2013 Fiscal Year Annual Research Report
幼若期ドーパミン神経系傷害が成熟後の痛覚機構におよぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
23590721
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
緒形 雅則 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (20194425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋田 久直 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (70118777)
野田 和子 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (60050704)
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Keywords | 脳・神経 / ドーパミン神経系 / 痛み / 不安 / 幼若期 / 痛覚過敏 / 不安関連行動 |
Research Abstract |
幼若期ドーパミン(DA)神経系傷害動物の成熟後の痛覚系および情動系への影響を行動学的、組織学的解析により調べた。H25年度は、細胞の興奮マーカーであるc-Fos蛋白に対する免疫組織化学染色法を用い、中枢神経系細胞の興奮状態への幼若期DA神経系傷害の影響を主として検討した。その結果、後肢へのホルマリン注入による炎症性疼痛に対して脊髄後角I-II層、IV-V層のニューロンの興奮が幼若期DA神経系傷害により有意に延長していることが明らかとなった。また高架式十字迷路試験を用いた情動に関する研究では、本試験環境を明るくすることにより幼若期DA神経系傷害動物の不安関連行動の減少が顕著になり、さらに本行動試験によりセロトニン神経系である背側縫線核ニューロンの興奮が増加することが明らかとなった。 3年間の本研究により、幼若期DA神経系傷害は痛覚系、情動系の発達に異常をもたらすことが明らかとなった。痛覚系に関する異常は炎症性の持続痛で顕著にみとめられ、その発生機序は幼若期DA神経系傷害による青年期多動の発生機序とは必ずしも一致しないことが解った。さらにこの侵害受容反応の異常は、脊髄ニューロンでも観察されたことから、痛覚伝達機構に対する下行性調節系の変容が関与している可能性が示唆された。また情動に関する研究では、複数の行動試験により不安関連行動の減少が確認され、そしてこの不安関連行動異常の背景にセロトニン神経系の興奮性の変化が関与していることが示された。 幼若期DA神経系傷害にともなう痛覚、情動系の反応異常は、必ずしも全ての行動試験において明確に検出されるものではなく、外界からの刺激・ストレスの強さや種類により異なっていた。このことは出産時の低酸素などのストレスによりDA神経系が傷害を受けた場合、その影響の出現が成熟後の環境やストレスの種類によって異なることを示唆している。
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Research Products
(1 results)