-TOF MSおよび他の質量分析法やクロマトグラフィーなどの分析法を用いて検討する。 患者のBAL-Fの脂質、脂質代謝産物、脂質分解酵素のスクリーニングを行い、脂質プロフィルのパターン化を試みる。また、患者BAL-Fから分離された細胞成分を分離し、細胞由来の脂質代謝産物や脂質代謝酵素の分析を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画に示した脂質分解酵素の由来を検討するため、超遠心分離およびカラムクロマトグラフィーなどの試薬や消耗品を購入する予定である。また、患者BAL-Fから細胞成分を分離、同定するための試薬や消耗品を購入する予定である。 次いで、肺胞洗浄液(BAL-F)中の未同定の脂質分子をいくつかの分析法を用いて検討する。そのため、研究計画し示した通りにガスクロマトグラフィー質量分析や高速液体クロマトグラフィー、高分解能薄層クロマトグラフィー分析の試薬や消耗品の購入する予定である。
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Research Products
(6 results)